『本日、陽だまり亭は以下の場所で営業しております。御用の方は以下の場所までお越しください』
地図と共に、そんな文言が書かれた張り紙をドアに貼り、陽だまり亭出張営業(みんなで出かけるから飯食いたいヤツはそっちへ来いスタイル)を行うため、俺たちは河原へと向かった。大雨の日に続いて二度目だな、こういうのは。
ここ最近は本当に客が来ず、最後に来たのはムム婆さんだったかもしれない……あ、ウーマロがいたか。でもまぁ、あいつは客であって客じゃないからな。
昨日一昨日は本当に人が来なかった。
ジネットは「この時期はしょうがないですねぇ」なんて言っていたが……なんだ? 「暑いからお外行きたくな~い」なんて言ってんのか、この街の人間は。夏バテか? 米を食え米を!
で、そんな状況であることも手伝ってか、出張営業(という名のバカンスもどき)に対し、ジネットも比較的難色は示さなかった。むしろ乗り気だった。
「みんなで遊びに行けるのは嬉しいですね」
なんて、昨日の夜からわくわくしていたくらいだ。
こいつも、遊ぶ楽しさに目覚めてきたのか。
「……暑い」
マグダは暑さがとことん苦手なようで、ここ数日は使い物にならないレベルでグダっていた。
コーヒーゼリーを見せると飛んでくるのだが、それ以外は基本的に床にペッタリ張りついている始末だ。
「あたしの水着、これ、すごいですよ! お兄ちゃん、グッとくるですよ!」
ロレッタは川遊びが嬉しいらしく、ずっとわきゃわきゃしている。
ニュータウンがスラムと呼ばれていた頃から、こいつは弟妹たちと川で遊んでいたらしく、泳ぎは得意なのだとか。
ただ、水着を手に入れたのは今回が初めてなようで、早く人に見せたくて仕方ないようだ。
これまでどうしていたかというと……妹の証言によれば「おねーちゃん、すっぽんぽんー!」だったそうだ。……奔放な娘だなぁ。
マグダがグダっているため、今日は俺が荷車を引いている。
いろいろ入り用なのだ、今日は。昼飯とかも含めてな。
「お~い! こっちだこっち!」
河原に着くと、デリアが大きく手を振って出迎えてくれた。
デリアはすでに水着に着替えている。腕を振る度に健康的に揺れ動く膨らみ……夏、大好きっ!
河原には、簡単なほったて小屋と、大きなパラソルが設置されていた。……なぜに?
「ボクがウーマロに頼んで作ってもらったんだ。パラソルはヤシロにもらった日傘を参考にさせてもらったよ」
すでに来ていたエステラがそんな説明をしてくれる。
こいつはまだ水着に着替えていない。……大方恥ずかしくてジネットとかが来るのを待っていたのだろう。
「こちらの小屋で着替えやトイレが出来るようになっています」
ナタリアがそんな説明をしてくれる。ナタリアはもうすでに着替えている。
パレオから覗く生足が眩しい。生唾ごっくんものだ。
「で、そのウーマロたちは?」
「買い出しですわ」
小屋からイメルダが出てきた。
裾の広がったワンピースにツバの広い帽子を被っている。
……小屋から出てきたのに、なんで着替えてないんだよ…………あっ!
「トイレか?」
「ワタクシの顔を見る度にトイレトイレ言っていませんこと、ヤシロさん!?」
いや、だって。着替えとトイレのための小屋なんだろ?
「着替えをするのに不備が無いかを確認していたんですわ。……万が一にも覗きなどされては堪りませんからね」
そんな大それたことをする男がこの街にいるとは思えんが……デリアとかマグダとかエステラとかナタリアとかいるのに……
イメルダの話によれば、ウーマロとベッコ、それからオメロが使いっ走りとして召喚されているらしい。……気の毒なことだな。まぁ、美女の水着の拝観料だと思って精々額に汗して働くがいい。
「こっちの方はなかなか涼しいねぇ」
河原に建てられたパラソルの下で、すでに水着に着替えているノーマが優雅に寝そべっていた。
これまたダイナマイツッ!
サンオイルがあれば塗ってやりたい!
「ぁ……てんとうむしさ~ん! じねっとさ~ん!」
「みなさん、こんにちは」
ミリィとベルティーナが並んで歩いてくる。歩調のゆっくりなベルティーナと、歩幅の狭いミリィは同じ速度になるのか。新発見だ。
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