目的の王国

――まだ二人の言葉が届く、全ての人へ。
凪子
凪子

8

公開日時: 2021年9月22日(水) 20:00
文字数:346

少年は自分の目を疑いつつも、ともかく少女を抱き起こす。


左腕の腕章に、双頭そうとうの龍の紋章が刻まれている。アクシオン王家を守護する最強の聖獣せいじゅうだ。


それすなわち、国王直属小隊・隊長の証。


「マジかよ」


冗談はやめてくれ、と少年はうめいた。


この少女は一体何者なのか。


青白い顔で気絶しているが、致命的な外傷はなさそうだ。


伏せられた睫毛が長く、体の線が細く、何より軽い。


おかげで少年は人一人抱えながらも、身軽に機体を飛び降りることができた。


女か。少年は思った。


女の敗残兵の末路は悲惨だ。死よりも先に、それに勝る屈辱が与えられる。他ならぬ敵の手によって――。


ゆえに、ニュートリノに女の兵士はいない。


アクシオンは女子供も、国のための戦いに平等に参加させようという考え方なのだろう。


お優しいことだ。少年は唇を噛み締めた。




























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