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ティータイムが終わった頃、セロンさんとミリィちゃんが同時に来店して、なんだか木を置いていったです。
その辺りから、お兄ちゃんが妙に張り切り出したです。
「よし、ロレッタ。ちょっと手伝え」
「はいです」
何やら忙しそうなお兄ちゃん。あたしの力が必要なんですね、分かるです!
「アホのお前でも出来る簡単な仕事だからな」
「アホじゃないです!」
「お子様ランチ三つとお汁粉二つで、合計いくらだ?」
「それは店長さんのお仕事で、あたしが踏み込んでいい領域ではないです」
己の立ち位置を弁える、出来る娘です、あたしは。
「と、このようなアホの子でも出来る仕事だ」
「アホじゃないです!」
おかしいです……まるで伝わっていないです…………
「俺が朝からせっせと木材を削って作ったこいつに、カラフルな布を張りつけてくれ」
そう言って、お兄ちゃんは星の形や球体、ブーツやステッキみたいな形をした木をテーブルに置いたです。たくさんあるです。どれも可愛いです。相変わらず器用です。
「これはなんですか?」
「オーナメントって言ってな、クリスマスツリーの飾りだ」
「おーなめんと……ふむふむ、あぁ、なるほどです。これがあの……」
「お前、絶対分かってないだろ?」
分かっていなくともいいのです。
分かってるっぽい感じが出れば頭良さそうに見えるです。
「布は、ウクリネスんとこで端切れをもらってきたから、そこから適当に使ってくれ」
「分かったです! これを使ってとびっきり可愛く仕上げればいいですね!」
「おう。頼めるか」
「任せてです!」
何を隠そう、あたしは芸術的センスが他人よりも秀でている気が、ここ最近しているです。あたしの勘は割と当たるような気がするですから、きっと秀でているです。
すごいのを作ってお兄ちゃんをビックリさせるです!
「ヤシロ~」
「来ましたわよ」
「おう。ちょっとこっち来てお前たちも手伝ってくれ」
エステラさんとイメルダさんが二人揃ってやって来たです。
どうやら、あたしと同じ作業をするようです。むむむ……です。
これは、負けられない戦いになりそうです。
「……って、感じで作ってくれ」
「なんだか楽しそうだね」
「ワタクシに任せておけば、問題なしですわ」
「頼むな。アホの子でも出来る簡単な仕事だから」
「「アホの子じゃない!」ですわ!」
ぷぷぷ……アホの子呼ばわりされてるです、ぷぷぷ~。
それから、わっせほいせわっせほいせと、あたしたちは時間も忘れてオーナメントを作ったです。贔屓目抜きにして、客観的に、第三者的に作品を見てみた結果……やっぱり、あたしのが一番可愛いです。むふふ、です。
窓から差し込む光が弱くなり、空の色が微かに色を変え始める頃、用意されたオーナメントはすべて、カラフルな布を纏い綺麗な飾りになったです。留め金を付けて、紐を付けて、輪っかにして、引っかけられるようにもしたです。
「お兄ちゃん、出来たですよ~」
「おう。んじゃ、このモミの木に飾りつけていってくれ」
「もみのき?」
「これだこれ。なかなかいい味出してるだろ?」
一度中庭へ運ばれた150センチほどの木が、セロンさんの鉢植えに入った状態で、食堂のど真ん中に置かれていたです。
これがモミの木……
「モミの木……か…………な~んだ」
「勘違い……でしたのね…………ほっ」
なんだか、エステラさんとイメルダさんが疲れ切った表情でモミの木を見つめているです。
何があったですかね? まぁ、何かあったんでしょう。
「それじゃあ、いい感じに飾りつけといてくれ。俺は料理の準備をしてくる」
お兄ちゃんが厨房へ戻り、あたしは、あたしのセンスを見せつけるためにモミの木にオーナメントを『いい感じで』飾りつけていったです。
「あ、ロレッタの飾りつけ……」
「むふふん。可愛いです?」
「なんか、……普通だね」
「ふ、普通いいじゃないですか!?」
こんな横槍には負けず、あたしは飾りつけたです!
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