【完結】慰霊の旅路~煩悩編~

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原爆ドーム(広島・広島市)

公開日時: 2022年4月24日(日) 00:16
文字数:10,776

豊田湖を後にした一同は、次の心霊スポットとして検証したい場所として侑斗から予め甲州と斧落にお願いをしていた原爆ドームへと車を走らせていた。


移動中の車内、助手席に座る吉岡が侑斗に「原爆ドームと言えば負の世界遺産の一つとしても知られているところですよね。今回どうしてここで心霊に纏わる噂を検証してみたいと思ったきっかけって何かあるんですか?」と訊ねると、侑斗は「まあ、負の歴史を抱えている場所ほど、大体は心霊スポットになるのは言うまでも無いんだけどね。ポーランドのアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所だって心霊写真が撮れる云々で世界遺産であると同時に心霊スポットとされるように、悲しい歴史があると分かっている場所ほど、まだまだこの世に未練を残す未成仏霊が多く存在しているってことだよ。よく噂される心霊写真を今回真偽を確かめるために写真を撮るのが目的などではなく、俺達は慰霊の旅路で慰霊を目的として全国行脚をしてきたのが目的の一つでもあるからここはやはり慰霊目的の心霊検証をいつかはしなければいけない所だなと思って一人だと心細いからそれで甲州さんと斧落さんに提案したんだ。」といって返事をすると、吉岡は「まあ確かにそうですね。慰霊の旅路として全国津々浦々の心霊スポットを巡る慰霊を目的とした心霊検証って言う割には慰霊の旅路って今はたまあに更新する程度の殆どが登録するユーザーさんによる心霊投稿をメインとした心霊スポット検索サイトで記載されてある内容もよくよく読めば都市伝説の類としか思えないような話しか掲載されていないように思うんですけど、それはどうお考えなんですか?」と突っ込まれるような質問をされた侑斗はギクッとなったのか数分間何も言い返すことが出来ず、ただ何かリアクションをしなければいけないと考えたときに出てきた言葉が「フランスのオラドゥール=シュル=グラヌのような悲しい過去を抱える心霊スポットと同じようなものだよ。」と答えるにとどまったのだった。


余りにも答えになっていない侑斗の反応を見た吉岡が腕を組みながら「いやいや。今迄管理人として都市伝説めいた内容であってもしっかりとそこは真偽を確かめることは必要なことだと思いますよ。でも、原爆ドームって心霊っていうにはあまりにも不謹慎だと思いませんか。それだと火災現場とか事故現場だったとか、それらすべて御霊が出てくると分かればすべて心霊ですか?御巣鷹山や慰霊の森も、それはしっかりと線引きをしないと生きている方もいらっしゃるかと思いますのでやはりここは供養を目的として、心霊スポットだから検証したいというのは二の次三の次にしたほうが絶対に良いと思うんですよ。」と思ったことを語り始めると、侑斗は「吉岡の言いたいことも分かる。でも今長生きされているからこそ当時のことを伝えることが出来たとしてもゆくゆくは語り手がいなくなってしまって、今後更に負の歴史について語り継いでゆく人間がいなくなってしまう事態になる。心霊スポットの一つとして数えられるのは不謹慎だという意見はごもっともだが、大事なのはこれから先も亡くなられた方々の追悼の気持ちを持って、永続的に何世代にもわたって供養をしなければいけないってことだよ。得に俺達のような戦争を知らぬ世代は特にね。だから今回明るい肝試しさんとコラボしてライブ配信をしながら心霊現象の真偽を追求するのと同時に戦争の悲惨さ、平和であることの尊さを伝える内容にしたい。それを見て、二度とこのような過ちを犯したりしないように、俺達のできることで後世の世代に対して学んでほしいと思うことを伝えていきたいんだ。」と熱く語った後に、「原爆ドームへと向かう前に先ず広島平和記念資料館へと行って、平和記念公園内を散策した後に原爆ドームを見て終わろうかなと思っている。余裕があれば爆心地と元安橋から眺める元安川を霊視検証を行い、ある程度の調査が出来たところでライブ配信を終了させて、松山へと向けて出発したいと俺は考えている。」と語ると、吉岡は頷きながら「まあ心霊であるってのは余計だと僕は感じますけどね。でもこの地に今もなお彷徨い続ける御霊達には強いメッセージ性を写真を見ているだけでも非常に強く感じられますからね。生きていたらまだまだやりたかったこと、色々とあったでしょう。亡くなられた方々の思いを伝えるのが僕達の仕事でもありますからね。」と話すと、侑斗は「広島に来たと言えば、この音楽が聴きたくなってきたな。かけてもいい?」と吉岡に何気なく聞き始めると、吉岡は「聞きたい音楽?いいですよ。」というと休憩を取るために途中で立ち寄ったサービスエリアで聞きたかった音楽を流すことにした。


