5times of Life

とある天才廃人ゲーマーの超鬼畜なライフ制異世界生活
井浦光斗
井浦光斗

第5話 お食事タイム

公開日時: 2020年9月2日(水) 00:01
更新日時: 2020年9月27日(日) 15:17
文字数:2,987

 筋肉が痙攣するまでトレーニングをした俺はベッドで横になりながら、検証結果を頭の中でまとめる。


 ・筋トレをすることで筋力と耐久力の二つが上昇した。

 ・筋トレをやり過ぎると筋肉疲労によるデバフが付与された。

 ・じっくり考えたり、発見したりすると知識のステータスがわずかに上昇した。


 ちなみに筋肉疲労のデバフは、筋力のカッコ内に記述されたパーセンテージが50低下するものらしい。

 パーセントの意味を知らない今、それが俺にどんな悪影響を与えるかは分からない。

 けれどゲームステータスの性質上、値が高い方が良いのはたしかだろう。


 筋力は筋トレを通じて上昇する。

 耐久力は恐らく筋肉の悲鳴に耐える・・・ことで上昇する。

 知識は頭を使った作業をすることで上昇する。

 これを一般式に当てはめると――項目に対応した訓練をすることでステータスは上昇する、と言えるな。


 もしこれが正しいのなら、敏捷性も鍛えられるだろう。

 同様の理由で魔力やマナも、この世界における魔法の仕組みさえ分かってしまえば鍛えられるはずだ。


 一方で生命力や幸運に関しては、今のところ見当もつかない。

 狙って鍛えられるものなのか、はたまた通常とは別の方法が存在するのか不明だ。

 それこそRPGゲームのように魔物を倒す必要があるかもしれないな……。


(……考えてたら、眠くなってきたな)


 もともと昼寝の時間だったのだし、少しくらい休憩しても大丈夫だろう。

 なんたって、俺はまだ筋力も体力もないちっぽけな一歳児なのだから。


 ゆっくりと目を閉じると、数秒もしないうちに俺の意識は睡魔の波に流されていったのだった。






「……ッタ。ゼッタ、起きてー。お昼ごはんですよー」


 ミラに優しく抱きかかえられたところで俺は目を覚ます。

 筋トレでかなり疲れていたのか、どうやら昼まで眠っていたらしい。


 腕は相変わらず筋肉痛でヒリヒリしている、しかし痙攣して動かなくなるほどではなかった。

 それに筋肉痛がするということは筋肉が強くなっているまぎれもない証拠だ。


 1歳の子供が筋トレなんかをやるべきじゃないのは分かっている。

 だがそれでも、強くなっているという事実を噛みしめたい。それこそが俺にとって快感を得られる瞬間でもあるのだから。

 成長こそが生きがい……そういう人間なのだ、俺は。


「はい、ゼッター。お椅子に座りましょうねー」

「うん、ママ! お昼ごはん、なーにー?」

「うふふ。薬草と野菜のサラダと、パパが狩ってきてくれたブラウンディアのお肉よ」


 そう言いながらお母さんのミラは、食卓に美味しそうな食事を並べてくれた。

 この時間帯にお父さんの姿が見えないということは……また獲物を狩りにでも行ったのだろう。

 夏が終わりかけている今が、狩りをするに絶好な時期だからな。お父さんは俺たちを養うために精一杯働いてくれているんだ。


 それにしてもこのブラウンディアの肉は最高だ、噛み切りやすい肉質で高級牛肉を食べている気分になる。

 牛肉との違いを強いていうなら……ちょっと鉄の味がするくらいだろうか。

 鉄の味といっても実際そんな味がするわけではなく、なんとなく鉄分が多い味がするような気がするだけだ。


 だけど1歳ゆえに食べられる肉の量は少なく、与えられるものもまだ離乳食じみている。

 早く脂の乗った美味しい肉がガツガツと食べられるようになりたいものだ……。


「あっ、そうだー。ゼッタ、果物ポーション飲む?」

「うん!」


 肉をほおばりながらうなずくとミラは嬉しそうな表情で、ポーション瓶に入ったジュースを持ってきてくれた。

 薬師のミラがポーションの製法でつくった果物のジュース、これがまた格別なのだ。

 個人的には前世で飲んだどんなジュースよりも甘くて美味しいと思っている。

 まさに魔法の味・・・・といったところか。よくこんな物を作れるものだ。


(美味しい……ご飯の時間がこんなにも幸せに感じるなんてな)


