目的の王国

――まだ二人の言葉が届く、全ての人へ。
凪子
凪子

17

公開日時: 2021年10月1日(金) 20:00
文字数:607

「アクシオンがけたこともあっさり信じたし。屋敷に連れていくと言っても、泣いて抵抗したりしなかった。物分かりがよくって助かるよ」


淡白というか、妙に老成ろうせいしているというか。


「俺が嘘をついているとは思わないのか?」


問いかける鋭い瞳に、ステラは薄く微笑ほほえんだ。


「私は、今はもう愛国心を抱いていないから」


「へえ?軍人なのに?」


フェイトは揶揄やゆったが、ステラは軽く受け流した。


「この二年間、アクシオンは本当にひどいありさまだったのよ。逃げ出せたのは、十分なお金と他国に行くあてのある裕福な人だけ。それ以外の人はみんな、学校を出たら一定期間、軍に入らなくてはならなかった。その間に戦争が起これば、どこであろうと否応なしに連れて行かれる。家族と引き離されて、人を殺すために、人に殺されるために、戦場へ。

……新王が立って二年、流れていたのは血と無意味な時間と、戦争と内戦鎮圧のニュースだけ。増えたのは死人の数だけよ」


何の感慨かんがいもなく、ちぎって捨てるようにステラは言った。


「……私はこんなことをするために、軍に入ったんじゃない」


握りしめられた拳から血が滲み、ぽたぽたと草地に落ちて赤い染みをつくっていた。


手当てをした方がいいと思いながらも、フェイトは身じろぎもできなかった。


深刻な顔をしていたステラは、気を取り直したように明るく、


「だからこんな戦争、早く終わってほしかったの」


こぼれるような笑顔で。


フェイトはなぜだか、胸が詰まりそうだった。












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