侑斗が吉岡に「これなかなか気に入っていて毎日のように聞いて居るんだ!ZYKEのLeave Me Breathlessって曲なんだけど、メロディーの感じがよくってね。」と話し始めると、吉岡は「広島に来たからこそ聞きたいって聞けば誰しもが広島に縁のあるアーティストの楽曲だって思うじゃないですか。全然関係ないですね。」と失笑しながら話すと、侑斗は「ま、まあそうだな。」と言葉少なげに話すと、休憩を十分に取ったところで広島市内へと向け走らせること2時間30分程が経過した。


駐車場に車を停車させ、最初の目的地である広島平和記念資料館に到着したのが午後の14時を回っていた頃だった。早速祈りの泉に到着したと同時に明るい肝試しのライブ配信を開始することにした。


侑斗が吉岡が持つカメラを前にして今回の心霊リポート地の説明を行い始める。


「明るい肝試しの女子部、そして慰霊の旅路の合同企画で豊田湖から引き続きライブ配信でお届けします。そして、これから初めて見ますよ!という方々の皆さんこんにちは!ボランティアで霊能者の饗庭侑斗です!時間は14時を過ぎたところで僕達が今訪れているのは肝試しをする場所としてはあまり相応しくありませんが、原爆ドームに来ています。伺う前に先ず、こちらの広島平和記念資料館に足を運び改めて歴史を学んだところで平和記念公園を散策後、原爆ドームへと向かいたいと思います。」


予め覚えてきた原稿に綴られてあった内容を読み上げたところで、原爆ドームに纏わる心霊の話について侑斗が説明し始める。


「今回原爆ドームを明るい時間帯での肝試しと言ってしまえば大変不謹慎ですので、テーマとしてはもう慰霊ですね。原爆ドームがどんな場所なのか、歴史の教科書でも皆さん学ばれたことかと思いますので、ざっくりと紹介をさせて頂きます。原爆ドームは世界で初めて原子爆弾が投下された、当時の広島市内の被害の状況を今も物語ってくれる象徴的な存在として※負の世界遺産の一つとして認定されています。」


※補足説明 負の世界遺産とはどんなものがあるのか、以下の通りです。

ゴレ島(セネガル)

アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所(ポーランド)

ヴォルタ州、グレーター・アクラ州、セントラル州、ウェスタン州の城塞群(ガーナ)

キルワ・キシワニとソンゴ・ムナラの遺跡群(タンザニア)

カルタヘナの港、要塞、歴史的建造物群(コロンビア)

ポトシ市街(ボリビア)

トリニダとロス・インヘニオス渓谷(キューバ)

ソロヴェツキー諸島の文化的・歴史的建造物群(ロシア)

★原爆ドーム【広島平和記念碑】(日本)

ロベン島(南アフリカ共和国)

ザンジバル島のストーン・タウン(タンザニア)

バーミヤン渓谷の文化的景観と古代遺跡群(アフガニスタン)

クンタ・キンテ島と関連遺跡群(ガンビア)

モスタル旧市街の古い橋の地区(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)

アープラヴァシ・ガート(モーリシャス)

ル・モーンの文化的景観(モーリシャス)

ビキニ環礁の核実験場跡(マーシャル諸島)

オーストラリアの囚人遺跡群(オーストラリア)

Wikipedia様の負の世界遺産の情報を参考に補足説明として掲載させて頂きました。詳しく知りたい方はWikipedia様の情報を見て頂けたらと思います。


「負の世界遺産という事もあって、イメージとしては平和であることの尊さを強く訴えるシンボル的な存在として非常に有名です。しかしその一方で、心霊スポットとして知られるようにもなりました。心霊現象に纏わる話に入るまでに、原爆投下直後の広島市内における被害について触れたいと思います。原爆投下によりお亡くなりになられた方の数は投下された1945年8月6日からその年の12月の末にかけて、正確な人数までは把握していないようですが、大よそ14万人の方が犠牲になりました。放射線を近距離で大量に浴びてしまったことによる障害や、重度の火傷で回復できずと、死者数は増えてしまったためにいまもなお正確な犠牲者の数は分かっていません。そして原爆ドームから約160mの距離にある距離で原爆が投下されたのですが勢いは凄まじく、多くの方々が一瞬で命を落としたと言われています。投下されたのは朝の8時15分、普段通りの一日を送ろうとしていた矢先の出来事です。地獄絵図と化した広島は全身火傷で痛みを訴える方達で溢れかえり、少しでもこの火傷の痛みを和らげたい一心で多くの方々が川や井戸へ飛び込み、全身が焼け爛れた状態で治療を求め多くの彷徨っていたそうです。このような悲しい歴史がある場所なために、甲州さんや斧落さん、吉岡や僕含む霊感の強い方は心霊体験を経験されたという方の話もあるように、感受性の強い方や霊感の強い方は感情が共鳴してしまい引きずられてしまう危険性が高い場所の一つです。では、実際に報告として挙がっている心霊現象について触れていきましょう。一つは原爆ドームを訪れた後に体調を崩す、気分が悪くなるというのがあります。単なる体調不良の可能性もありますが、御霊の感情と共鳴したことにより一時的に体調が悪くなる、酷い方は暫くの間立ち上がることすらできなくなってしまった方もいらっしゃるようです。二つ目に突如涙が止まらなくなってしまうというものです。原爆で亡くなられた方の無念や、理由もなく自分たちの街が地獄絵図と化したことに対して受け入れられない方の恐怖に対し共鳴してしまったことにより起こりやすいとも言われる現象です。三つめは、上空に数え切れぬ方が歩いているのを目撃したという話です。この話は地元の方のみならず、修学旅行や旅行などで訪れた方達が体験したそうで、霊感の強い人は様々な御霊の形があちこちに見えると言われています。四つ目に心霊写真が撮れやすいというものです。原爆ドームを写真に収めようとしたところ、原爆ドームの窓や壁に御霊が写り込んでいたというものです。そのほかにもオーブが写り込んだり、写真を撮ったはずなのに消えていたなどの話もあります。五つ目に焼け苦しむ少女の霊を夢で見たというものもあります。これは原爆ドームに訪れた日の夜に見た夢の中で少女が焼け爛れた状態で苦しんでいる光景の内容だったそうで、あくまでも推測ですがホテルまで御霊を連れて帰ってきた可能性があるかもしれません。六つ目、最後は呻き声が聞こえてくるというものです。原爆ドームに訪れたときにどこからか呻き声が聞こえてきた体験談もあります。その場にいた人がそのような声を聞いてもいないにもかかわらず自分だけが御霊の声を聞いて居たというものです。はあ、長い原稿を読むのは疲れた。」


