「ウソだ⋯⋯ウソだ⋯⋯」
魔族たちから次々と明かされる事実に、ベレスは身体を竦ませる事しか出来ませんでした。
「べ、ベレスぅ⋯⋯」
地に伏したまま身動きが取れないアンジェも、血に塗れた顔でベレスを見る事しか出来ません。
手を伸ばしベレスの姿を必死に掴もうとしますが、正体を明かした魔族たちの一人に踏みつけられてしまいました。
そして更に痛みに悶えるアンジェを笑い、蔑み始めます。
「さっきからベレスベレスってお前コイツの知り合いか。お前も不幸な奴だなあ、あのゴミと関わらなければ今頃向こうの住民と同じように怯えてるだけで済んだのによ。無為に命を散らすのは勿体ねえなあ〜」
アンジェは苦しみながらも嘲笑う魔族の方へ睨みかかり、向けられた言葉を打ち消すように反抗してみせました。
「おうおう、百年前に散々見た顔だ⋯⋯早く殺されたくて仕方ない時にする、レグメンティア人の愚かな行動の一つだ」
「⋯⋯っ!」
「安心しろ、お望み通り一番最初に殺してやるのはお前だ。お前を殺せば、あのゴミの心もポッキリ折れてくれそうだしな」
「アンジェ⋯⋯」
魔族は迷いなくアンジェの首を掴んでそのまま宙に浮かせると、もう片方の拳に震わせるほど力を込め始めました。
「じゃあさよならだな、せめてぶち撒けながら逝けや」
「やめろ⋯⋯やめてくれ⋯⋯」
ベレスは力の無い声で懇願しましたが、それでは魔族の手は止まりませんでした。
拳は真っ直ぐにアンジェの腹に向けて放たれました。
ですが次の瞬間その拳は空を裂くだけで、不発に終わったのです。
気付けばアンジェの姿も魔族の手から消えていたのです。
「な、なんだ⋯⋯何が起こったんだ」
ベレスを含めて全員が動揺しているとすぐ側からアンジェを抱えた女性の姿と共に、声が聞こえてきました。
「パソンレイズンが滅んでいたので目的もなくウロウロしていたのですが、ワタシの行動は結果的に正解だったようですねぇ。ね、考古学者さん?」
ベレスの前へ歩きながら、カロンは姿を見せました。アンジェを抱えたまま不敵に笑うカロンは、以前出会った時と違い、姿を布で覆っていませんでした。
「誰だテメェは!?」
「あらあ〜、歴史の通り野蛮なんですねぇ。ですが君たちは所詮下っ端の枝ですので、今頃姿を表しても興味ありません。ですので──」
カロンは魔族の言葉に怯む事なくアンジェをその場に優しく置きながら話すと、服の内に隠していた薬瓶を勢いよく展開しながら構えを取りました。
「ここで死になさい、邪魔だ」
カロンの一連の行動は見事に魔族の琴線に触れ、怒りを爆発させながらベレスを抑えていた一人がカロンに向かっていきました。
「部外者が何ほざいてんだ!? ああ!?そんなのかけたって死なねえぞクソがッッ!!」
「馬鹿が。これは──」
向かってくる魔族を前に悠々と、カロンは手に持った薬瓶の中身を一気に飲み干しました。
「こう使うのですよ」
「は!?」
なんと空になった薬瓶が地面に落ちるまでの間に、カロンに向かってきた魔族は真逆に吹き飛んでいました。
カロンの姿も既にそこには無く、吹き飛ばされた先の景色にもう立っていたのです。
カロンはまた違う薬瓶を飲み干すと、再び姿を消しました。
そしてまた次の瞬間、吹き飛ばされた魔族は悲鳴を上げたと同時に、その身体を爆散させ、辺りに血を撒き散らしました。
「仕掛けはとってもシンプルですよ、魔族の枝さん」
「なっ!?」
ベレスを抑えつけていたもう一人の魔族が急接近するカロンの姿に声を漏らした殆ど同時に、身体を吹き飛ばされ、また爆散しました。
それが済むとベレスの目の前で二回風が左右に揺れ、立ち上がるカロンの姿があったのです。
一瞬すぎる出来事に、アンジェを掴んでいた魔族は呆然と眺めるしかありません。
カロンは笑みを浮かべながら話し始めました。
「良い顔するようになりましたねぇ。単なる薬瓶による脚力と腕力の超強化ですよ。そこに魔法元素を組み込ませる事で、あのように閃光の如く俊敏さが実現出来たという事です」
「な、何モンなんだ、お前⋯⋯」
今までの態度とは打って変わってすっかり弱腰になってしまった魔族。
カロンはそんな魔族に歩み寄りながら言いました。
「現代の魔法使い⋯⋯といったところでしょうかね。ただしワタシは一番の例外ですが⋯⋯。ところでそれが遺言で良いのですか?」
「えっ──」
言葉を待たず、カロンは目の前の魔族へ急速接近し、魔族の顔を地面へ叩きつけました。
衝撃で土煙が大きく舞い上がり、カロンと顔の無い死体を包みました。
「ふぅ。終わりましたよ⋯⋯考古学者さん」
その一瞬の出来事にベレスは言葉を失い、ただただ起こった光景に、息を呑むしかありませんでした。
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