外では何が起こっているのか知らぬまま、俺は室内で寝台に寝ころびながら自分の能力の検証をしていた。
彼を知り己を知れば百戦して殆うからずと言うではないか。
異世界に別の人間として来てしまった以上、欠かせない行動だ。
というわけで、ワクワクドキドキ、ステータスチェック!
「ステータス」と念じると、視界内のちょっと斜め下に、半透明のフレームが現れた。上の方から名前、種族、年齢等々様々な情報が並んでいる。
名前:末野海夢
種族:人間
年齢:15歳
基本LV:1
筋力:11
知力:4
器用:11
機敏:6
魔力:6
耐久:6
幸運:9
HP:25
MP:17
回避:23
物理抵抗:8
魔法抵抗:6
称号:世界運営神の加護(特)
所属:無し
CP:0
装備:セーター・ぬののふく・ぬののズボン・ふつうのくつ
へえ、マジでロールプレイングゲームじゃん。
ナンだよこの「ぬののふく」とか(笑)
そして見逃せない文字も並んでいた。
「世界運営神の加護」
いつの間にそんなものが?
それに(特)ってなんだ。(特)って。特盛って意味じゃないよな?
……世界運営神って、もしかして、あのセルフサービス転生をさせた本人って事か?
冗談は先ず顔を見せてからにしてくれ。
それとも、転生者全員につく称号なのかな?
うん、そうなのかもしれない。
加護と言うなら特殊能力やステータスの増減もあるだろうに、ぱっと見何もなさそうだしな。
このステータス画面の下に「スキル」「新規取得・ランクアップ」という文字が並んである。
後者は灰色になっていて反応もしないので、「スキル」をタップする。
新たなウインドウが出現し、この様な情報が並んだ。
”所有スキル”
「銃撃」クロスボウや銃での攻撃力・命中力をプラス補正する。
「風魔法」各種風魔法を使うことができる。常時使用可能。
「記憶術+」ランク2。見たもの・聞いた多くの事柄について、忘れずに思い出す事が出来る。ランク1は常時有効。ランク2は選択により使用可。
「視覚強化」視力及び動体視力が通常の三倍になる。
「詠唱短縮」魔法の詠唱について、30%省略できる。
「空気読み」レアスキル。空気を読める。常時有効。
「状態異常攻撃」攻撃時に相手の状態異常を引き起こしやすくなる。
「薬学」自然的・人工的な薬物についての知識を得られる。常時有効。
「鑑定魔法」様々な事についての状態と意味を知る事が出来る。常時使用可能。
うわー。
現実感ないわー。
本当にゲームの世界だね。
ふむ、な、る、ほ、ど。
このスキルと言うのは、パッシブスキルとアクティブスキルに分けられるのだな。
パッシブスキルとは「使用」しないと使えないスキル。
アクティブスキルは「使用」しなくても常にONになっているスキルと言う意味だ。
前者は「銃撃」「視覚強化」「詠唱短縮」「状態異常攻撃」で、文字が灰色になっている。
後者は「空気読み」「薬学」だ。文字に色がついている。
「記憶術+」については、ランク1の能力は常時使用可能で、ランク2の能力はONにしないと使えない訳だ。
そして二種の魔法は、スキルをONにしてから使うのではなく、直接魔法を使用すればそれでOKってことだ。
よく見ると、「銃撃」と「風魔法」と「視覚強化」、それに「空気読み」ってスキルは組み合わせると相性いいんじゃないの?
もしかしたら「状態異常攻撃」も絡められるかもしれない。
風を読んで操って遠距離射撃(スナイプ)とか、もし極めれば超A級スナイパーにだってなれるかもしれないよね? カッコイイよな! せっかく口調が「ハードボイルド調」なんだしな。効果音は「ズキューン!」でお願いね!
