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「ヤシロッ!」
「あ、エステラさん。おはようございます」
ボクが厨房に飛び込むと、そこにはジネットちゃんしかいなかった。
「あれ? ヤシロは?」
「ヤシロさんでしたら、お部屋に戻られましたよ?」
くっ! 逃げられたか。
「それで、大丈夫だった?」
「え? 何がですか?」
「い、いや……だから…………揉み揉…………とにかく、大丈夫だった!?」
「は、はいっ! その……至って健康です」
揉み揉みは断念したのだろうか……ジネットちゃんが無事そうでよかった。
「とにかく。この後、教会でも十分気を付けなきゃいけないね」
「あ、ヤシロさんでしたら、今日は教会へは行かれないそうです」
「え? なんで?」
「なんでも、ネフェリーさんに会いに行かなければいけないとかで……」
「ネフェリー!?」
ネフェリーって、あの? 養鶏場の?
……まさか、ヤシロが揉み揉みしたいのって…………
「ごめん。ちょっと上がらせてもらうよ!」
「え? あ、ど、どうぞ」
ジネットちゃんの許可を得て、ボクは厨房を抜け、中庭を突っ切って、二階へと上がる。
以前から少し怪しいと思っていたんだ。
ヤシロがネフェリーを見る目は、他の人に向ける視線と少し違っていたから。
……まさか、揉み揉み対象だと見ていたなんて…………そんなに大きくはないのに……あれくらいが好みなのかな?
いや、そんなことはどうでもいい!
揉み揉みだなんて、そんな不埒な行為を見過ごすわけにはいかない。
「ヤシ……っ!」
「クリスマスに必要なものか…………なかなか難しいよなぁ……」
部屋に突入しようとした時、部屋の中からヤシロの声が聞こえてきた。
……くりすます?
ボクはそっとドアに耳を当てる。
「プレゼントは用意したからいいとして……っと、見つからないように隠しておかないとな」
プレゼント?
隠すってことは、知られるとマズい物なのか?
「ケーキは作るとして……やっぱネフェリーんとこだよなぁ」
ケーキと、ネフェリー?
一体なんの話なんだ?
「それから…………恋人」
こいびとっ!?
「まさか……ヤシロ…………ネフェリーを恋人に…………」
そして、揉み揉みする気なのか…………っ!?
「否っ! これから生まれる新しいクリスマスは、恋人どもに侵食などさせない! させてなるものかっ! 今、日本でイチャイチャしているリア充共! 異世界からこの言葉を贈ろう! 爆発しろ!」
…………?
ヤシロは一体何を言っているんだろう?
「……はぁっはぁっ……爽やかな汗をかいたぜ……清々しい気分だ……はははっ」
……なんか、楽しそうに笑ってる…………一体、くりすますっていうのはなんなんだい、ヤシロ……
「とりあえず、モミに関してはミリィかイメルダだな。ミリィ、また森に連れてってくれないかな……」
『揉みに関してはミリィかイメルダ』!?
ミリィまで対象に入っているのかい!?
それも森で!?
「先にイメルダのところに行ってみるか……まぁ、起きてはないだろうが……時間が無いからな。叩き起こしてやる」
マズい! ヤシロが近付いてくる……!
どこかに隠れ…………いや。
イメルダのところへ先回りするんだ!
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