フェイトが自室に入ると、テーブルの上に茶が用意してあった。
フェイトは口をつけようとして、顔をしかめた。
鼻腔から吸い込んだ匂いに舌がざらざらする。妙な違和感があった。
庭に出て用心深く茶を撒いたところ、カラスがそれをついばむのを見た。
そして、そのカラスはよたよたと蛇行し、血を吐いて死んだ。
凄惨な光景に、フェイトは戦慄した。
――毒。
この毒は敵国の敗残兵ステラではなく、フェイトを狙っている。
この屋敷の主の息子である、フェイトを。
「面白いじゃねえか」
かなりよくできた毒だ。無味無色で、ほんのわずかに甘い匂いがするくらいだ。
恐らく、カップに少量垂らしただけで致死量に達する。
今までニュートリノの軍に出回っていた、どのタイプとも違う。自家製と考えるのが妥当だった。
凄腕の暗殺者がこの屋敷に潜んでいる。
しかも、事を起こすとすれば、フェイトの父が不在で屋敷の警備が手薄になった今だけだろう。
焦ることはない。そのうち、犯人のほうから姿を現すに違いない。
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