ドイツ北東部、ブランデンブルグ辺境伯領の中でもとりわけ内陸部に食い込んだ荒地が時ならぬ戦場になっていた。
秋の陽射しを跳ね返して矢が飛び交い騎士達が馬に拍車をかけ、数十分後には一方の側が勝どきを上げた。
おびただしい死体を足元に、生者達は手に手に得物を空へと突き上げる。
そのさなか、生者の一人であるはずのローテは自分が倒した騎士の傍らに膝をつき、髪と同じ金色の眉をしかめていた。
背後には、従卒のバッハがローテの愛馬と共に控えている。
たった今まで続いていた白兵戦のさなか、彼はその騎士を組伏せ短剣で喉を裂いた。名乗りを上げる暇もなかった。
ローテはゲルマン人としては人並みな体格で、まだ十分若い。相手の騎士の方が一回り大きかったものの、武勇は常に結果で語られる。
倒した騎士はいまわの際になにかを語ろうとしていた。
味方全体の勝敗もついたことだし、最期の言葉を聞き取るくらいの騎士道はローテもわきまえていた。
「……リザ」
大半が血の混じった泡に消えつつも、瀕死の騎士は辛うじてそれだけを絞り出した。
「なに?」
「……リザに……」
青い目をしかめてローテが聞き返したのも虚しく、騎士は事切れた。
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