ワールドコントラクター

~辺境育ちの転生者、精霊使いの王となる~
日之影ソラ@二作書籍化予定
日之影ソラ@二作書籍化予定

13.これからどうする?

公開日時: 2020年11月23日(月) 12:01
文字数:1,965

「そんでエル坊、具体的にどうすんだ? 今さらなんだが、さっきの話も壮大過ぎて、正直あんまり入ってきてないんだよな~」

「私はわかったわよ」

「え? それじゃ俺だけ頭悪いみたいじゃねーか」

「そうだと思うけど?」

「酷いぜお嬢……」

「ははははっ、じゃあ一度話をまとめてみようか」


 これから大変なことが待っているはずだ。

 俺も今のうちに、考えを整理しておきたい。


「まず最終的な目的は穢れを封印することだね。このまま放っておくと大変なことになる」

「だな! そこはわかってるぜ」

「うん。それで、穢れを封印するためには世界の精霊の力と、四元素の上級精霊の力が必要なんだ」


 精霊は下から上級の三階級に分けられている。

 光る球体の姿をした下級精霊。

 生物の形をして、ある程度の意思疎通が可能な中級精霊。

 ドカドカは中級精霊だ。

 そして、人間の姿と、人間と同じ理性と知性を併せ持った上級精霊。

 中、下級の精霊とは比べ物にならない力を保持しており、もし契約できたのなら、たった一人で国全土を敵に回せる、とまで言われている。

 というのも、上級精霊と契約できる人間は存在しない。

 必要な霊力が膨大過ぎて、人間では賄えないからだ。


「上級精霊の居場所を見つけて、協力してもらわないといけない。あとは封印の場所も一緒に見つけないとね」

「ん? 上級精霊を探すのはわかったんだが、何で封印の場所も? そいつはエル坊の契約した精霊が知ってるんじゃないのか? なんせ世界の精霊なんだろ?」

「うん。俺もそう思ったけど、ミラは封印後に誕生した精霊だから、当時のことを知らないんだ」

「いや、だとしても場所ぐらいわかるだろ? 違うのか?」

「そうだね、大まかな場所ならわかるらしい。でも詳細まではわからないんだって。今は特に、溢れ出そうになってる穢れを押さえてくれてるから」


 封印の場所は四か所。

 それを知っているのは、先代の世界の精霊と、当時から生きている上級精霊だけ。

 かつてミラも世界中を感じ取ることが出来たらしい。

 それも今は難しくなっていた。

 穢れの浸食がすすみ、それを押さえることに集中しているため、世界を捉える感覚が落ちている。

 今の彼女にわかるのは、俺を中心としたごく限られた範囲のことだけだという。


「なるほどな~ まぁでも、先に上級精霊を探すんだろ?」

「そうだね。封印の場所がわかっても、上級精霊がいなければ封印できない。ただ……」

「上級精霊ってどこにいるのかな」

「うん、それだね」


 リルが口にしたように、上級精霊の居場所に心当たりがない。

 色々な本で存在は記されているけど、上級精霊との交流は、遥か昔に途絶えているから。

 世界の危機なわけだし、協力してくれるとは思うけど……まずどうやって探すか。


「ドカドカ、あなた知らないの?」

「いやー悪いなお嬢。俺にも上級精霊の知り合いはいねぇよ」

「そう。役に立たないわね」

「すまねえな、ってん? お嬢今酷いこと言わなかったか?」

「気のせいよ」


 ドカドカが知らないとなると弱ったな。

 世界はとても広い。

 この広い世界の中から、やみくもに探し出していて見つかるだろうか。

 あまり時間をかけると、ミラの限界が来てしまう。

 そうは言っても、他に心当たりは……


「あっ」

「エル坊?」

「どうしたの?」

「エリア学園」


 一つだけ、心当たりを思い出した。

 エリア学園は、世界で唯一精霊使いを育てる場所だ。

 世界中の精霊や、精霊使いが集まっている。

 それにエリア学園がある帝都は、この国でもっとも栄えている都でもある。

 人も多いし歴史もあるなら、手掛かりが掴めるかもしれない。


「あそこは人も多いし歴史もある。それなら手掛かりが掴めるんじゃないかって」

「おぉ―確かにな」

「うん、良いと思う」

「よし! あーでも、推薦状があるのはリルだけだし、俺は入れないのか」


 エリア学園って部外者も入れるのかな。

 そもそも推薦状なしで入学する方法はないのか?

 入学試験とか、そういうものがあるなら、一度挑戦してみようか。


「その心配はないと思うぜ」

「うん」


 考え事をしている俺に、二人がそう言った。


「どういうこと?」

「これ」


 リルは服のポケットから、一通の手紙を取り出す。

 帝国から送られてきた手紙だ。


「この間の手紙だよね」

「違うわ。これは昨日届いたの」

「昨日?」

「ええ。中を見てみればわかると思うわ」


 リルにそう言われ、俺は手紙を受け取り、中を見てみる。

 そこに入っていたのは推薦状だった。


「俺への推薦状? 何で?」

「きっと悪い人たちを捕まえたことが伝わったのよ」

「だな! これでエル坊も、堂々と帝都へ行けるぜ? お嬢と一緒にな」

「うん」


 手紙を持つ手が震えている。

 この震えは嬉しさだ。


「入学は半年後だって」

「半年か……ここから帝都までは馬でも一月半かかる。それまでに、もっと強くならなきゃ」

「うん。私も強くなるよ」

「そうだね。一緒に強くなろう」


 そして――


 四か月後――


読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート