目的の王国

――まだ二人の言葉が届く、全ての人へ。
凪子
凪子

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公開日時: 2021年9月16日(木) 20:27
文字数:427

唯一『ニュートリノ』に足りなかったもの、それは資源だった。


機械を作るための鉄、糸を作るためのかいこ、工芸をするための火力である石炭、自動車の動力源である石油――それらは全て、隣国から高値で買い取っていた。


さて、その豊かだが資源の乏しい国と大河たいがを挟んで存在する、広大な国土と資源を誇る大国があった。


王権神授説おうけんしんじゅせつを唱え、絶対王政を敷くその国の名は、『アクシオン』。


長い歴史と伝統を誇り、一つの血統の者を君主くんしゅとしてきた。


ただ一人の王が絶大な権力を握るこの国では、王のしによって国政が大きく左右されてきた。


『ニュートリノ』も起源をさかのぼれば『アクシオン』の君主制くんしゅせいに不満を抱き、新しい国を建国した人々の集まりからなるという。


『アクシオン』は最近まで世継ぎ問題に荒れ、治世ちせいは乱れに乱れていた。


というのも、二年前に亡くなった賢王けんおう・アレクが世継ぎを残さなかったからである。


彼にはたくさんの異母兄弟いぼきょうだいがいたが、姉や妹は外国に嫁いでおり、年の離れた兄たちは既にこの世を去っていた。

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