奇跡のネコ

みゆたろ
みゆたろ

ツカサ

公開日時: 2021年10月13日(水) 00:01
文字数:547

さっき感じた光《もの》よりも、強く温かい光が私を包んだ。眩しすぎて、私は目を閉じる。

その光が原因なのか。先程と同じようにして突然、私の中に温かい感情が湧き出してくるのが分かる。

この感情は夢じゃない。


ほんの少しの時間が立って、眩しさにも慣れてきたおかげで、ようやく目を開けた。そこには山口ツカサが立っていた。


ーー覚えてる。

ーーこの感触。そしてこの匂い。

ーーそして、この笑顔。


「ツ...ツカサなの?」


驚きの余りに目を大きくして、思わず口元に手をやった。

私が驚くとどうしても、こうなってしまうのは昔からのクセだった。


「何を言ってるんだ?俺だよ!ツカサ」


目の前にいるその男は、忘れもしない七年前の私の誕生日、会うはずだったツカサだ。

山登りをしてから会いに行くと行って出かけていって、戻ってこなかった彼ーー山口ツカサ(当時15)そこには彼が立っていた。

あの頃と何も変わらない顔をしている。

年相応に老けてもいない。不思議な事に彼は15歳だったあの頃のままだ。


山口ツカサは長身で、目もとがハッキリとしていて、鼻が高い。

どちらかと言うとイケメンの部類になるのかも知れない。


ーーどうして?

ーー何であの日、帰ってきてくれなかったの?

私の中のそんな思いが、口をついて出てくる前に、彼は言った。

「ーーただいま。マスミ」

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート