「…一応俺の分も用意されているし…これからまた存在感を示せるようにすればいい」
「……そうですね」
さあ食べよう、と青年が話を打ち切ると女の人は何か言いたそうな顔をしたが素直に従う。
「…それにしても美味い」
「本当ですね」
土瓶蒸しを一口食べて青年が唸るように言うと女の人も笑いかけながら同意した。
「…こんな料理が毎日三食、しかも無料で食べられる所なんて世界中探しても見つからんぞ」
彼女が魔物に料理を与えに行ってるからか青年は普段から思ってる事を口にする。
「…このキノコ…なんかいつもと違った感じがします」
「…おそらく朝採って来た物だ、彼女も珍しいと言ってたからそれなりに上質なのかもしれないな」
不思議そうに呟いた女の人の疑問を晴らすように青年が話す。
「…上質な物を使うとココまで美味しくなるんですね!」
いつもこういうのを使えば良いのに…と女の人が首を傾げながら呟く。
「…俺もこの前同じ事を思った」
「ですよね!…コレだけの腕があるのに…勿体無い…」
青年が苦笑しながら言うと女の人は聞きように彼女をバカにしてるかのような事を零した。
「…ソレを聞いたら彼女に鼻で笑われたが」
「…なんでですか?」
「…上質な食材を使って上等な料理を作るのは二流のやる事だからだよ」
青年の言葉を聞いた女の人の問いに、いつから聞いていたのか…
家の中に戻っていた彼女がドアを閉めながらそう告げる。
「「…い、いつのまに…」」
いきなりの彼女の返答に女の人と青年の気まずそうな呟きが重なった。
「…優れたモノを使えば優れたモノを作り出すのは簡単に出来る、ある程度の技量があればたとえ素人でもね」
「だが、劣ったモノを使って優れたモノを作り出すのは達人にしか出来ない…」
彼女が説明し始めるとその続きを青年が言う。
「一流というのは誰もが出来ない事をやるから一流なんであって…」
そこらの奴らが真似出来るような事しか出来ない奴はただの二流だ、と彼女はキッパリ言い切る。
「…な、なるほど…!」
女の人は彼女の言葉を聞いて納得したかのように呟いた。
「…という事は…わざと品質の悪い野菜とかを作ってたりするんですか?」
見た感じ品質の悪い食材なんて無さそうですけど…と女の人が問う。
「いや?畑や洞窟で育ててるのは最低限食べれれば良いぐらいにしか思ってないよ?」
女の人の問いに青年が気まずそうな顔をしているが彼女は大して気にした様子も無く疑問系で答える。
「…品質が悪ければ技術でカバー出来るし、品質が良ければラッキー…程度かな?」
そしてまたしても疑問系で続けるように言う。
「…技術でカバー…!」
女の人は彼女の言葉に何かを感じたのか尊敬するような目で見て呟く。
「…まあそこらへんはあんた達と似てるんじゃないの?」
レベルの差やステータスの差が少しなら技術でカバーっしょ?と彼女は興味無さげに聞いて土瓶蒸しを食べ始めた。
「…そう…ですね、そう考えたら似てるのかも…先ほどは失礼な質問をしてすみませんでした」
冷静になって自分の発言がナイと思ったのか女の人は彼女に謝って軽く頭を下げる。
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