「…そのスキル、便利だな」
「まあね」
青年の羨ましそうな呟きを流して彼女は大きな鍋を片付ける。
「…そういえば…さっきの料理、食べても何の効果も無かったようだが…」
「そりゃスキルを使ってないから当たり前だよ」
「…なぜだ?」
皿を戸棚に片付けている彼女に青年が問う。
「スキルを使えばMPを消費するじゃん?特に必要でも無いのにバンバン使ったら、必要な時に使えなくなるっしょ?」
「ソレは、そうだが…」
彼女の答えに青年は納得してない様子で歯切れ悪く返す。
「…なに?」
その青年の態度に彼女はイラついたように聞き返した。
「だって君…いや、すまない、俺の勝手なわがままだった」
青年は何かを言いかけると頭を下げて謝る。
彼女は特に何も言わずに外に出て空になった大皿を回収し、スキルを使って綺麗にして棚に片付けた。
「?どこに行くんだ?」
「畑」
カゴを背負った彼女は青年の問いに短く返して外に出て行く。
「畑?君は農業もやっているのか?」
外に出た彼女の後をついて行くように青年は小走りで近づきながら疑問を問いかける。
「…なんでついて来るの?」
「何が起こるか分からないからな」
「ヒマならさっさと街にでも戻れよ」
護衛のように後ろからついて来る青年に彼女は鬱陶しそうに手を振った。
「君を心配しているんだ」
「…なに?あんた、この外見に惚れたの?」
真顔で言い切る青年に彼女は眉をしかめて聞く。
「そ、そういうワケでは…」
「…ふーん?…この身体でシてみるのも悪くないかもな…試してみる?」
「…え?」
彼女は困惑している青年の手を取ると早足で歩き出す。
「ちょっ…!?」
畑に着くや否や彼女は青年を押し倒して上に乗る。
「な、な、なにを…!?」
「…うーん…何の変化も無いなぁ…冗談だよ、ゴメンな」
押し倒された青年は状況が理解出来ずパニックになるも、彼女は少し呟いて直ぐに退いた。
「…は…?」
「…え、もしかして期待してたとか?」
ポカーンと口を開く青年に彼女は不思議そうな顔で聞く。
「ち、違う!そんな事は…!」
「そう?まあどうでも良いけど」
青年は全力で否定するも彼女は興味無さそうに返してどこかに移動する。
「…もしかして、からかわれたのか…?」
状況を理解した青年が立ち上がりながら呟いた。
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