少女は金を要求しようと、小さな手のひらを差し出してくる。
少年は宥めるように手で空気を押さえつける仕草をした。
「まあ待てって。お前は誰だ?認識票がないみたいだけど、どこの部隊の所属だ」
「あなたが知る必要はありません」
さらりと言い返される。
「それが命の恩人に対する態度かな」
「あら。助けてと頼んだ覚えはありませんけど」
小鳥のように首を傾げられ、少年は呆れて両手を広げた。
「分かった分かった。ともかく俺の話を聞け。信じたくないとは思うが、お前の国はニュートリノ共和国に占領されたんだよ。お前が帰るのは自由だが、今のこのこ戻っても捕虜にされるだけだぞ」
衝撃のあまり卒倒するか、泣きわめいて錯乱するかもしれない。
少年は身構えたが、少女は見当違いの事を言い出した。
簡素な男物の洋服をつまんで、
「この服……」
呟きに似た言葉だった。
少女がもともと着ていた軍服ではない、と言いたいのだろうか。
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