「ほら返せ…洗浄スキル『浄化』」
彼女がスキルを使うとフライパン、包丁、フォーク、皿が綺麗になった。
「なっ…!一瞬で…綺麗になっただと!?初めて聞くスキルだが…一体…?」
「体が治ったんならさっさと山を降りる事だな、危ないんだろ?」
青年の疑問を全てスルーして彼女は背を向ける。
「待て!ココは危ない!」
「だろうね、あんたがそんなになるぐらいだから…危ないナニカが来たんだろうね」
彼女は『騎士 Lv23』と表示された青年を一瞥するとそのまま歩いて行った。
「っ…!…危ないと分かっている場所に、君を行かせるワケにはいかない」
「離せよ、別に危なくねえって…この山に住んでるんだから遭遇しても逃げられる」
青年に腕を掴まれるも彼女は振り払いため息混じりに言う。
「…この山に…?…事前に聞かされた情報では人は居ないと…」
「山奥だから気づかなかったんじゃねぇの?」
「そうか…なら、助けてくれたお礼に君の家までの護衛と手伝いをしよう」
「……好きにすれば?」
どうせ何を言っても通じないと思ったのか彼女は後ろをついてくる青年を見て、また前を向く。
「ソレで…何をしていたんだ?」
「山菜取り」
「山菜か…ふむ、何を採れば良い?」
「食べられそうだと思ったモノは手当たり次第」
青年の問いに興味無さそうに淡々と答える。
「そうか…こういう物とかか?」
青年は少し考えると木の根元に生えているキノコを採った。
「ん…じゃあコレ」
キノコを見もしないで適当に頷くと袋からざるを取り出して青年に渡す。
「コレとかもか?」
「聞かないと分からないの?」
そこらに自生している葉っぱを取ってわざわざ見せに来る青年に、彼女はイラついたよう睨む。
「…すまない、山菜とかは良く分からなくてな…」
「…はぁ…仕分けは後でやるから、とりあえず手当たり次第採って」
恥ずかしそうに頭を掻いた青年にため息を吐いて指示する。
「使えないモノは土の肥料にするから」
「了解だ」
彼女の指示に青年は笑って敬礼した。
それから30分ほど山菜取りをしながら進むと…血だらけの魔物を発見。
「グルル…!」
臥せったまま威嚇するように唸っている。
「!?コイツは…!まだ生きていたのか…!」
青年は魔物を見るや否や剣を抜く。
「ストーップ!」
魔物に斬りかかろうと走り出した青年を止めるように彼女が叫ぶ。
「…なっ…!?」
出鼻を挫かれたからか青年はコケそうなり、なんとか体勢を整えた。
「怪我してるじゃん…スキル『料理』」
「っ…!?君は正気か!?」
彼女が袋からフライパンを取り出すと青年が焦ったように詰め寄る。
「何かあっても守ってくれるんでしょ?」
「いや…そうだが…でも…!」
「大丈夫だって、一回だけだから…ソレにもし傷付いてもまた料理で回復させてやる」
「~~!!…とても、君が正気の沙汰だとは思えない…」
一応彼女に負けたのか青年は盾になるように前に立つ。
「…炒め物だと危ないから…揚げ物かな?フライパンスキル『瞬間加熱』」
袋からビンを取り出すと中の液体をフライパンに注ぎ入れてからスキルを唱えた。
「ちょっとコレ持ってて」
「君は本気であの魔物を癒すつもりか?」
小さいボウルを渡すと未だに説得するような事を青年が言う。
「相手が誰でも、何でも…等しくチャンスは一回、与えるべきだ」
流石に二回目は無いけどね…と呟いて彼女はボウルに山菜を入れて、袋から出した粉を塗す。
「…っと、危ないから離れて」
青年を手で退けて熱した油の中に粉を塗した山菜を全部入れて揚げていく。
「良い色…はいよー」
彼女は網で小麦色になった山菜を掬い、油を切って魔物にポイッと投げる。
「グルル…………ッ!?」
魔物は投げられた山菜のかき揚げを警戒したように匂いを嗅ぐ。
最初はソッポ向いたが…やはり気になったのか…
数秒して一つ食べ始めた。
そして美味しかったのか2つ、3つ…と結局投げられた全てを食べ切る。
すると魔物の身体を緑色の光が包み…
HPが回復して体力ゲージが赤から黄色になった。
「コレで襲って来たら君は大馬鹿者だ…」
彼女は青年の責めるような視線と言葉を無視してスキルを使いフライパンの油や網、ボウルなど片付ける。
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