「…?コレは…?」
「かき揚げ、コレをあの魔物の前に投げて」
「??…分かった…」
青年は彼女に言われるまま魔物の前に投げると…
「グルル………」
魔物は警戒しながらも匂いを嗅いで食べ始めた。
「ヘッヘッヘッ…」
すると警戒を解いてヨダレと舌を出す。
「!?警戒を…解いた…!?」
「あんたも剣をしまって、魔物もライオンも多分一緒…食べ物さえ与えれば襲って来ないよ」
ポイッと2個目のかき揚げを魔物の前に投げながら彼女は説明する。
「…だが…もし襲われたら…」
「あんたなら追い払えるだろ?私なら諦めるけど」
3個目のかき揚げを投げて彼女はそのまま最後の看板を設置するために歩き出す。
「ちょっ…!ちょっと待ってくれ!」
「待たない、さっさと戻って昼ご飯の準備をしないと行けないんだから」
「じゃあ歩きながらで良い、もしかしてこの山にはあの魔物以外にも…?」
青年は魔物を警戒しながらも剣を納めて彼女の後をついて行く。
「早朝に群れをなしてお出でなすったよ…死ぬかと思った」
「っ…!やはり戻って来ていたか…」
「そういえば…レベルが37に上がっていたなぁ…」
「!さっ…!?」
彼女の何気ない一言に青年は絶句した。
「一晩で何があったんだろうね」
「逃したという情報があったが…そこまで強くなっているとは…」
「逃した…?ああ、なるほど…戦ってたから強くなったのか」
青年の苦々しい呟きに彼女は納得したかのように呟く。
「レベルが37…そして群れをなしているならもはや俺一人の手に余る…援軍を要請すべきか…」
「…どうでも良いけど、この山を戦場にはしないでくれよ」
珍しく自給自足できる場所なんだからな…と彼女はブツブツ呟く青年に頼む。
「…そういえば…なんで君はこんな所に住んでいるんだ?」
今のやりとりで気になったのか青年が聞いてくる。
「…なんでって…今言った通り自給自足出来るから?人がいないし来ないから家賃も無い、それに広い土地を使いたい放題で税金も払う必要無いから」
「…なるほど…自給自足か…」
彼女の答えに青年は何かを考えるように顎に手を当てた。
「しかし、この山を戦場にしないとなるとあの魔物達を追い出さないといけないな…」
どうしたものか…と頭をひねる青年を無視して彼女は杭を打ち込み、最後の看板を設置する。
「じゃ、頑張ってね」
「!?待て、一人で戻るのか!?」
「一人っていうか…この魔物もいるし?」
彼女は小屋からずっとついて来ている魔物を指差した。
「…一人じゃ危ない、家まで送ろう」
「余計なお世話だと思うよ?あんたが来ると魔物達を刺激させかねんし」
強そうな魔物の群れに一人で対抗出来るの?と、青年に注意するような言葉を残して彼女は山を登っていく。
「……ええい!何を迷ってるんだ俺は!万が一があってからは遅いのだ!」
青年は暫くその場で突っ立って彼女を追うべきか否か迷っていたが…
頭を振って吹っ切れたように気合いを入れ、先に登って行った彼女を追いかけるように走る。
「やはり一人では危険だ!」
「…さっきのを聞いて追いかけて来る?普通…」
山の中腹辺りで追いついて来た青年を見て彼女はため息を吐いた。
「万が一の危険性に備えてだ!」
「あんたが一緒じゃ万が一が十が一になるよ…」
彼女は青年を見てヤレヤレ…と頭を振り呆れたように零す。
「相手は魔物だ、何があるか分からない」
「そりゃそうだけどさ…こっちが喧嘩腰なら相手も喧嘩腰になるっしょ?言ってる意味分かる?」
「…敵が手出しして来るまで剣を抜くな…と言う事か?」
彼女の言葉の意味を青年が理解できたらしい。
「ん、もし襲われる前に剣を抜いたら山から叩き出すからね」
釘を刺すという意味合いで彼女が青年に注意する。
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