王直属の空軍小隊に属していた彼女は恐らく、国家機密を知る立場にあった。
国が崩れた今、情報があるかないとでは、新国家平定のスピードに大きな違いが出る。
ニュートリノは、彼女を使い勝手のいい駒の一つにするつもりだろう。
「拷問の訓練はひととおり受けたから、ご期待には沿えないと思うけど」
「真顔で恐ろしいこと言うな。……とにかく、ここはニュートリノで一番治安が悪い。賞金首や犯罪者が逃げ込む場所だ。ここに逃げ込めば警察は手を出さず、国外逃亡と見なされる。無法地帯ってことだよ。分かるか?」
噛みくだいて説明すると、少女は聡明そうな瞳をしばたたかせた。
「なぜ?」
「迷路みたいに入り組んでいて、凶暴な獣がいっぱいでるからだろ。あんた、運がよかったな。俺に拾われて」
「そうじゃなくて。どうしてあなたはそんな危険な場所に住んでいるの?あなたも犯罪者なの?」
少年は口の片端を持ち上げた。肯定も否定もせずに。
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