「…そうです、才能を感じない貴方がどういう方法で魔導師になれたのか不思議ですが…それだけでは留まらず上に超えてしまっている」
才能の有無に関係無く魔導師になれる方法があるのなら、この時代に革命が起きるでしょう…と女の子は告げた。
「…つまり彼女は時代の革命家、というワケか…本人にとっては迷惑極まりないと思うが」
女の子の言葉に男は軽く笑って零す。
「…その彼女、とやらを一目で良いから見たくなりましたね」
「悪いが無理だな、彼女は面倒事が嫌いなんだ」
女の子が興味を持ったように言うが男が拒否する。
「…それはそうと、一つ疑問が浮かぶのだが」
話題を変えるように男が人差し指を立てて聞く。
「…なんでしょう?」
「なぜ俺をスカウトするのに、こんなに急ぐ必要がある?」
普通なら最初に断った時点で引くハズだろう?と男は問う。
「…それは……」
女の子は困ったように言い淀んで少し考えた。
「…戦力が必要なので」
そして観念したかのように答える。
「…戦力だと?」
「ええ、ここ最近各地で争いが激化してきてる事をご存知で?」
男が怪訝そうに聞くと女の子が聞き返す。
「魔導協会の方にも世界各国から救援要請が数多く寄せられる、でも魔導師は4人…その中でも動いてくれるのは半分の2人」
「人出不足で戦力不足…それで俺を強引に?」
続けるように説明した女の子に男が納得したように聞き返した。
「…その通り…今は国同士の戦争で敗戦一歩手前の国からの救援要請が来てるのに、魔導協会の現戦力では手が回らない」
「…よし、それならば協力しよう」
女の子の腹を割ったような話に男は今まで拒否していた返事を一転させる。
「…なぜ?」
急に意見を変えてきた男に女の子が怪訝そうな顔で問う。
「争いを収めるための協力なら断る理由など無いからだ」
「…彼女、とかいう人から離れないと言っていたのに?」
男の答えに女の子はなおも聞いてくる。
「…彼女は俺がどこへ行こうが何しようが、自分に関係しなければ興味も持たない」
つまり…俺が戦争地帯へ行くと言わなければ止める事も無いハズだ、悲しい事にな…と男は自虐的に笑いながら返した。
「…ソレも彼女とやらの常識外の人のため?」
「もちろんだ、だから条件がある」
女の子が女の勘的なので察すると男は頷く。
「…条件…?」
「ああ、こちらの条件が呑めない限り俺は魔導協会には入らない」
眉を寄せて聞いてきた女の子に男がきっぱりと言い放つ。
「そして魔導協会に所属している時にも、もしかしたら条件が増えるかもしれない…当然その条件が呑めなければ脱けるワケだが…それでも俺を勧誘するか?」
続けざまに男は自分の考えを言って女の子に問う。
「…ソレばっかりは私の一存では決められない」
私はあくまで魔導協会にスカウトするだけだ…と女の子は首を横に振る。
「そうか…なら選べ、今すぐ魔導協会のトップに連絡を取るか、俺を諦めるか」
男は女の子に強制二択の選択肢を与えた。
「…分かった、連絡してみよう」
女の子は男の態度に何も言い返せない自分が悔しいのか歯を食いしばって袋からケータイを取り出す。
そして少しの間男に背を向けて誰かと通話する。
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