外へ出てみたい、その微かな望みを胸に、ベレスは自分を吊るす鎖に目一杯体重をかけて千切ろうとしていました。
しかし身体を揺らすだけでは千切れる気配は無く、ベレスの体力が消耗するだけです。
器用にも鉄格子に捕まる事は出来ても鎖の音を響かせ、あの醜い貴族の男を呼びつけるだけ。何をしても、ベレスは無力でした。
ですがその後の事、いきなり複数人のガシャガシャという足音が上の方から響き渡り、ベレスのいる地下まで近付いてくるのです。
貴族の男の足音では無いとベレスはすぐに気付きました。どんどん鉄の足音は近づいて、とうとう目の前までやってきます。
全身を鎧で包まれた騎士はベレスと目が合い、その足を即座に止めました。そして一人の騎士が何やら他の騎士と言葉を交わすと、単独で鉄格子を開け、ベレスを解放したのです。
どういう訳かベレスを脇に抱えると合流した他の騎士と共に貴族の屋敷を後にし、その足で城へと帰って行くのでした。
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