ワールドコントラクター

~辺境育ちの転生者、精霊使いの王となる~
日之影ソラ@二作書籍化予定
日之影ソラ@二作書籍化予定

第一章 世界の精霊『  』

1.第二の人生スタート

公開日時: 2020年11月20日(金) 18:09
文字数:2,276

小説家になろうでも投稿中!

 真っ白な世界。

 言葉で表すなら、その一言に尽きる。

 右を見ても白、左を見ても白。

 上下はもちろん、自分の目が見えているのか疑問になる。

 いや、そもそも自分の身体も見えないな。

 感覚はあるけど、視線を下げた所で真っ白で何も見えない。


 そこに一人、女の子が座っていた。


「こんにちは」


 彼女はニコリと微笑みながら挨拶を口にした。

 すると途端に、真っ白だった世界に風景が広がった。

 草原に一本の木が立っている。

 青い空は明るいのに、太陽の姿は見当たらない。

 風が吹いている感覚はあるのに、木の葉っぱは揺れていない。

 不思議がいっぱいだったけど、そんなことはどうでも良くて、俺は彼女に問いかける。


「君は……ひょっとして神様?」


 彼女の髪はオーロラみたいに色が変わっていた。

 瞳の色もそうだ。

 とても綺麗で、可愛い女の子に見えるけど、不思議な気配を醸し出している。

 まるで、人間じゃないみたいだ。

 だから俺は、神様じゃなないかと思ったんだ。

 こんな場所に一人でいることも、神様だからなのかと。

 

 しかし彼女は首を振る。


「だったら誰なの?」

「ごめんなさい。まだ……教えられないの」


 彼女は申し訳なさそうにそう言った。

 名前を尋ねてみたけど、教えられないと断られてしまう。


「ごめんなさい。でも、いつか教える日が来ると思うから」

「本当に?」

「うん。その時が来るまで、待っていてくれる?」

「わかった」


 俺がそう答えると、彼女は嬉しそうにほほ笑んだ。

 すると、世界が泡のように消えていく。

 草原が崩れ去り、一本の木は光の粒子となって消滅してしまう。


「え、な、何!?」


 理解できないことが起こって慌てる俺に、彼女は落ち着いた様子のまま告げる。


「また会いましょう」


 その言葉を最後に、世界は再び真っ白になった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 これはあくまで持論だけど、自分が死んだ理由なんてあまり重要じゃないと思う。

 大切なのはその後、自分ってやつがどうなったのかだ。

 俺の場合は幸運だったのか、死んだ後が用意されていた。

 目覚めた俺は、見知らぬ誰かの声を聞く。


「……――エルクトだ!」

「えぇ、そ――と、もうわ」


 男と女の声が一つずつ。

 意識はハッキリしているけど、視界はぼやけて良く見えない。

 俺を見下ろす様にして、二人が何かを話している。

 どうやら日本語ではないようだ。

 言葉の意味は理解できなかった。

 だけど一つだけ、ハッキリと聞こえたことがある。


 エルクト――


 それが俺の名前らしい。



 ここが異世界だと気づくのに、そう時間はかからなかった。

 三歳になる頃には言語の違いにも慣れ、この世界での一通りの常識は覚えた。

 前世の記憶が残っていたことが上手く作用してくれたらしい。

 ただ、前世の自分がそのまま転生した、というわけでもないみたいだ。

 三歳の俺は、三歳らしい感性を持っている。

 一度は成人して、大人として生きた記憶もあるのに、何だか不思議な感覚だ。

 これも俺が大人になれば、自然と馴染んでくることなのだろうか。


「エルは凄いな! 三歳でもう文字が書けるようになったのか」

「えっへへ~」


 僕の頭をニコニコしながら撫でてくれるこの人は、僕の父親……ではない。

 この男の人はドレガさんだ。


「あなたー、エル君! お昼ご飯が出来たわよ」

「わかった! 今行く」


 一階から女性の声が聞こえた。

 僕たちを呼ぶ声の主は、ドレガさんの妻ミシェルさん。

 ここは二人の家だ。

 そしてもう一人――


「あっ! エルー!」

「リルカちゃん!」


 鮮やかな黄色い髪と黄緑色のリボンで一つ結びにしたサイドテール。

 純白という言葉がぴったりな白い肌。

 透き通るような青い瞳が僕を見つめている。

 彼女の名前はリルカ。

 ドレガさんとミシェルさんの娘で、僕と同じ三歳の女の子だ。


「はやくー! 冷めちゃうよ!」

「わかってるって。じゃあいただきます!」

「「いただきます」」


 四人で食卓を囲む。

 この家で暮らしているのは、今いる四人だ。

 三人家族と、他一名。

 僕の両親は……もういない。

 二人は僕が物心つく前に病気でなくなったそうだ。

 ドレガさん夫婦は、僕の両親とは古い付き合いだったらしく、二人が亡くなった後、僕を引き取ってくれた。

 以来、僕はこの家で一緒に暮らしている。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 五歳になった僕は、難しい言葉も読めるようになっていた。

 少しずつだけど、前世の自分に近づうているような気がする。

 色々と深く考えられるようになった僕は、この世界について調べ始めていた。


 エレメタリア。

 それがこの世界の名前らしい。

 地球みたいに海があって、大きく広い大陸が一つと、その上下に二回りほど小さな大陸が一つずつ存在している。

 僕が生まれたルート村は、中央大陸の東の果てにあるとても小さな村だ。

 人口は約三百人で、大きな街からも離れている。


「エルー! 一緒に遊ぼー」


 部屋で本を読んでいる僕に、リルカちゃんが遊びの誘いをしに来てくれた。

 嬉しいけど、今は本を読んでいたい気分だ。


「ごめんリルカちゃん、僕はまだ本を読んでるよ」

「えーまたー? エルいっつも本ばっかり読んでるね」

「うん」

「そんなに面白いの?」

「面白いよ。リルカちゃんも一緒に読んでみる?」

「うぅ~ わたしまだ文字苦手だもん」


 リルカちゃんは嫌そうな顔をした。

 彼女は勉強とかが嫌いで、外で遊ぶ方が好きなんだ。


「じゃあ僕が読んであげるよ!」

「本当? じゃあ一緒に読む!」

「うん! 何から読もうかな~」

 

 どれにしようか悩む僕。

 リルカちゃんが一冊の本を見つける。


「これが良い! 精霊さんのことが書いてある本!」

「うん、いいよ」


 僕は本を開く。

 何度も読み返した本を。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート