――一方、その頃の陽だまり亭。
デリア「ヤーシロー! 遊びに来たぞー!」
マーシャ「お久しぶりぃ~☆」
ヤシロ「おぉ、デリアにマーシャ」
ジネット「いらっしゃいませ、お二人とも」
デリア「ケーキくれ! ケーキ! あたいはモンブランで、マーシャはミルクレープだ!」
マーシャ「デリアちゃんから聞いて、すっごい楽しみにしてたんだよぉ☆」
ジネット「では、すぐにご用意しますね」
ヤシロ「で、今日は半魚人いないのか?」
デリア「キモさが許容量をオーバーしたから捨ててきた」
ヤシロ「そんなもん、年がら年中オーバーしてんじゃねぇか……」
マーシャ「そういえば、いつもだいたいここにいる大工さんは? 今日はいないねぇ☆」
ヤシロ「ウーマロか?」
マーシャ「そうそう。いつも私を見ては顔を真っ赤にしてくれるから、面白くて好きなんだけどねぇ☆」
デリア「こいつ、ワザと視線向けたりしてからかってんだぜ?」
ヤシロ「あんまりやると、あいつ死ぬぞ?」
マーシャ「大丈夫。ちゃ~んと瀕死で寸止めしてるよぉ☆」
ヤシロ「……大丈夫なのか、それ?」
マグダ「……ウーマロたちは今日、三十五区でお仕事」
マーシャ「あれぇ、そうなのぉ? じゃあすれ違ったかもしれないねぇ」
デリア「あたいら、今日はそこの門を通ってきたんだ」
マグダ「……お弁当を渡したから、たぶん今日は来ない」
ヤシロ「ウーマロなら、仕事を抜け出してでも顔を出しそうだけどな……」
マグダ「……キツネ人族なら、ノーマがいる」
ノーマ「アタシはケーキを食べに来ただけさね。あんたたちに構ってやるつもりはないよぉ」
デリア「別に構ってもらわなくても結構だよ。あたいらもケーキ食いに来ただけなんだ」
ヤシロ「好評なのはいいんだが……顔見知りばっかり集まってくるんだよな……」
エステラ「やぁ、みんな! 今日もケーキを食べに来た…………なんだ、この巨乳率!?」
ヤシロ「ほら、また顔見知りだ……」
エステラ「君たち! 同じ区に住んで、同じようなものを食べているのに、どうやったらそんなに育つんだい!?」
デリア「鮭!」
ノーマ「煙管」
マーシャ「オキアミ?」
エステラ「それ、単に君らの好きなものじゃないか!」
ノーマ「食べると胸が大きくなる食べ物なんてあるわけないさね」
マーシャ「でも、牛乳を飲むと大きくなるって言わない?」
エステラ「牛乳なんて、毎日飲んでるよ! それでもダメなんだよ!?」
デリア「鮭で十分だよ」
エステラ「鮭も割と食べるようになったよ!」
ノーマ「煙管はどうだい?」
エステラ「……煙管は……ちょっと……」
ヤシロ「大丈夫だエステラ。あいつらは何を食おうが食うまいが、巨乳になる体質なだけだ」
エステラ「じゃあ、ボクはどうすればいいんだい!?」
ヤシロ「諦めろ!」
エステラ「諦められるかぁー!」
ジネット「お待たせしまし…………エステラさん、どうされたんですか?」
マグダ「……生きるのはつらい……そういうこと」
ジネット「よく、分かりませんが……エステラさん、頑張ってください!」
エステラ「頑張るったって…………あ~ぁ、胸が大きくなる薬でもあれば、いくらでもお金出すのになぁ~!」
――それが、今回の騒動の発端となるなんて、この時は誰も思わなかった。
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