ベレス達は港から少し逸れた海岸へ船を停めた後、すっかり夕日が沈み切った光のない道を歩き、セルビアの町へと辿り着いていました。
二人は魔法学校に忍び込み「アンジェ」と名前が彫られた箒を借りると、町の近くの木に登ってアンジェの眠る姿を見つめていました。
「どうしても奪う形にはなってしまいますからねぇ。ここは一つ、置き手紙でも置いていきましょうか」
「うん。船の中でもう書いておいた」
カロンはベレスに提案すると、分かっていたようにベレスは懐から一通の手紙と、作っていたひし形のペンダントを取り出しました。
「そのペンダントは⋯⋯」
「アンジェの為に、作っておいたんだ。アンジェも⋯⋯友達だから⋯⋯」
「ベレスさんも粋な事しますねぇ〜、ふふふ。では流石にお願いしますよ。ワタシは外で待っています」
「分かった」
言い終えるとカロンは箒を抱えて木から降り、残ったベレスは木の上からアンジェの部屋の窓へとひとっ飛びで乗り移りました。
(鍵⋯⋯いけるかな)
ベレスが鍵のかかった窓に光魔法を当てると、カチャンという小さい音とともに鍵が開けられました。
アンジェの部屋へ入れたベレスは眠るアンジェの顔を懐かしむように微笑みかけた後、側にあった机の上に手紙とペンダントを置きました。
「言ってくるね、私の大事な友達⋯⋯今から復讐だ」
ベレスは静かに窓から飛び出して、アンジェの部屋を後にしました。
すぐさまカロンと合流して、その日はアンジェと共に時間を過ごしたあの小さい森の中で朝を迎える事にしたのでした。
✳︎
アンジェへ。
箒が必要になったから借りた。
アンジェに酷い事をした魔族を殺しにいくから、それまで待ってて欲しい。
ペンダントは私からの気持ちだ。
真ん中の四角い入れ物には私の血が入ってる。
私たち魔族は相手に自分の血を送る事が最大の敬意を示す方法らしいから、私もそうするね。
なにかピンチになったら、それを飲んで光魔法を使えば良いと思う。多分角を削るよりも上手くいく。
色々ありがとう。私の大事な友達。
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