異世界詐欺師のなんちゃって経営術

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宮地拓海
宮地拓海

挿話11 異世界詐欺師VS異国の詐欺師~勃発~ -3-

公開日時: 2020年12月20日(日) 08:01
文字数:2,233

 ――一方、その頃のカンタルチカ。

 

レジーナ「ん? これ、薬やないで」

エステラ「えっ!?」

レジーナ「これ、ただ乾燥したキノコを粉末にしただけやな」

エステラ「そんなっ!? まさかっ!?」

レジーナ「あんた、騙されたんと違うか?」

エステラ「で、でも…………『精霊の審判』は発動しなかったし……とにかく後を追わなきゃ!」

レジーナ「もうおらへんやろう。……逃げた後や」

エステラ「…………そんな」

ネフェリー「ねぇ。ヤシロに相談してみたら?」

エステラ「ヤシロに……?」

ネフェリー「会話記録カンバセーション・レコードを見せて、詐欺の手口を見破ってもらうのよ。ヤシロ、そういうの得意そうじゃない。ほら、割とさ……頼りになるっていうか? 頭とか……ちょっといい感じじゃない? だからさ」

エステラ「か……会話記録カンバセーション・レコードを、見せるの、かい?」

レジーナ「なんや? 見られるとマズいことでもしゃべったんか?」

エステラ「…………」

レジーナ「まぁ、その恥ずかしさと、騙し取られた金額、騙された屈辱を天秤にかけてどっちが重いかっちゅうことやな」

エステラ「…………あぁ、もう! ヤシロに会いに行ってくる!」

ネフェリー「そう来なくっちゃ!」

レジーナ「ほなら伝えてんか。この小瓶の中身は乾燥キノコの粉末。体に効きそうな成分は食物繊維だけや……ってな」

エステラ「分かった」

ネフェリー「でも、見ただけでよく分かるわね、成分まで」

レジーナ「ウチの目ぇな、ちょっと特別製やねん」

エステラ「二人とも、ありがとう! じゃあ、行ってくる!」

 

 ――エステラ、カンタルチカを出て陽だまり亭へ。

 

エステラ「ヤシロッ!」

ヤシロ「どうした。『おっぱいが大きくなる薬~』とかいう胡散臭いもんを騙されて買っちゃったよ~、みたいな顔して」

エステラ「なんで分かるのさっ!?」

ヤシロ「え…………マジか? いつかそういう目に遭いそうだなぁ~ってつもりのギャグだったんだが…………」

エステラ「…………どうやら、そのいつかが……今日だったみたい」

ヤシロ「…………お前なぁ」

エステラ「だ、だって! 昼間にあんな話をしてたから……っ!」

ヤシロ「食い物で胸を大きくするってやつか?」

エステラ「……うん」

ヤシロ「とりあえず、事情を話せ。あと、会話記録カンバセーション・レコードを見せろ」

エステラ「み、見せるけど……笑わないでね?」

ヤシロ「心配するな! 大爆笑してやる!」

エステラ「あぁ、もう! どうとでもなれだ!」

 

 ――事情説明中

 

ヤシロ「……典型的な手口に嵌りやがって」

エステラ「……面目ない」

セロン「こんばんは」

ジネット「あ、セロンさん。ウェンディさんも。いらっしゃいませ」

セロン「あ、今日は食事ではなくて、ウェンディの発光塗料を落とす薬をいただきたいなと思いまして」

ジネット「あ、はい。レジーナさんが置いていってくださったのでありますよ。少し待ってくださいね」

ウェンディ「ご迷惑をおかけします」

マグダ「……また光ってる」

ロレッタ「まだ薄暗い程度ですのに、煌々と輝いているです」

ウェンディ「……すみません」

ヤシロ「――つまりまとめると、茶髪で髪の長い、おっぱい『ドーン』で太もも『ぷりーん』な美少女ってのが犯人の特徴なんだな」

エステラ「……その通りなんだけど……もっと細かく説明したのに、なんでそこだけピックアップするのかな……」

セロン「英雄様」

ヤシロ「よう、セロンとお釈迦様」

ウェンディ「ウェンディですよ、英雄様!?」

ヤシロ「いや、強烈に後光が差していたから、つい、な」

セロン「あの、今話題に上がっていた女性なんですが?」

ヤシロ「ん? 詐欺師のことか?」

セロン「詐欺師だったのですか!? 僕たち、その女性を見ました」

エステラ「本当かい!? どっちに向かったか分かるかい!?」

セロン「馬車に乗って四十区へ……たしか、ラグジュアリーでケーキを食べると話していました」

エステラ「よぉし! だったら早速乗り込んで……!」

パウラ「ねぇ! ヤシロいる?」

ヤシロ「パウラか。どうしたんだ?」

パウラ「さっきね、茶髪で髪の長い、おっぱい『ドーン』で太もも『ぷりーん』な美少女がカンタルチカに来たんだけど」

エステラ「ヤシロと同じ感性なのかい、君は……」

パウラ「お代はこれでって、渡されたんだけど」

ヤシロ「……マーシャのサインだな。マーシャに請求するのか?」

パウラ「うん、そうなると思う」

マーシャ「え~! なんでカンタルチカから請求が来るのぉ?」

パウラ「あ、マーシャ、来てたんだ」

マーシャ「ここのケーキ美味しいから、居座っちゃってま~す!」

ヤシロ「心当たりはあるのか?」

マーシャ「うん。その、茶髪で髪の長い、おっぱい『ドーン』で太もも『ぷりーん』な美少女に渡したんだけど……ムムお婆ちゃんにしみ抜きしてもらうための料金を立て替えるって話だったんだけどなぁ」

ヤシロ「……お前も詐欺られたんだな」

マーシャ「え~……どうしよ~」

デリア「行き先と人相が分かってんなら、とっつかまえて弁償させようぜ!」

ヤシロ「だが……会話記録カンバセーション・レコードを見る限り……全額取り返すのは難しいかもしれんぞ。決定的な嘘が見つからない」

エステラ「だって、この薬は偽物なんだろう!?」

ヤシロ「相手が『胸の大きくなる薬だ』と明言してないんだよ。エステラがそう思い込むように誘導はしているがな」

エステラ「そんな……じゃあ……」

ヤシロ「だから、こっちも同じことをやり返してやろう」

エステラ「え?」

ヤシロ「ふふふ……ヤシロ劇団、第二公演開幕だ」

 

 

 ――ヤシロのテリトリーで詐欺を働いた異国の詐欺師……彼女の運命やいかに…………続く。

 

 

 

 

 

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