目的の王国

――まだ二人の言葉が届く、全ての人へ。
凪子
凪子

3

公開日時: 2021年9月17日(金) 20:00
文字数:453

そこで白羽しらはの矢が立ったのが、後に【堕落王だらくおう】の汚名を着せられる、アレクの異母弟いぼていマイケルである。


聡明で誠実なアレクと違い、マイケルは放蕩癖ほうとうへきが激しく公務をサボり、口うるさい連中を黙らせるために国民議会を解散した。


そのくせ他国が攻めてくることを異様に恐れ、無意味な負け戦を繰り返し、国力と士気はいちじるしく低下した。


国防費こくぼうひのための度重たびかさなる増税ぞうぜいに耐えかねた国民は、なだれ込むようにニュートリノを目指した。


そこに、『理想の国』があると信じて。


――今日、アクシオン王国は最期さいごの一日を迎えるだろう。


少年は沸かした湯に茶葉を入れながら思った。暖かい湯気が顔をくすぐる。


ニュートリノはアクシオンに攻め込む機会をずっと狙っていた。


豊富な資源を、肥沃ひよくな国土を、喉から手が出るほど欲しがっていたのだから。


ニュートリノだけではない。


アクシオンは他国が欲しがってやまない恵まれた場所であり、今までも侵攻しんこうの手は幾度いくども伸びた。


アクシオンが他国の蹂躙じゅうりんまぬがれてきたのは、王が決して侵略に屈せず、敵を『神に仇なす者』として打ち払ってきたからにすぎない。

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