目的の王国

――まだ二人の言葉が届く、全ての人へ。
凪子
凪子

Ⅱ【宰相家へ】

15

公開日時: 2021年9月29日(水) 20:00
文字数:328






樹海じゅかいを越えるのは簡単なことだった。フェイト一人なら。


「あのさ、役に立てとは言わないけど、せめて足手まといにならないでくれる?」


息を切らしてけものから逃げ切った後、フェイトは呆れたように言った。


額に汗が玉となって浮いているステラ向かって。


白兵戦はくへいせんはやったことないから」


「嘘つけ。人に飛び蹴りしといて」


「それはあの状況だったから。実践じっせんって難しいのね」


習ったが、実際の戦いを経験したことはないらしい。


余裕そうな顔に見えたが、彼女なりに混乱していたのだろうか。


言われてみれば、最低限の武器も携行けいこうしていない。


しかし、いくら空軍兵とはいえ、ナイフの一本も持っていないのは不自然だ。


白兵戦を経験していない兵士など聞いたことがない。


よほど特殊な状況下に置かれていたのだろうか。

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