ま、実証には鉄砲がいるけど。
あのキャビンのを借りれたらいいんだけど、グラムが言うには、大砲一発ぶっ放すだけで物凄いお金が飛んでいくらしい。だから訓練もままならないのだと。
弾薬がいかに高価かを述べる時の彼の極悪顔を思い出すと、とてもじゃないが試射させてくれなんて言えるものではない。下手すれば、知識チートモノ定番の黒色火薬の製造も自分でしないといけないかもしれない。
だから今すぐ何かやれって言われたら、風魔法だけでどうにかする他ないだろうな。
やはりと言うか、上記の説明以外にはヘルプもチュートリアルも無いみたいだ。
そこで「鑑定魔法」を活用する事にした。
自分のスキルに向かって鑑定をしてみるのだ。
先ず本命の風魔法から行って見よう。
脳内で「鑑定」と念じて、ステ画面の風魔法の部分を触った。
動かない。
風魔法の一覧が並んだだけだ。
「エアバレット」「ウインド」云々……。
あれ? 作動しないな。
試しに「ウインド」の文字に触れる。
緑色の光で出来た魔方陣が束の間現れ、次いで部屋の中で強い風が渦を巻いた。
「……っぷ!」
それは十秒ほどで収まった。
ああびっくりした。今ので魔法が作動したとなると……。
今度は、「鑑定魔法」を呼びだして「鑑定」をタップした。
「対象を指定してください」
とあるので、「風魔法」に触れてみた。
やはりどういう意味なのかは分からないが、灰色に光る直径50センチメートル程の魔方陣が空中に現れ、十数秒煌めいた後、消えた。ちなみに、詠唱短縮のスキルは使っていない。
そしてようやく狙い通りに、もう一つのウインドウが出現して風魔法の内容を表示した。
”風魔法” ランク1
エアバレット LV1 基本消費MP1 強化可能:威力 距離 個数
圧縮した風を作り、相手にぶつけてダメージを与える。
基本消費MPと同量のMP消費を追加する事により、威力・距離・個数を追加できる。
追加できる量は各魔法のレベルに従い増えて行く。
ウインド LV1 基本消費MP1 強化可能:威力 距離 範囲 時間
風を起こす。
基本消費MPと同量のMP消費を追加する事により、威力・距離・範囲・時間延長を追加できる。
追加できる量は各魔法のレベルに従い増えて行く。
エアジャベリンLV1 基本消費MP2 強化可能:威力 距離 個数 クリティカル率
高圧の風を作り、相手を突き刺す。命中ごとにクリティカル判定が生ずる。
基本消費MPと同量のMP消費を追加する事により、威力・距離・個数・クリティカル率上昇を追加できる。
追加できる量は各魔法のレベルに従い増えて行く。
エアカッター LV1 基本消費MP2 強化可能:威力 距離 個数 状態異常確率
風で切り刻む。特定の相手に対し、一定の確率で、状態異常出血を与える。
基本消費MPと同量のMP消費を追加する事により、威力・距離・個数・状態異常確率上昇を追加できる。
追加できる量は各魔法のレベルに従い増えて行く。
ライトニング LV1 基本消費MP3 強化可能:威力 距離 個数 状態異常確率
小規模な電撃で攻撃する 特定の相手に対し、一定の確率で、状態異常麻痺を与える基本消費MPと同量のMP消費を追加する事により、威力・距離・個数・状態異常確率上昇を追加できる。
追加できる量は各魔法のレベルに従い増えて行く。
ふむ。
風魔法ランク1だと五つの魔法を使えるらしい。
ウインドウの表示の上では、ライトニングの下にも幾つか魔法が有るらしいが、カギのマークがついていて見ることができない。
何かの条件を満たすかランクを上げないと、ロックは外れないのだろう。
今得た情報で分かる事がある。
魔法は、それ自体にレベルが存在し、成長させることができるらしい。
また、MPを余計に消費する事で、例えばエアバレットなら幾つものエアバレットを発射できるようになるのだが、LV1だと一個しか発射できない。しかしLV10なら十個のエアバレットを同時に使用できるし、若しくは十倍の強さのエアバレットを一つ発射できるのだ。
ちなみに、現在MPは11/17となっている。
「ウインド」にはMP1しか費やしていない筈なので、「鑑定魔法」だけでMPを5も消費した事になる。
もしかして、知力が低いのって何か影響してる?
まさかね!?
どれ位の回復速度なのかも分からないので、MPは全て使い切らず、もう一回だけ「鑑定魔法」そのものを鑑定してみることにした。
鑑定魔法 ランク1 LV1 基本消費MP5 強化可能:対象の情報増加 対象の抵抗力減少
対象の情報を得ることができる。物、事象、人物問わない。情報が秘匿されている場合、対象に抵抗する意思がある場合、対象の基本LVが術者よりも高い場合、殆どの試行で失敗する。
基本消費MPと同量のMP消費を追加する事により、対象の情報量が増加する。若しくは対象の抵抗力を下げることができる。
LVが上がると、基本消費MP量が下がり、取得できる情報が増加、抵抗する対象についての成功率が上がる。
少なくとも、ランクが1のままだとしても、LVが上がるといい事があるのは理解した。
鑑定魔法のランク2以上についての記述やマスクされた部分は見当たらないので、鑑定魔法が一種類だけなのか、どう成長していくのかについては分からない。
風が帆や索具にぶち当たって大きな音を立てている。
カナロアは進んでいる。
もしかしたら、少し風も波も強くなってきているのかもしれない。
揺れが強くなってきた。
ナナミと会話でもしていたい所だが、彼女も艦長の仕事があるからな。
MPも回復させておきたいし、何かあるまで寝る事にした。
第七話、了。
HPは「(耐久力×2)+(基本LV×2)+筋力」
MPは「(魔力×2)+基本LV+知力」
回避は「(機敏×2)+器用」
物理抵抗は「耐久力+装備」
魔法抵抗は「魔力+装備」
……だったはず(オイ)
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