5times of Life

とある天才廃人ゲーマーの超鬼畜なライフ制異世界生活
井浦光斗
井浦光斗

第26話 命がけの勇者ごっこ 前編

公開日時: 2020年9月25日(金) 22:42
更新日時: 2020年9月30日(水) 07:35
文字数:3,433

 俺がこの世界に転生してから3年の月日が流れた……。

 本当にあっという間だ、毎日訓練やらダンジョン探索やらをしているうちに一日が終わり、それを何度も繰り返す。

 そのルーチンワークを黙々とこなしていたら、気づいたころには1年が過ぎ去っていたのだ。

 

 長い人生からしてみれば3年は短い期間、それでも様々な知識を身につけるには充分な時間だ。現にこの街や周辺地理については大分理解が深まったと思っている。

 

 まずこの街はダンジョン街『クロスシーズン』と言って、2つの5級ダンジョンと1つの3級ダンジョンに囲まれている。ダンジョンから得られる資源や素材を流通させることで数十年に渡って発展してきたらしい。

 ちなみに俺がよく潜っている『四季の空洞』は5級ダンジョン、言わば最も攻略が簡単で安全な最低ランクのダンジョンでここら一帯では冒険者の登竜門とも言われているらしい。しかし、噂によるとあそこはここ数年で出現したばかりの新しいダンジョンらしく、まだ未知の部分も多いそうだ。

 

 現に俺が裏ダンジョンらしきものを発見したのだから……間違いないだろう。依然として開拓中といったところか。

 俺がある程度攻略したら、あの裏ダンジョンの存在も衛兵辺りに伝えた方がいいだろうか。今のところ、俺には冒険者になるあてがないため秘密にしているが、実際に報告したら少なくとも報酬は貰えそうだな。それを資金にして一人旅に出る、なんてことも良いかもしれない。

 ……こういうのをたぬきの皮算用って言うんだけど。

 

 そして3つのダンジョンで生計を立てているこの街は、ディンスロ子爵領――通称、焔土竜ホグラ領の一部だそうだ。子爵とあるようにこの世界ではどうやら貴族制が採用されているらしい、異世界の設定としては良くある話だけどな。

 それで、俺たち一市民は年に数回ほど税を領主に収めて生活しているのだ。とは言えこの領土では、税はそこまで多くはないらしく、むしろ所持金が多いほど税を負担する所得税のようなシステムを採用していた。

 なんでも貧富の差を出来るだけ少なくさせたいとか、そういう理由らしい。政治学の分野はあまり詳しくないから、良くは分からないけど。

 

「ふ……っ」

 

 俺は屋上から庭に生えている木の枝へと飛び移り、そこに腰掛けてステータスキューブを取り出す。

 レベル上げが可能になったことでステータスの上昇は著しくなった。さらに言えば、魔物を倒す過程でステータスを成長させ、成長速度の%を下げられるので、最近は訓練要らずとなってきている。

 


【レベル】 8

【生命力】 196.14 (653.81)《 97%》

【マ ナ】 210.43 (701.43)《 87%》

【筋 力】 114.03 (380.11)《 99%》

【耐久力】 106.78 (355.92)《 96%》

【魔 力】 171.25 (570.82)《 85%》

【知 識】 126.03 (420.10)《101%》

【器 用】 144.35 (481.15)《 84%》

【感 覚】 121.83 (406.11)《 99%》

【敏捷性】 162.01 (540.03)《 79%》

【幸 運】 1.00  (  5.00)《100%》

【健 康】 緊張[精神効果耐性低下・弱]

【経験値】 55345/70434


《通常スキル一覧》

【魔法発動】  14.91 《 85%》

【罠解除】   1.00 《250%》

【射撃】    11.23 《 98%》

【銃芸】    7.62 《 99%》

【投擲】    10.45 《250%》

【体術】    10.70 《 79%》

【回避】    7.59 《 68%》

【※※※※※】 1.00


《魔法スキル一覧》

【魔弾生成】  14.75 《 86%》

【魔弾発射】  11.25 《 98%》

【抽出】    11.65 《109%》

【調合】    8.40 《110%》



 成長速度上昇を促すための食材や薬草を1年間探してきたが、それらの効果はある程度ステータスにも反映されていると言えるだろう。

 またスキルも1年前から5つほど増えた。銃の扱いや弾の装填を上手くする【銃芸】や、パルクールの練習をしているうちに覚えた【体術】、そして魔物の攻撃を避け続けたことで覚えた【回避】など訓練やレベル上げの過程で習得したものもある。

 

 そしてこのステータスからハッキリと分かるのは、スキルの成長はレベルが上がるにつれて著しく遅くなることだ。レベル1から10になるまでと、10から14になるまでに消費する成長速度はほぼ同じ、それくらいには遅くなっているのだ。

