そこで白羽の矢が立ったのが、後に【堕落王】の汚名を着せられる、アレクの異母弟マイケルである。
聡明で誠実なアレクと違い、マイケルは放蕩癖が激しく公務をサボり、口うるさい連中を黙らせるために国民議会を解散した。
そのくせ他国が攻めてくることを異様に恐れ、無意味な負け戦を繰り返し、国力と士気は著しく低下した。
国防費のための度重なる増税に耐えかねた国民は、なだれ込むようにニュートリノを目指した。
そこに、『理想の国』があると信じて。
――今日、アクシオン王国は最期の一日を迎えるだろう。
少年は沸かした湯に茶葉を入れながら思った。暖かい湯気が顔をくすぐる。
ニュートリノはアクシオンに攻め込む機会をずっと狙っていた。
豊富な資源を、肥沃な国土を、喉から手が出るほど欲しがっていたのだから。
ニュートリノだけではない。
アクシオンは他国が欲しがってやまない恵まれた場所であり、今までも侵攻の手は幾度も伸びた。
アクシオンが他国の蹂躙を免れてきたのは、王が決して侵略に屈せず、敵を『神に仇なす者』として打ち払ってきたからにすぎない。
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