「そんでエル坊、具体的にどうすんだ? 今さらなんだが、さっきの話も壮大過ぎて、正直あんまり入ってきてないんだよな~」
「私はわかったわよ」
「え? それじゃ俺だけ頭悪いみたいじゃねーか」
「そうだと思うけど?」
「酷いぜお嬢……」
「ははははっ、じゃあ一度話をまとめてみようか」
これから大変なことが待っているはずだ。
俺も今のうちに、考えを整理しておきたい。
「まず最終的な目的は穢れを封印することだね。このまま放っておくと大変なことになる」
「だな! そこはわかってるぜ」
「うん。それで、穢れを封印するためには世界の精霊の力と、四元素の上級精霊の力が必要なんだ」
精霊は下から上級の三階級に分けられている。
光る球体の姿をした下級精霊。
生物の形をして、ある程度の意思疎通が可能な中級精霊。
ドカドカは中級精霊だ。
そして、人間の姿と、人間と同じ理性と知性を併せ持った上級精霊。
中、下級の精霊とは比べ物にならない力を保持しており、もし契約できたのなら、たった一人で国全土を敵に回せる、とまで言われている。
というのも、上級精霊と契約できる人間は存在しない。
必要な霊力が膨大過ぎて、人間では賄えないからだ。
「上級精霊の居場所を見つけて、協力してもらわないといけない。あとは封印の場所も一緒に見つけないとね」
「ん? 上級精霊を探すのはわかったんだが、何で封印の場所も? そいつはエル坊の契約した精霊が知ってるんじゃないのか? なんせ世界の精霊なんだろ?」
「うん。俺もそう思ったけど、ミラは封印後に誕生した精霊だから、当時のことを知らないんだ」
「いや、だとしても場所ぐらいわかるだろ? 違うのか?」
「そうだね、大まかな場所ならわかるらしい。でも詳細まではわからないんだって。今は特に、溢れ出そうになってる穢れを押さえてくれてるから」
封印の場所は四か所。
それを知っているのは、先代の世界の精霊と、当時から生きている上級精霊だけ。
かつてミラも世界中を感じ取ることが出来たらしい。
それも今は難しくなっていた。
穢れの浸食がすすみ、それを押さえることに集中しているため、世界を捉える感覚が落ちている。
今の彼女にわかるのは、俺を中心としたごく限られた範囲のことだけだという。
「なるほどな~ まぁでも、先に上級精霊を探すんだろ?」
「そうだね。封印の場所がわかっても、上級精霊がいなければ封印できない。ただ……」
「上級精霊ってどこにいるのかな」
「うん、それだね」
リルが口にしたように、上級精霊の居場所に心当たりがない。
色々な本で存在は記されているけど、上級精霊との交流は、遥か昔に途絶えているから。
世界の危機なわけだし、協力してくれるとは思うけど……まずどうやって探すか。
「ドカドカ、あなた知らないの?」
「いやー悪いなお嬢。俺にも上級精霊の知り合いはいねぇよ」
「そう。役に立たないわね」
「すまねえな、ってん? お嬢今酷いこと言わなかったか?」
「気のせいよ」
ドカドカが知らないとなると弱ったな。
世界はとても広い。
この広い世界の中から、やみくもに探し出していて見つかるだろうか。
あまり時間をかけると、ミラの限界が来てしまう。
そうは言っても、他に心当たりは……
「あっ」
「エル坊?」
「どうしたの?」
「エリア学園」
一つだけ、心当たりを思い出した。
エリア学園は、世界で唯一精霊使いを育てる場所だ。
世界中の精霊や、精霊使いが集まっている。
それにエリア学園がある帝都は、この国でもっとも栄えている都でもある。
人も多いし歴史もあるなら、手掛かりが掴めるかもしれない。
「あそこは人も多いし歴史もある。それなら手掛かりが掴めるんじゃないかって」
「おぉ―確かにな」
「うん、良いと思う」
「よし! あーでも、推薦状があるのはリルだけだし、俺は入れないのか」
エリア学園って部外者も入れるのかな。
そもそも推薦状なしで入学する方法はないのか?
入学試験とか、そういうものがあるなら、一度挑戦してみようか。
「その心配はないと思うぜ」
「うん」
考え事をしている俺に、二人がそう言った。
「どういうこと?」
「これ」
リルは服のポケットから、一通の手紙を取り出す。
帝国から送られてきた手紙だ。
「この間の手紙だよね」
「違うわ。これは昨日届いたの」
「昨日?」
「ええ。中を見てみればわかると思うわ」
リルにそう言われ、俺は手紙を受け取り、中を見てみる。
そこに入っていたのは推薦状だった。
「俺への推薦状? 何で?」
「きっと悪い人たちを捕まえたことが伝わったのよ」
「だな! これでエル坊も、堂々と帝都へ行けるぜ? お嬢と一緒にな」
「うん」
手紙を持つ手が震えている。
この震えは嬉しさだ。
「入学は半年後だって」
「半年か……ここから帝都までは馬でも一月半かかる。それまでに、もっと強くならなきゃ」
「うん。私も強くなるよ」
「そうだね。一緒に強くなろう」
そして――
四か月後――
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