屋敷に戻ると、玄関にずらりと縦に並んだ召使たちに出迎えられた。
「おかえりなさいませ、フェイト様」
一斉に声をそろえて言うので、屋敷中に響き渡るような音量だった。
ステラは空気の振動を肌で感じて驚いたが、フェイトはいかにも慣れた様子でひらひら手を振った。
「ただいま。親父いる?」
「アクシオン陥落に伴いまして、条約締結のため王城へ赴かれました」
深々と頭を下げた、古株らしい白髪の執事が言った。
「あ、そう。茶、淹れてくれる」
「かしこまりました」
ステラは自分に向けられる好奇の目に気づいていないのか、物珍しそうに屋敷を見回している。
フェイトはステラについて一言も触れなかった。
ほっそりした二の腕を掴み、
「こっちだ」
表情は硬く、歩調が速い。とても自分の家でくつろいでいる様子には見えない。
ステラは慌ててフェイトの後を追った。
迷路のように入り組んだ廊下を案内され、通された部屋は上等な客室だった。
使われていた様子はないが、よく手入れされ、掃除されている。ピンクのベッドや壁紙は、明らかに女性向けのものだ。
「ここ、好きに使って。親父が帰ってきたら詳しいこと話すから。それと、お前の正体ばれるとまずいから気軽に誰とでも口聞くなよ。屋敷の中も歩き回らないほうがいい」
危険だからな、とフェイトは重々しく言った。
「金髪はニュートリノにはほとんどいない。うすうす勘づいている奴もいるだろうが……」
「そんなに簡単に殺されたりしないわ。ご心配なく」
ステラはベッドの柔らかさを確かめるために寝転がった。
「……緊張感のない奴だな」
呆れ顔でフェイトは扉を閉めた。
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