樹海を越えるのは簡単なことだった。フェイト一人なら。
「あのさ、役に立てとは言わないけど、せめて足手まといにならないでくれる?」
息を切らして獣から逃げ切った後、フェイトは呆れたように言った。
額に汗が玉となって浮いているステラ向かって。
「白兵戦はやったことないから」
「嘘つけ。人に飛び蹴りしといて」
「それはあの状況だったから。実践って難しいのね」
習ったが、実際の戦いを経験したことはないらしい。
余裕そうな顔に見えたが、彼女なりに混乱していたのだろうか。
言われてみれば、最低限の武器も携行していない。
しかし、いくら空軍兵とはいえ、ナイフの一本も持っていないのは不自然だ。
白兵戦を経験していない兵士など聞いたことがない。
よほど特殊な状況下に置かれていたのだろうか。
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