「…しょうがない…」
迷った結果、男はため息を吐いてスキルを発動させる。
「…あれ…?私は…何を…?」
男は女の子を一種の催眠状態に陥らせ、迫って来たところからの記憶を一旦忘れさせた。
すると女の子は泣き止んでキョトンとした様子になってキョロキョロと辺りを見渡す。
「…俺をスカウトしに来たのだろう?」
「…そうだ、思い出した!ソレで…えーと…どこまで話した事か…?」
男が聞くと女の子は声を上げた後に首を傾げる。
「……俺を、魔導協会に引き入れようとしたところまでだ」
男は思い出すように少し考えて言った。
「…ああ、貴方を有象無象と一緒にしてたのを謝ってからか…」
「…やはり前後も、か…」
思い出したように考え込んだ女の子を見て男が結果を確認してボソッと呟く。
「何か?」
「いや、なんでもない」
呟きが聞き取れなかったらしい女の子が男に尋ねるも適当にごまかす。
「…こほん、では気を取り直して…魔導協会に来て貰えませんこと?」
女の子は咳払いをすると男に手を差し出して勧誘する。
「却下だ」
「…なぜ?」
男が迷いもせずに言い切ると女の子は意外そうに驚いて聞き返した。
「今の俺が魔導協会に入る理由などないからだ」
「それは…」
女の子は男の答えに困ったように言い淀む。
「………後進…弟子を育て易くなるのでは?」
「後進など知った事ではないし、弟子などいらん」
「…ううむ…」
少し考えて閃いた考えを提案するもバッサリと却下され女の子は困ったように顎に手を当てて考える。
「そもそも俺はとてつもない恩がある彼女から離れる気はない」
「…常識外の彼女……あれ…?」
男の言葉を聞いて女の子は呟くも自分の発言に不思議そうに首を傾げた。
「…まあいいか……魔導協会に所属すれば、貴方の研究を全面的に支援しよう」
女の子は自分の中に出てきた不思議な感覚を無視すると魔導協会に所属した時のメリットを説明する。
「ふっ…俺は魔導師になったばかりだ、研究するモノなどない」
「…では、仕方がない…最後の手段だ、この方法だけは取りたくなかったんだが…」
男が提案に興味なさそうに断ると女の子はため息を吐いて嫌そうに呟く。
「…最後の手段だと…?」
その様子に男は警戒したように臨戦体勢を取った。
「…是非、私達を助けると思って魔導協会にご協力下さい」
「…は?」
女の子がスッ…と地面に膝を着いて頭を下げながらお願いすると男は予想外の事に惚けた声を出す。
「貴方の『魔導師』…いえ、『魔導召喚師』としての力を貸して貰いたいのです」
「…なぜだ?」
急に下手に出た女の子に困惑しつつ男が問う。
「さきほど説明したとおり『魔導師』は世界に4人しかいません…才能があり、魔導師に一番近いと言われている候補生も僅か5人です」
「候補生…魔導の才能を持つ魔導師の弟子か」
女の子の話に思い出したかのように男が言う。
「…その候補生でさえ、天才でも無い限りは魔導師になれるのに十数年…下手したら数十年の歳月が必要になります」
「…人出不足、というやつか」
男は女の子の話を聞いて勧誘の理由を察する。
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