「次は、どうする?」
「え、えっと……あの……」
エステラがジネットとマグダを見て問う。
ジネットが盛大に慌てふためいている。
「最後のヤツはレベルE」
「わたしが行きます!」
ピシッと腕を伸ばし、ジネットが立候補する。
相当苦手なようだな。
「あ、あの……ヤシロさん?」
「なんだ?」
「お手柔らかに……お願いします」
すでに泣きそうな顔をして、ジネットが素足を俺の前に差し出してくる。
あぁ……ペロペロしたい……………………………………いや、ダメか。
「あ、あの……どうかしましたか?」
「いや、なんでもない! じゃ、行くぞ」
「にゃふんっ!?」
照れ隠しにカカトの横をぐりっとすると、ジネットは奇妙な悲鳴を上げて上半身を『く』の字に折った。
「あぶねぇっ!? ……ふぅ、おっぱいが飛んでくるかと思った」
「飛びませんよっ!?」
いや、しかし。目の前で、凄まじく「ぶるんっ!」ってしたから。遠近法とか無視しそうな勢いで。
「じゃあ、ちょっと押すから、周り、気を付けてな」
「そんな、周りに被害を及ぼすほどは……」
そう言うジネットに反し、周りにいた面々は一歩後退し、万が一に備えて頭を抱えて身を低くした。
「そんなとこまで届きませんからねっ!?」
「……伸びる可能性を否定できない」
「伸びませんよっ!?」
「店長のおっぱいは、次元を超えるです」
「超えませんよっ!?」
マグダとロレッタを交互に見て「もう! もう!」とぷりぷり怒るジネット。
イライラするのはストレスが原因か? じゃあ、胃のツボを……えい。
「にゃふぅっ!? ……………………っにゃあああっ!」
ジネットが上半身を左右に振り身悶える。
それに合わせて、規格外のおっぱいが右へ左へ、北へ南へと大暴れだ。
「そうして、食堂内の机や椅子をすべて薙ぎ払い、その場にいたエステラたちを吹き飛ばす凄まじいジネットの爆乳」
「そんなこと……んっ! ……には、なってませんんっ! よねっ!? ふにゅううっ!」
なんか色っぽい!
もっとやろう! もっとやっちゃおう!
「ヤシロ、いい加減にしないとジネットちゃんが泣くよ!?」
鳴かぬなら、鳴かせてみたいな、爆乳を!
「こ、降参です、ヤシロさんっ! も、もう……っ!」
ジネットに懇願されては仕方ない。
またの機会にしよう。
「相変わらず、老廃物の貯蔵庫みたいな体してんだな」
「……ぅう…………すみません…………」
足をさすり、ジネットが床に蹲っている。
しばらく歩けないかもしれないな。
「じゃ、エステラー」
「今のを見た後だと……さすがに怖いね……」
恐る恐る椅子に座り、白くて、思っていたよりも小さい足を差し出してくる。
小っちゃっ! なにこれ? かわいいっ! え、子供? あぁ……成長期来てないもんねぇ……とある部分に。
「まぁ、お前は大丈夫だよ」
「手加減してくれるのかい?」
「肩こりとは無縁だから」
「デスクワークメインのボクに、よくそんなことが言えるよねぇ!?」
お前は他の誰よりもデスクワークの量が多いからこそ、人体の神秘によるヘビーウェイトを免除されてるだろうが。文句言うなよ。
「じゃあ、サクッと行くぞ」
指の付け根を押さえると…………すごい勢いの蹴りが飛んできた。
「危ねっ!?」
よくかわせたと、自分を褒めてやりたいくらいだ。
「お前、気を付けろよ!?」
「痛い、痛い、痛いたいたいたい!」
「そんな強く押してねぇよ。…………ぐぃっと」
「いたぁぁあああーーーーーーい!」
やはりエステラは、目が疲れていたようだ。
ブルーベリー食え。な?
「や、やしろっ! やしろぉっ!」
痛みのせいで、なんだかよく分からない、面白い動きを見せるエステラ……なの、だが…………
「も、もう…………もう、やめてよぉ……やしろぉ…………」
半泣きで甘えられたっ!?
おい、誰か、白米を炊けぃ! 今ならドンブリ三杯軽くイケそうだ!
「お、おぅ…………しょうがねぇな……」
なんか、エステラの小さい足に触れてるのもちょっと恥ずかしくなってきた。
こ、今回は、これくらいで許しといてやらぁ。
……今度、またゆっくりやってやろ。
「……最後は、マグダ」
「おう…………って、膝の上じゃなくて、向かいの椅子に座るんだよ」
いつものように、ストーンと俺の膝に腰掛けるマグダ。
それじゃ出来ないだろうが。
「……耳でもいいよ」
「それじゃ罰ゲームにならないだろう?」
「……獣人族の耳もふは、おっぱいに匹敵する」
「お前……今さらその話持ち出すか?」
お前が気にしないと言って催促してくるから……そもそも、俺はそれがちょっと気にかかってデリアやネフェリーに確認しに行ったんだからな? もふってていいのかって。
まぁ、みんな同じような回答で、「おっぱいはあくまで比喩だから、本人がいいならいいんじゃないか」ってことだったけど。
髪撫でたりハグしたりより、少し親密なスキンシップということらしい。
「んじゃ、お前は耳な」
「……しょうがない。覚悟は出来ている。いつでもどうぞ」
なんだこの茶番。
実のところ、マグダには足つぼがあまり効かないってことを、俺は知っている。
獣人族の狩人だからだと、マグダは言っていたが……痛みにはめっぽう強いのだ。むしろくすぐったい方が勝つらしく、マグダはあまり足つぼが好きではない。
なら、無理して時間を割くこともないか。
俺は目の前で期待するように揺れるネコ耳をもふもふする。
「…………むふー!」
マグダが上機嫌な声を出し、今回の罰ゲームは終了した。
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