 前世でも食事には気を使っていたとはいえ、ここまで美味しいと感じたことはなかった。

 もしかしたらミラの愛情がご飯に詰まっている、と言うべきなのかもしれない。

 両親の美味しい手料理を食べた前世の記憶なんて、もう残っていないからな……。


 ふと窓の向こう側で羽ばたく鳥をながめた。

 地球にもいたような小鳥。だけど当時の俺はそんな鳥の姿を見ることがないほどにゲーム漬けだった。


 毎日のように格ゲーやFPS、VRMMOの非公式大会に誘われ、大会に向けて練習する日々。

 そして疲れたらその合間にVRゲームやRPGゲームで何も考えずにレベル上げや素材回収を行ったり、鬼畜ゲームの攻略を進めたりする。


 名のしれたプロの人たちと共にしのぎを削りあうのはたしかに楽しかった。

 プロ相手だと負けることだって全然あるし、それをやり込めるために全力で頭を悩ませたりした。


 けれど……いつからだろうか。

 その行為すら俺にとってはまるでルーティンワークのように空虚なものへと変わり果てていった。

 楽しいけど、俺の心にぽっかりと開いた大きな穴が埋まることはない。


「満たされねぇ」


 外の景色をながめながら俺はポツリとその言葉をもらした。

 俺が探し求めているものは本当にここにあるのだろうか。

 それとも、そもそも俺は自分が探し求めているものを理解できていないのだろうか。


「どうしたの、ゼッタ? 今、なにか言った?」

「んー? 何も言ってないよ、ママー」

「あら本当? それじゃあ、ママの聞きまちがいね」


 危ない、危ない。ついつい本音をミラの目の前でぶちまけてしまうところだった。

 こんな1歳の子供に当時25歳の変人の記憶がきざまれているとバレたら、色々と厄介だからな。


 ……ともかく俺が今やるべきことは目下のミッションを遂行することだ。

 ご飯を食べ終わったらまたステータスについて考察を重ねていこうか。


「ごちそうさまでしたー! ママ、ごはん美味しかったよ!」


 できるだけ笑いながらミラに感謝の言葉を述べると彼女は「どういたしまして」と静かにほほえんだ。

 そして俺はミラに自分の部屋で遊ぶことを告げると、まだ少しおぼつかない歩きでリビングをあとにした。


(しっかりと昼寝をしてご飯も食べたのだから、そろそろ健康状態も普通に戻っているだろうな)


 もしあの筋肉疲労が一日中続くようなデバフなら、筋トレする時間を調整した方がよいだろう。

 いや、あえてデバフを発動させてなにが変化しているかを検証してもいいかもしれないな。


 俺は例によって床下に隠してあるステータスキューブを取り出すとさっそく回してみる。



【レベル】 1

【生命力】 5.01 (50.13)《101%》

【マ ナ】 3.00 (30.00)《104%》

【筋 力】 1.06 (10.56)《 93%》

【耐久力】 1.03 (10.34)《 96%》

【魔 力】 1.51 (15.08)《105%》

【知 識】 1.01 (10.06)《104%》

【器 用】 1.50 (15.00)《102%》

【感 覚】 1.50 (15.00)《103%》

【敏捷性】 1.00 (10.00)《102%》

【幸 運】 0.50 ( 5.00)《100%》

【健 康】 満腹・弱[経験値 +5%]

【経験値】    0/1000



(ちょっと待ってくださぁい!?)


 思わず素の声色でツッコミを入れそうになった俺は喉元から出そうになる言葉を抑える。

 しかし落ち着いていられるわけがなかった、俺が知らない間に値が大きく変動しているのだから。


(ど……どうしてこうなった?)


 わけが分からず、俺は思考停止に追い込まれてしまったのだった。

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どうも、井浦光斗です。最近流行ったネタだと思ってたらもう3年くらい前でした……。

時間の流れを早く感じるようになったんだなぁと思うこの頃です。

自分が小説を書き始めたのは5年前くらいですがあの時から野望は変わっていません。ということでまだブックマークしていないそこの君、5000兆ブックマークを達成するためにも協力してくれないかい?

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