どうしてそんなに優しくしてくれるの? って、小さい子供みたいに彼女は言ってた。
言われた瞬間から頭の中で理由を考えたけど、特に出てこなかった。
「それが心って奴なんだぜ」唐突に出てきたのはそんなかっこつけた言葉。
ベレスは止まらない涙を拭い切るまで、わたしの腕をギュッと離さなかった。
光に溢れた、魔法のような言葉で背中を押してくれたベレスが泣くもんだから、わたしだってビックリした。
もう遅い時間だったから、りんごを渡してわたしは町に帰った。
次の日、学校が少し楽しかった。
今日はいつもより騒がしい町を背に、りんごを持ってベレスに会いに入り口へ向かう。
昨日の様子だとまたすぐに泣きそうだったから、目が腫れているんだろうな。
どうしようもないほど、頭の中をベレスで一杯にして森へ向かおうとした矢先、町の入り口でぞろぞろと、怪しい風貌のレグメンティア人達が屯していた。
四,五人の男達、無視して通り過ぎようとした手前で、コイツらに呼び止められた。
「おい! そこのお前も村から出るな」
言っている意味はわからない。でもその時の威圧感は、わたしの身体を止めるのには十分だった。そして、その一言で、町の異常に気付いた。
コイツらのせいで、町の人たち全員、外へ出ていたんだ。
怖い、でも振り向く事はせず、ただ男達の話を聞いていた。そしてすぐに悪寒は走る。
「兄貴、ココらに居るはずっすよ、例の魔族の生き残りが」
「アイツの事だ、町のどっかに隠れてるか誰かに成りすましてるかのどちらかだろうな」
「ひひっ じゃあさっそく⋯⋯あの後ろのガキからやってやりますかい?」
やばい、わたしだ。でも──
「そうだな⋯⋯間違ってても適当に殺しとけ」
「りょーかーい!」
やってやれ、動け、守るんだ、わたしは──
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