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パーシーが面白い顔になり、お気に入りのネフェリーに大笑いされてへこんでいる様を、ウーマロはケラケラと笑って見ていた。
マグダは教えてあげたかった。
こういう時にそういう態度を取っていると、今度は自分がそういう目に遭うということを……
「……ウーマロの番」
「あ、ありがとうッス、マグダたん!」
嬉々としてサイコロを振るウーマロ。
……さて、どんな悲劇が振りかかるのか……マグダの勘が外れていなければ……ここで面白いことが…………
『来年の抱負を述べる』
…………あれ?
これは……このあってもなくてもいいようなゆる~い命令は……
「あ、わたしが書いたヤツですね」
嬉しそうに店長が言う。
……おかしい。マグダの勘が外れるなんて……むしろ、ウーマロに面白いことが起こらなければ、ウーマロのいる意味が……お笑い担当がお笑いをしないだなんて……
「来年の抱負は、ズバリ! 街門を完成させることッス!」
「うっわ、つまんねぇ! 次、次!」
「なんッスか!? 普通でもいいじゃないッスか!」
ヤシロがマグダと同じ感想を持つ。さすがヤシロ。分かっている。
「はいッス。次はマグダたんの番ッス」
「……うん」
なんだかスッキリとしない気持ちのまま、マグダはサイコロを振る……『3』
……1、2、3…………そこに書かれた命令文に視線を向ける。
『ウーマロにデコピンをする』
「なんでオイラッスか!?」
素晴らしい!
ウーマロはまさに神を引き寄せた。
お笑いの神を!
これを書いたのは……間違いない。ヤシロだ。マグダの隣で小さくガッツポーズをしている。
「……では、命令だから」
「うぅ……お手柔らかにお願いするッス……」
「……平気、首が飛んでいくことは無い」
「そんなレベルの話なんッスか!?」
驚愕の表情を見せるウーマロのおでこに指を添え、軽く弾く程度にデコピンをする。
――ゴッ!
普段耳にしないような鈍い音がして、ウーマロが地面に蹲る。
……こんなに手加減したのに。
「あ~、ちっきしょ~、マグダに抜かれちまったかぁ……」
そんな嬉しそうな声が上がる。
出所はヤシロだった。
ヤシロのコマは、今マグダの止まったマスの一つ手前に止まっている。
「『1』以外! 『1』以外来るッス!」
そんなウーマロの言葉が天に通じたのだろう。ヤシロが振ったサイコロは『1』を示していた。
「なんでッスか!?」
「……素晴らしい引きの強さ……さすが、ウーマロ。『持って』いる」
「嬉しくないッス!?」
涙目で訴えかけてくるウーマロ。
気の毒なことに、ヤシロの思惑通り、二度目のとばっちりデコピンを喰らっている。
なんとも、「おいしい」展開だ。
「ほい、ジネット。頑張って『4』を出せ」
ヤシロが店長にサイコロを渡す。
店長のコマがあるマスから『4』つ目には、マグダとヤシロのコマが止まっている。
すなわち、そこに書かれているのは――
『ウーマロにデコピンをする』
この流れでここに止まれれば、かなりすごいっ!
いやがうえにも期待は高まる!
「では、行きますね~」
店長がサイコロを振る。全員の視線がサイコロに注がれる。
ゆっくりと回転をし、最終的にそのサイコロは『6』を出した。
……通過しちゃった…………
「4……5……6…………っと。えっと……」
店長が身を乗り出して、自分のコマが止まった場所に書かれた命令を読み上げる。
「『2マス、戻る』」
2マス戻った店長のコマは、マグダたちと同じところに止まり……店長は申し訳なさそうにウーマロにデコピンを喰らわせていた。
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