「ここは公園だけど……」
「ああ、この広場から魔力を感知した」
「子供たちも大勢遊んでいるわ! モンスターと遭遇したら大変よ!」
ななみが慌てて周囲を見回す。しかし、モンスターの姿は見当たらない。
「む……?」
「ねえ、本当にここで合っているの?」
「姉ちゃん、レイブンさまを疑うのか⁉」
「レイブンさまに間違いはねえだ!」
「レイブンさまの判断は絶対っす!」
ゴブとクーオとルトがななみに詰め寄る。
「わ、分かったから……顔を近づけないで、まだ慣れてないから……」
「この辺りで合っているはずなのじゃが……」
レイブンも周囲を見回す。ななみが頭をかく。
「頼むわよ、レイブン……」
「レイブンさまだろう!」
「なんと恐れ多い小娘だべ!」
「口の利き方がなってないっす!」
ゴブたちが再びななみに詰め寄る。
「くっ……う、うるさいわね!」
「うおっ⁉」
ななみがいきなり大声を上げたため、ゴブたちは怯む。
「大体アンタたちのつまみ食い代を!」
「!」
「立て替えてやったのは私よ!」
「‼」
「つまり、アンタたちは私に恩があるわけ!」
「⁉」
「分かった⁉」
「分かった、姉さん!」
「恩は返すべ!」
「ついて行くっす!」
「……分かればよろしい」
ななみが満足気に頷く。
「良いのか、それで……?」
レイブンが首を傾げる。
「そんなことより、モンスターたちは?」
「いや、あの辺だと思うのじゃが……」
レイブンが公園のある部分を指し示す。
「え? あの辺は遊具が集まっているところで……」
「む?」
「ははっ、ネバネバして面白え~」
「姿が変わるぞ、すげえ!」
「いや~そんなに喜んでもらえると変化のし甲斐があるラ~」
水色の泥状のものが形状を変化させながら、嬉しそうな声を上げる。
「あ、あいつは⁉」
「知っているの、ゴブちゃん⁉」
「もちろんだ、姉さん! オイラたちと同じく、レイブンさまの配下、スライム軍団の軍団長、『スラ』だ!」
「ス、スラ……」
「語尾にラ~を付けるので、ピンと来たぜ!」
「ピンとくるのそこなの⁉ はっ⁉」
「うおっすげえ、こいつ動くぞ!」
「おおっ! ロボットみてえ!」
「楽しんでもらえているのならなによりだ……」
土色の泥人形が子供たちを肩や頭に乗せながら、淡々と呟く。
「あ、あいつ⁉」
「知っているの、クーオちゃん⁉」
「ああ、オラたちと同じ、レイブンさまの配下、ゴーレム軍団の軍団長、『レム』だべ!」
「レ、レム……」
「『どちらかと言えば不器用な方ですから』というのが口癖だべ!」
「口癖長いわね! はっ⁉」
「きゃあ~カワイイ♡」
「ねえ、次はわたしに抱っこさせて~」
「ふむ……転移も意外と悪くないみゃあ……」
服を着た猫が女子高生たちにちやほやされている。
「あ、あいつはもしや⁉」
「知っているの、ルトちゃん⁉」
「オレたちと同じ、レイブンさまの配下、ケットシー軍団の軍団長、『トッケ』っす!」
「ト、トッケ……」
「気まぐれなところもある、プライドが高い猫の妖精っすが、あごの下を撫でられると弱いっす!」
「プライド無いわね!」
しばらく待っていると、子供たちや女子高生たちがそこから去っていき、スラとレムとトッケが残った。彼らは自分を見つめるレイブンに気付く。
「レ、レイブンさま⁉」
「魔王さま⁉」
「こ、こんなところで会うとは奇遇だみゃあ~」
「……幸せそうなら、それでいい……」
「ちょ、ちょっと待ってラ~!」
「お待ちを……!」
「やっぱり魔王に頼らせてくれみゃあ~」
立ち去ろうとするレイブンをスラたちが慌てて呼び止める。
「どうするのよ?」
「……見なかったことにしようかと……」
「酷くない⁉」
ななみがレイブンを非難する。レイブンが腕を組んで首を傾げる。
「そうは言ってもじゃな……」
「強力な6団長はどうしたの?」
「うっ⁉」
「まさかこの方たちが……?」
「ど、どうやらその様だな……」
「強力だとか恐怖の象徴だとか言っていたわね……」
「お、恐ろしいじゃろう⁉」
「女子供に親しまれていたけど……」
「むう……」
「はあ、まあいいわ。えっと……スラちゃんにレムちゃんにトッケちゃん、うちのクラブハウスに来なさいな」
「え!」
「な、なんと‼」
「マジか⁉」
「ええ、どうせ行く当てもないでしょう? うちなら雨露もしのげるわよ」
「あ、ありがたいラ~!」
「め、女神か……?」
「た、助かるみゃあ……」
「おい、ななみ、まさか……」
「とりあえずこの6団長でなんとかやってみるしかないんじゃないの?」
「ほ、本気か……?」
ななみの思いもよらない提案にレイブンは唖然とする。
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