少年は頭をかいた。
「肋骨のあたり、打撲してたから治療した。サラシ巻いてたみたいだけど、呼吸しづらそうだったから外した」
少女は耳まで真っ赤になった。ひょいと机を飛びおりる。
近づくと、かなり身長差があった。
「脱がしたの?」
「……あのなあ」
「っきゃああああああーー!!!」
少女は自分をかき抱いて悲鳴を上げた。
「……そっちかよ」
と、少年は毒づいた。
命の危険のせまった非常事態で、悠長なものだ。
それにしても――気のせいだろうか。頬を染めた顔が、誰かに似ているのは。
「変態!えっち!ばかっ!最低最低最低!」
少年は黙って少女が非難を浴びせかけるのを見つめていた。
―ー途方に暮れるとは、このことだった。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!