 

 このペースだとレベル30くらいで実質な頭打ちとなってしまうだろう……。

 手があるとすればスキルの成長速度を増やすこと。だがスキルは筋力や敏捷性などと違って食材を変えただけでは、増加する成長速度に変化はなかった。

 恐らくだが、これが3歳の大きな課題の1つとなるだろう。手帳のミッション欄にしっかりと記入して置かなければ……。

 

 

 閑話休題――残念ながら今はステータスについてゆっくり考察している余裕など、これっぽちもなかった。

 俺はこの瞬間を待っていた。恐怖と興奮の入り混じった複雑な感情を抱きつつ、目を細めて遠くを静かに見張る。

 

「来たか……」

 

 初めて裏ダンジョンへと足を踏み入れた時もこんな気持ちだったか。

 別にこれから魔物と戦おうとしているわけではない……しかし、あれは一種の魔物と思っても差し支えないよな。

 木の枝から飛び降り、両足を揃えて着地した俺は、鼓動を高鳴らせながらゆっくりと家の入口へと近づいた。

 

 その時、『クロスシーズン』名物の昼過ぎを知らせる時報の鐘が、心落ち着かせる曲を奏で始めた。

 人に安らぎを与えるために作られた曲が、まさか戦闘開始の合図になるとは、なんとも皮肉なものだな。

 

 

「あっ、ゼッター! あそびにきたよー」

 

 

 朱色の双眸を爛々と輝かせた金髪ポニーテールの幼女が駆け足で俺の家へと侵入してきた。

 彼女はソニファ、1歳半にして俺に木の剣で遊ぶことを強要してきたそれはとても恐ろしい幼馴染である。

 そして案の定、彼女の手には相変わらず・・・・・、俺らの身長の半分はありそうな本格派の木の剣が二本大切そうに握られている。

 

 本来であれば、バイル宅では幼いソニファを出来るだけ家の外へと出さないように努めていたらしい。けれど……どういうわけかもう手に負えなくなったらしく、3歳になったらひとりでの外出を許可する方針へと変えたのだ。

 そしてつい先日……俺は誕生日を迎え、ソニファも数日遅れて誕生日を迎えた。

 あとはもうおわかりの通りだ。ソニファはついに解き放たれてしまったのだ、バイル宅という弱っちい檻からな。

 

「やあ、ソニファ。久しぶり! 今日も元気そうだな」

「うん! ねぇねぇ、ゆうしゃごっこしよーよ」

 

 ……だよね、知ってました。

 勇者ごっこ、それが彼女のマイブームらしい。前やったのは2ヶ月前だったけど、やっぱり変わっていなかったか。

 さらにこれは恐らく……、いや間違いなくだけど俺はこの勇者ごっこに毎日付き合わされる羽目になるだろう。ソニファの封印が完全に解かれてしまったのだから、当然だよな。

 

 想像していた以上に、ソニファは俺に懐いてしまった……。近くに同じ年頃の子供が俺しかいないのだから、当然と言っちゃ当然かもしれないが、俺にとってそれは命の危機に値する。

 

 だってソニファの斬撃、とても痛いんですもの……。

 というか当たりどころが悪ければ、普通に生命力は減るし、もちろんライフも削れる。

 

 バイルさん、マーレさん……どうしてこんな子供を生み出しちゃったんですか?

 俺は転生者ゆえに成人並みの意思があるからまだしも、奴は遊び感覚で剣を振るって攻撃してくるのだ。生まれながらの戦闘民族って本当にいるんだなと思ったくらいだ。

 

「勇者ごっこか……。いいよ、それで遊ぼう。ここだと狭いし、森の近くに行く?」

「うん、そうしよー。ソニファね、ゼッタとバシバシするのすごくたのしみにしてたんだー」

「そ、そっか。僕も楽しみにしてたよ、うん」

 

 戦闘民族の屈託のない笑顔に冷や汗をにじませながら、俺はお母さんのミラにソニファと森へ遊びに行くと伝えた。

 さらに念には念を入れて、自作の生命力回復ポーションも何本か持っておく。幼馴染と遊んでいたら、幼馴染に殺されました……なんてことにならないようにな。

 ちなみに万が一ライフが残り1つになった場合は、ドクターストップ・・・・・・・・を掛けるつもりだ。ソニファの斬撃は全部避けるつもりだし、本当に万が一だけどな。

 

「……どうせだし、俺も気合い入れるか」

 

 こうでもしなければ俺もやってられない。

 そう思った俺はこの遊びを最大限楽しむ、ある秘策を胸に秘めて森へと向かったのだった。

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