ベッドに寝かせたものの、少女はうなされているのか、うめき声を上げて細い腕を天井に突き出している。
かれこれ丸一日、こんな様子である。
少年は椅子に腰かけて様子を見ながらも、そのまましばらくまどろんでいた。
うとうとした意識が覚醒したのは、不穏な気配がしたからだった。
少年は飛び起き、半ば無意識に上体を逸らした。
間一髪で、少女の飛び蹴りが少年の額をきわどくかすめた。前髪が風圧にぱっと散る。直撃すれば首はへし折れていただろう。
少女はテーブルの上にひらりと着地し、両腕を構えてこちらを観察している。
少年の顔に皮肉っぽい苦笑が浮かんだ。
「それだけ動ければ十分だな」
少女はにっこりと微笑んだ。
「殺されたくなければ、ありったけの武器とお金を寄越してください」
歌うような甘い声に、柔らかい口調。
あまりの無邪気さに頭痛がして、少年は額を押さえた。
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