「皆様。お嬢様方の準備が整ったようです」
ナタリアが静かに告げると、俺たちの視線は自然と小屋の扉に集中した。
……来るぞ!
いよいよ始まるんだ、水着パラダイスがっ!
「エントリーナンバー一番! 陽だまり亭のロリっ子エンジェル、マグダ・レイヴァース!」
ナタリアがよく通る声で司会者みたいなことを言い始める。
いや、なんだよそれ。こっちの世界でもあんのか、ミスコン?
ナタリアの呼び込みに応えるようにドアが開き、マグダが姿を現した。
マグダの水着は以前にも見ている。可愛らしさが優先の水着だ。
「ぬはぁぁぁあっ!? オイラ、今死んでも本望ッスっ!」
隣で変態が身悶えている。悶絶寸前だ。
あぁ、暑苦しい。誰か川に捨ててきてくれないかな?
「……脱いだらもっとすごい」
「あぁ、分かったから。早くこっちおいで」
「……むぅ。感動が少ない」
そりゃ、二度目だからな。こっちでウーマロに絶賛してもらえばいい。
いや、可愛いよ? でもさ、まだ見ぬ世界って、やっぱ興味あんじゃん?
「エントリーナンバー二番! 養鶏場の溌剌アイドル。ネフェリー!」
ナタリアの呼び込みがあり、開け放たれた出口からネフェリーが出てくる。
「ちょっ!? あんまり注目しないでよ、ヤシロのエッチ!」
出てきていきなり俺と目が合い、恥ずかしそうに自身の身体を抱く。
ネフェリーの水着はサロペットという、水着の上にオーバーオールを着たような、露出が少なめで女の子らしい可愛さを押し出した水着だ。とはいえ、背中は大きく開いており、セクシーさの演出にも抜かりはない。
これもマグダのタンキニ同様、下にビキニを着込んでいる。
「ネッ、ネネネネネ、ネフェリーさんッ! マジ、キレーっすよ! パネェす!」
遠くでチャラ男が吠えている。
あいつも川に流したいところだな。
ネフェリーは俺のそばまで来て「どう?」なんて聞いてくる。そう聞かれても「似合ってるな」以外に言いようがないんだけどな。
「でも、他の人に比べて、私の水着は露出少な目だよね? 何か意味があるの?」
「いや、ネフェリーには、こっちの方が似合うと思ってな」
「あ、もしかして……私の肌、あんまり他の人に見せたくないとか?」
「え……」
「あ~! 図星だぁ! もう! ヤシロってばっ!」
俺の背中をパチンと叩き、ぴょんぴょんと跳ねながら遠ざかっていくネフェリー。スズメやハトがああいう歩き方するよなぁ……
つか、まぁ……あんまり肌をさらさないでほしいってのは事実だな。
だって……顔、ニワトリだし……境目とか、なんかすごい……こう……違和感っての?
なんかさ……エジプトの壁画にいそうな感じなんだもんよ。直視できねぇよ……
「盛り上がってまいりました! エントリーナンバー三番! カンタルチカの看板娘パウラ!」
キャバレーの司会者みたいな煽りを挟み、ナタリアが次に呼び込んだのはパウラだった。
「見て見て! これ、可愛いでしょう!?」
自分の容姿に自信のあるパウラは、アピールの仕方もまっすぐだ。
首から胸の下までを覆うスポーツタイプのブラで、肩から背中にかけて大きく露出しているために重くなり過ぎず、そのくせ露出の割に可愛らしさが目立つ快活な印象を与える。ビーチバレーの選手が着ていそうな感じかな。パウラみたいな明るい娘にはピッタリの水着だ。
「ねぇねぇ? 可愛い?」
「あぁ。これで店に立ったら客増えるぞ」
「やーだよー! えっちー!」
こういう軽いノリで話せるのが、パウラ最大の魅力かもしれないな。
「まさかこの人がここまでするのかっ!? 四十二区の聖女、シスター・ベルティーナ!」
エントリーナンバーが面倒くさくなったっぽいナタリアがベルティーナの名を呼ぶ。
「「おほぅっ!?」」
ベッコとオメロが思わず声を漏らしてしまったのも頷ける。
ベルティーナは上に純白のパーカーを着ている……だけに見える格好なのだ。
本当は下に白いワンピースの水着を身に着けているのだが、その上にラッシュガードという濡れてもいいパーカーを着ている。その前面をしっかりと留めているため、まるでパーカーしか着ていないかのように見えるのだ。いや、歩く度に足の付け根から白い物がチラチラ見えるのだが、これがまたなんともエロい! パンチラじゃないよ? 水着だよ? でもそんなこと、この際関係ないよね!? パンツじゃないから恥ずかしくないよね!? じゃあ見てもいいよね!?
