目的の王国

――まだ二人の言葉が届く、全ての人へ。
凪子
凪子

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公開日時: 2021年9月23日(木) 20:58
更新日時: 2021年9月24日(金) 12:02
文字数:363

ベッドに寝かせたものの、少女はうなされているのか、うめき声を上げて細い腕を天井に突き出している。


かれこれ丸一日、こんな様子である。


少年は椅子に腰かけて様子を見ながらも、そのまましばらくまどろんでいた。


うとうとした意識が覚醒かくせいしたのは、不穏な気配がしたからだった。


少年は飛び起き、半ば無意識に上体を逸らした。


間一髪で、少女の飛び蹴りが少年の額をきわどくかすめた。前髪が風圧にぱっと散る。直撃すれば首はへし折れていただろう。


少女はテーブルの上にひらりと着地し、両腕を構えてこちらを観察している。


少年の顔に皮肉っぽい苦笑が浮かんだ。


「それだけ動ければ十分だな」


少女はにっこりと微笑んだ。


「殺されたくなければ、ありったけの武器とお金を寄越してください」


歌うような甘い声に、柔らかい口調。


あまりの無邪気さに頭痛がして、少年は額を押さえた。

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