目的の王国

――まだ二人の言葉が届く、全ての人へ。
凪子
凪子

7

公開日時: 2021年9月21日(火) 20:00
文字数:338

思案しあんしながら歩いてきて、少年はふと足を止めた。


「……珍しい客人だな」


予測どおり、小屋のすぐそばに戦闘機は不時着ふじちゃくしていた。


木々にぶち当たったのか、機体は中央で無残にへし折れている。


乗り手は操縦桿そうじゅうかんを握り締めたまま、前方に頭を突っ伏していた。


漏れたガソリンの匂いが鼻をつく。


少年は、丸くカーブを描いて機尾きびは三つに分かれている、小さな一人乗りの機体に乗り込んだ。


操縦席についたときに手が触れて、乗り手のかぶっていた軍帽ぐんぼうが外れて落ちる。


長い金髪が肩をすべり落ち、少年は目を見開いた。


吐息とも嘆息たんそくともつかない息が漏れる。


おそるおそる眼球防護用がんきゅうぼうごようの大きなゴーグルを外して確信した。


眠っているようなあどけない顔。色白の頬に、桜色の唇。


―ー国王直属のエリート空軍兵は、自分と同じ年頃の少女だった。









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