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「シスター。準備が出来ました」
「ベルティーナさん、もち米、すっごいほっかほかです!」
「……子供たち、手伝えー」
「「「ぅわ~い!」」」
ジネットをはじめ、陽だまり亭のみなさんが教会に来て、また面白いことを始めました。
「いいかガキ共! 働かざる者食うべからず! ちゃんと手伝いをしねぇヤツには一つも食わせねぇからな! 分かったか!?」
「「「はぁ~い!」」」
今回も、ヤシロさんが発起人となり、子供たちを喜ばせるために企画してくださったのだとか。本当に、面倒見のいい方です。
「じゃあ、今言ったことをあそこの働かないのに人一倍食うシスターに言ってきてくれ」
「「「シスター! 働かざる者食うべからずだってー」」」
ヤシロさん……子供たちを使って牽制してくるとは…………これはきっと、よほど美味しい物なのでしょう。わくわくが止まりません。
「ヤシロさん、臼と杵の具合はどうッスか? 一応、言われた寸法で作ったッスけど」
「あぁ、バッチリだ。それからミリィ、ケヤキの木ありがとな」
「ぁ……ううん。クリスマス、楽しかったから……」
「いい娘だなぁ、ミリィは…………それに比べてどこかの木こりギルドは!?」
「仕方ないではありませんか!? 木こりギルドの支部はいまだ住居しか存在しないのですから! ウーマロさんの怠慢ですわ!」
「ちょっと待ってッス! オイラ今、街門の工事で滅茶苦茶頑張ってるッスよ!?」
「ヤシロ。早く始めようよ。もち米を持ち続けてるロレッタが涙目だよ?」
「あ、熱いです! 早く次の指示が欲しいです!」
生花ギルドのミリィさんが森から木を持ってきて、それをトルベック工務店のウーマロさんが加工した『臼』と『杵』というものを使って、今日は『餅つき』ということをするのだそうです。
これから何が起こるのか、子供たちがわくわくとヤシロさんの周りに集まっています。
「よし! じゃあ、最初は俺が手本を見せるからな。餅を搗くタイミングで『ぺったん、ぺったん』って掛け声があると盛り上がるんでよろしく!」
「「「はーい!」」」
「じゃあ、みんなが言いやすいように、エステラ、前へ」
「うん、言うと思ったよ!」
いつも賑やかで、彼がいると子供たちが生き生きとしています。本当に……不思議な方ですね。
それから、盛大な掛け声を上げて餅つきが始まりました。
最初はヤシロさんが搗いていたのですが、もち米を混ぜる方のタイミングが難しいらしく、ジネットが苦戦をしていました。そこで選手交代をし、ヤシロさんが混ぜ手を、そして搗き手はマグダさんです。
「…………一撃で仕留めるっ」
「加減しろよ!? 臼、これしかないんだからな!?」
「……善処する」
「んじゃ、せーのぉ!」
「「「ぺーったん! ぺーったん!」」」
今度はテンポよく餅が搗かれていきます。
これは見ていて楽しいですね。子供たちも大喜びです。
「ボクにもやらせて!」
「……では、選手交代」
「んじゃ、エステラ。行くぞ」
「いいよ! せーの!」
「「「………………」」」
「ちょっと、みんな! 掛け声は!?」
「バカ、……子供に気ぃ遣わせんなよ」
「言っていいから! 『ぺったんぺったん』言っていいから! むしろ言われない方が傷付くから!」
最近、ウチの子供たちはヤシロさんに似てきた気がします。
うふふ……面白い大人になってくれると嬉しいですね。
それから、子供たちも交えて何度も何度も餅米が搗かれ……やがてそれはお餅へと変わりました。
「ヤシロさん。あんこときな粉の準備が出来ました」
「じゃあ、餅を小さく切って味を付けてくれ」
「ヤシロさん」
「あぁ、ベルティーナさんも手伝って……」
「はい。とても美味しいです」
「もう食ってんのかよ!?」
一番乗りです。よく伸びます。美味しいです。
これは、夢中になる美味しさです。
これは、早目に言っておいた方がよさそうですね……
「おかわり」
「今、出来たとこだろうが!?」
私は、それからの数十分間、無心で食べ続けました。これは、年が明けても是非やりましょう! そうしましょう。
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