「これでしたら、私も恥ずかしくないです。お気遣いありがとうございますね、ヤシロさん」
「い、いや……ベルティーナさんは、そういうのちょっと、あれかと思って……あはは」
隠した方がエロい! そう思ってラッシュガード着せました! ……とは、言えない。
「条例スレスレ!? 花屋の妖精、ミリィ・ノーヴァ!」
「ぁう……大丈夫だよ。みりぃ、こどもじゃないよ……」
ナタリアのおかしな呼び込みにおろおろとしながらミリィが出てくる。
ミリィは胸元と腰にフリルをあしらったワンピースだ。子供のようでありつつ、少し背伸びした感じのデザインの水着だ。ミリィに求められるのは露出じゃない! 癒しだ!
「てんとうむしさん……どう?」
「いいか悪いかと聞かれれば……、百点満点だ!」
「……犯罪者っぽ~い」
「……子供を見る目つきじゃないわよね」
「……ヤシロだからしょうがない」
パウラ、ネフェリー、マグダから妙な言いがかりをつけられる。
やかましい。多少はそういう目で見るわ、そりゃ!
「エレガントな着こなしで世界中の男を魅了する、神がこの世に産み落とした一粒の芸術。世界の美がそこに集結し…………えーっと…………あ、そうそう……ヴィーナスがこの地に舞い降りる! 木こりギルドのお姫様、イメルダ・ハビエル!」
……カンペ渡されてんじゃねぇよ。いくらで買収されたんだお前は?
「刮目するといいですわ!」
両腕を広げ小屋から出てきたイメルダ。
派手なイメルダには、あえてワンピースを渡してある。……外見に似合わず意外と乙女だったりするんで露出を少なめにしてやりたかったのと、もう一つ……
イメルダ級のおっぱいがワンピースの中でギュウギュウ詰めにされている感じは物凄くいい! 谷間をさらせば男が喜ぶと思っている巨乳! あまいぞ! 窮屈に押し潰されているおっぱいもいいものなのだ!
「ムッギュムギュだな!」
「いやらしい目で見ないでくださいましっ!」
胸を押さえつつも、さほど嫌そうではないのは、きっとこの暑さが開放的な気分にしてくれているからだろう。
あと残っているのは三人か。
「煩わしいのに影が薄い! 普通の中の普通! ロレッタ・ヒューイット!」
「呼び込みが酷いです!? 悪意を感じるですよ!?」
ひな壇芸人の如き勢いで飛び出してきたロレッタ。
うん。お前のポジションはそこだよな。
「あたしも他の人みたいに恥じらいながら出てきたかったです!」
「最後に回されて、呼ばれる前に『以上です!』ってボケをされるよりマシだろう?」
「うぅ……それは、それよりかはマシですけど……」
しょぼくれるロレッタを見て、ほんの少しだけ疑似兄心が刺激されてしまった。
くそ、今日だけだぞ。
「似合うなロレッタ。ちょっとよく見せてくれないか」
「ホントですか!? 見たいです!? 見てほしいです!」
ニパッと笑って、ロレッタが嬉しそうにくるくる回り始める。前も後ろも見てほしいということだろう。
ロレッタの水着は上下をあえて揃えないビキニで、目を引くデザインだ。色が多くなると色味がうるさくなりがちだが、ロレッタの明るさがあればそれも気にならない。実に『らしい』コーディネートだと言える。こういう個性的なものはロレッタによく似合う。本体が無個性だからか?
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