昼食時。
「…はい、これ」
魔物達にご飯をあげた後に戻って来た彼女が青年にラップの張られた小皿を差し出す。
「…コレは?」
青年は小皿を受け取ると中に入ってる真っ黒に焦げた物を見て尋ねる。
「『退化』の付与効果があるキノコ」
彼女は青年に最低限の事を説明すると、話しかけるなオーラを出した。
「…なるほど、コレで『剣士』に戻れるというワケか…」
青年は真っ黒に焦げたキノコを見て納得したように呟くと小皿をテーブルの上に置く。
「あれから少し考えて思ったんだが、俺は元の職業に戻る気はない」
もぐもぐと自分の分の料理を食べてる彼女に青年がそう告げる。
「…俺は今まで『魔剣士』という職業は堕落した証で間違ったモノだと思っていた」
いや、実際そうなのだろうが…と青年は全く聞く耳を持たずに無視している彼女に続けた。
「…本来の『魔剣士』なら許される事では無い…が、俺は違う」
だから世間の目や世間体を気にする必要など全く無い、と青年は考えを改めたような事を言う。
が、彼女はやはり全く興味を持たずに反応すらしない。
「さっきはすまなかった、今は俺を強くしてくれた事を感謝している」
「…ごちそうさん」
青年は謝罪と感謝を告げて頭を下げるも彼女は無視したまま手を合わせて食事を終える。
そしてスキルを使って食器を綺麗にして外へ出た。
「…なにかあったんですか?」
「…いや、なんでもない」
今までのやり取りを見てた女の人が心配したように聞くが青年は首を振って返す。
その青年の言葉に女の人は踏み込む事なく黙る。
「…ごちそうさま」
会話も無く静かな空気が流れる中、女の人が青年をチラチラ見ながら手を合わせて食器を片付けた。
「…あの…休憩後は何を…?」
「…ああ、とりあえずランニングしてから基礎をやろうか」
女の人が様子を窺うように聞くと青年はいつもの様子に戻ったように言う。
「分かりました」
女の人は頷いてから青年に配慮してなのか外に出て行く。
「…あの、なにかあったんですか?」
「…は?」
女の人が外に出て空になってる皿を集めていた彼女に話しかけると不思議そうに返される。
「いえ…先ほど変な雰囲気だったので…」
「ああ、アレが『魔剣士』とやらになったのが気にくわないっていうから」
女の人が聞きづらそうに軽く理由を説明すると彼女は軽く説明した。
「…あ、で、でも感謝してましたよ…?」
「へー…で?」
だからなに?と彼女は青年の様子を告げた女の人を冷たい目で見た。
「あ、いえ…なんでもないです、すみません…」
女の人が謝ると彼女はスキルを使って皿を綺麗にして家の中に入って行った。
「…怒ってる…ワケでは無いのかな…?」
「ウォフ?」
女の人は寄って来た魔物の頭を撫でながら疑問系で呟き、魔物も首を傾げる。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!