目的の王国

――まだ二人の言葉が届く、全ての人へ。
凪子
凪子

19

公開日時: 2021年10月3日(日) 20:00
文字数:418






フェイトが自室に入ると、テーブルの上に茶が用意してあった。


フェイトは口をつけようとして、顔をしかめた。


鼻腔びこうから吸い込んだ匂いに舌がざらざらする。妙な違和感があった。


庭に出て用心深く茶を撒いたところ、カラスがそれをついばむのを見た。


そして、そのカラスはよたよたと蛇行だこうし、血を吐いて死んだ。


凄惨せいさんな光景に、フェイトは戦慄した。


――毒。


この毒は敵国の敗残兵はいざんへいステラではなく、フェイトを狙っている。


この屋敷の主の息子である、フェイトを。


「面白いじゃねえか」


かなりよくできた毒だ。無味無色で、ほんのわずかに甘い匂いがするくらいだ。


恐らく、カップに少量垂らしただけで致死量に達する。


今までニュートリノの軍に出回っていた、どのタイプとも違う。自家製と考えるのが妥当だった。


凄腕すごうでの暗殺者がこの屋敷に潜んでいる。


しかも、事を起こすとすれば、フェイトの父が不在で屋敷の警備が手薄になった今だけだろう。


焦ることはない。そのうち、犯人のほうから姿を現すに違いない。

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