唯一『ニュートリノ』に足りなかったもの、それは資源だった。
機械を作るための鉄、糸を作るための蚕、工芸をするための火力である石炭、自動車の動力源である石油――それらは全て、隣国から高値で買い取っていた。
さて、その豊かだが資源の乏しい国と大河を挟んで存在する、広大な国土と資源を誇る大国があった。
王権神授説を唱え、絶対王政を敷くその国の名は、『アクシオン』。
長い歴史と伝統を誇り、一つの血統の者を君主としてきた。
ただ一人の王が絶大な権力を握るこの国では、王の善し悪しによって国政が大きく左右されてきた。
『ニュートリノ』も起源を遡れば『アクシオン』の君主制に不満を抱き、新しい国を建国した人々の集まりからなるという。
『アクシオン』は最近まで世継ぎ問題に荒れ、治世は乱れに乱れていた。
というのも、二年前に亡くなった賢王・アレクが世継ぎを残さなかったからである。
彼にはたくさんの異母兄弟がいたが、姉や妹は外国に嫁いでおり、年の離れた兄たちは既にこの世を去っていた。
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