「アクシオンが敗けたこともあっさり信じたし。屋敷に連れていくと言っても、泣いて抵抗したりしなかった。物分かりがよくって助かるよ」
淡白というか、妙に老成しているというか。
「俺が嘘をついているとは思わないのか?」
問いかける鋭い瞳に、ステラは薄く微笑んだ。
「私は、今はもう愛国心を抱いていないから」
「へえ?軍人なのに?」
フェイトは揶揄ったが、ステラは軽く受け流した。
「この二年間、アクシオンは本当にひどいありさまだったのよ。逃げ出せたのは、十分なお金と他国に行くあてのある裕福な人だけ。それ以外の人はみんな、学校を出たら一定期間、軍に入らなくてはならなかった。その間に戦争が起これば、どこであろうと否応なしに連れて行かれる。家族と引き離されて、人を殺すために、人に殺されるために、戦場へ。
……新王が立って二年、流れていたのは血と無意味な時間と、戦争と内戦鎮圧のニュースだけ。増えたのは死人の数だけよ」
何の感慨もなく、ちぎって捨てるようにステラは言った。
「……私はこんなことをするために、軍に入ったんじゃない」
握りしめられた拳から血が滲み、ぽたぽたと草地に落ちて赤い染みをつくっていた。
手当てをした方がいいと思いながらも、フェイトは身じろぎもできなかった。
深刻な顔をしていたステラは、気を取り直したように明るく、
「だからこんな戦争、早く終わってほしかったの」
こぼれるような笑顔で。
フェイトはなぜだか、胸が詰まりそうだった。
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