「…だからゾンビ解除の効果があるやつを渡したのか?」
「そうそう…ってかアレが私の考えに気づくなら、使うのは魔物に会ってからだハズ」
男が少し考えながら聞くと彼女は思わせぶりな事を零す。
「…どういう事だ?」
「攻撃効かないやつがいたら話しぐらい聞こうとするかなー…と」
男の疑問に曖昧に返して彼女は手を止める。
「とは言え実際行動するのはあれだから私たちの思惑なんて通じないっしょ」
そして男の方を振り向いて肩を竦めながら続けた。
「…ソレもそうだ、だがアイツなら今頃使っていてもおかしくはないかもな」
男は彼女の言葉に納得するように呟くと笑いながら青年の事をネタにする。
「はは、流石に今は早すぎるからナイでしょ」
彼女も男の話に笑うが、当の本人は言うと…
「くそっ…!耐性・極の水筒が空になったか…!」
すでに一番大事な水筒を先に空にしていた。
そして青年は焦ったように呟くと水筒を袋の中に入れる。
「…いったいどこにいるんだ…このままじゃ…」
群がるゾンビから逃げるようにビルのような建物に入るとドアの鍵を閉めて街の地図を広げた。
「「「「あ~…う~…」」」」
「…残るはA地区だけか…幸いこの高さからなら見渡せるかもな…」
青年はドアの所で立ち止まって呻いてる人達をチラッと見ると階段を上がって行く。
「…あ~…う~…」
「…こんな所にも居るのか…」
ドアが開きっぱなしになってるフロアから呻き声が聞こえ、青年は息を潜めながら音を立てないように慎重に上がる。
「…居た…!」
屋上で双眼鏡を手にA地区を見渡してる青年が標的である魔物を発見し呟く。
「…だが亜種だけではなく原種も数匹居るな…」
青年は目的の魔物以外にも近くに居た事を確認して双眼鏡を袋にしまう。
「…耐性・極が残ってれば多少の攻撃なら受けても反撃しない平和主義の作戦が取れたが…」
赤いテープの水筒をさきほど使い切ってしまった事を後悔しながら青年は作戦を考え始めた。
「……まだ回復とゾンビ解除は残っている…ハッタリをかますか、下手に出るか…」
水筒の中身を確認し、作戦を2通りに絞った。
「…こんな時彼女なら………よし!」
青年は彼女が選択するであろう方法を考えて気合いを入れるように叫ぶ。
そして階段を下りて3階のフロアへと移動する。
「…よし」
窓を開けて下の路地にゾンビがいない事を確認すると青年は給水管を伝って下り始めた。
「…どうやら諦めて解散したようだな…」
青年が壁に背を当て窺うようにビルの入口を見るとさっきまで出来ていた人集り?が無くなっている。
これをチャンスだと捉えた青年はさっき確認した魔物の位置に向かって走り出した。
「…ふぅ…あとは…」
魔物を目視出来る位置にまで近づいた青年は一旦近くの建物の壁に隠れて息を整える。
「…行くか…!」
「「…!」」
「…!ギ…!」
「ギイイイイ!!」
意を決したように呟いた青年が両手を上げて降参のポーズをとりながら近づくと、ソレに気付いた鳥のような魔物が警戒したように大声で鳴く。
「…警戒するな…恐れるな…慄くな…敵意を抱くな…大丈夫…俺の選択は間違っていない…!」
青年は自分に言い聞かせるようにブツブツと呟きながら魔物達にゆっくりと近づいた。
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