翌日。
「ふふーんふん~ん~♪」
彼女は家の外で青年がどこからか調達してきた、魔女が使いそうなほど大きな釜を、これまた大きめの棒でかき混ぜている。
大釜のサイズは彼女の身長を超しているため梯子のような物にのぼっている状態だ。
そして大釜の下にある移動用のローラーが動かないように石で固定されていた。
「…ふう、とりあえず俺の方はこれだけ取ってこれたぞ…」
彼女が料理してる最中に魔物に乗った青年が戻って来て、背中に背負っていた大風呂敷を地面に広げる。
「…まだそんなに残ってたの?」
「ゾンビ達から逃げながらも必死にかき集めたからな」
青年は大風呂敷の中身である食材をゾンビだらけの街から取って来たような事を言う。
「…一応まだ無いか見て回って来こう」
無断で取るのは窃盗行為で犯罪だが…この場合は仕方あるまい、と青年は割り切ったように呟くと大風呂敷だけを取って魔物の背中に乗った。
「…犯罪も何も今のあの街に法律なんて通じないと思うんだけどなー…」
魔物と一緒に走り去って行った青年の背中を見て呟くと彼女は梯子から下りて食材を手に取る。
「…さてさて…」
彼女は地面に転がってる食材を一輪車に乗せると少し移動させ、蛇口を捻ってホースから水を出す。
そして一気に食材を水で軽く洗い始めた。
「ヘッヘッヘッ…」
「水浴び?」
ホースの先を摘んで水圧を強くしながら食材を水で軽く流してると小型の魔物が近づいて来る。
彼女が水をかけると魔物は嬉しそうにペタンと地面に座った。
「…こっちはこっちで忙しいからまた今度ね」
ある程度魔物に水をかけると彼女は再び食材に水をかける。
「包丁スキル『皮むき』『みじん切り』」
水をかけ終わった食材を彼女はスキルを使って普通の鍋の上で切り刻む。
「…っしょ」
切り刻んだ食材が鍋にある程度溜まったらはしごをのぼって大釜に移す…という作業を食材が無くなるまで繰り返した。
「スキル『料理』『中火』」
あとはスキルで火加減を調整しながら大きめの棒でかき混ぜ、男や青年が食材を持って来るのを待つ。
「…ただいま」
「おかえり」
しばらくすると青年と同様に大風呂敷を背負い魔物に乗った男が戻って来る。
「経過はどうだ?」
「まあまあかな」
大風呂敷を地面に置いた男の質問に彼女は適当に返す。
「今の付与効果はなんだ?」
「今?えーっと……『腹痛』『頭痛』『毒』『HP減少』『スロー』…だね」
「…最悪じゃないか…まあ敵に使えばかなりの効果を発揮すると思うが…」
笑いながら聞いた青年は彼女の返答で顔が引きつったような感じに変わって呟いた。
「頭痛と腹痛と毒ってトリプルで小ダメージ持続効果だからね、しかもHP減少も割合ダメージだし」
「それにスローで動きも遅くなるしな…」
彼女が効果の詳細を言うと男が補足するように続けて言う。
「まーだ生煮えで味を整えてないから仕方ないではあるけど…」
「…そんな効果から最終的に『ゾンビ解除』になるのか…錬金術師も真っ青だな」
彼女がため息混じりに呟くと男が感心したように告げる。
「…まあ料理も一種の錬金術って言われてるし?」
「そうなのか?…とりあえず俺の方はコレで回収出来る物は全部だ、後はアイツの回収してきた量で買い出しが必要かどうかが決まるな」
彼女の疑問系の言葉に男も疑問系で返すと状況を報告した。
が、彼女がスルーしたので男は再度話しかけるかどうかを迷った挙句…家の中に行く事にしたらしい。
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