侑斗が読み上げたと同時に甲州が「長い説明を最後まで読んでくれてお疲れ様。説明とても分かり易くて有難かったよ。」と侑斗を労うと、斧落が「実はここに来るまでにわたしも甲州もあちこちに黒い人影のようなものが見えて、カメラには写っていない所にはなるんですけど、すぐさま吉岡さんに”人影が見える”と相談したところ、吉岡さんが”黒い人影ではないですね。多分火傷でしょうか。肌が黒く焼け爛れた方達が歩行者の中に紛れ込むようにして倒れこんだり、川の岸辺を覗き込むと火傷による痛みから逃れたいのか飛び込んだ末にお亡くなりになられた方達が折り重なるように倒れていますね。恐らくですが原爆でお亡くなりになられた方々が今もなお己の死を理解できずにこうして助けてほしいとサインを出しながら彷徨っているのかもしれません。中には投下されてあっという間に絶命された方もいらっしゃったはずです。いきなりの出来事に理解を示すことが出来ず、ただただ訳も分からぬまま自らの思いを訴えている方もいます。”と仰っていましたが、感受性の強い人や宙で歩く人を見たというのは恐らく吉岡さんの説明が正しいものならばここはそれだけ多くの方が突然の出来事に対して受け入れられない思いで彷徨っているのならば、やはりここにはまだまだ多くの未成仏霊が彷徨っているってことだよね。」と訊ねると、侑斗は「俺も見た。禍は齎さないが、ただ一つ言えるのはここで今もなお彷徨う御霊の多くは自らの死に対してあまりにも唐突過ぎるために理解が出来ず、必死になって生き延びようとしている。そのために、生き延びる手段の一つとして場所がどこであろうとも憑いてくる危険性のほうが極めて高い。ホテルの夢の話もしたが、恐らくだが少女が夢を通して訴えたいことを主張した可能性も捨てきれない。それだけ、この地に彷徨う御霊の多くは、この世に多くの未練を残している。」と解説すると、甲州は「え?場所がどこであっても憑いてくるってことは一体どういう事?」と首を傾げて質問すると侑斗は「地縛霊ならば、その地に縛られる霊と書くように、その地に対して強い思いがあって残っているケースが多い。例えば自殺の名所、事故の名所と言われるような場所には地縛霊が多い。仲間を増やそうとしていきなり車の前に出てきて事故を誘発してきたりとか、手招きをしておいでおいでと誘い込むのは地縛霊で、色々な御霊の種類があるんだけど、その中でリーダー格とされる地縛霊は生者のエネルギーを吸収して蓄えているため極めて負のパワーが強く、霊能者の俺らでも太刀打ちできないほどの御霊がいるのも事実だ。俺達に対しても禍を齎す危険性があるからね。地縛霊の説明はさておき、広島市内で彷徨う御霊達の殆どが未成仏の浮遊霊。浮遊霊だから持つ力は弱い、但しどこだろうが憑いてくる、そこが一番気を付けなければいけない所だろう。憑いていくことが生き延びるための手段の一つとも考える御霊も多く、本人が自覚をしていないだけで、実は多くの御霊達が後を追っかけて来ていたという可能性もあるからね。」と話すと、侑斗の説明を聞いて怯える甲州と斧落に対して「仮にもし憑いてきたとしても俺と吉岡で祓うことはできるから大丈夫。だから安心してほしい。」と語ると、甲州は「霊能者が二人もいたらね、安心だよね。」と斧落の顔を見ながら話すと斧落は「ちょっと怖く考えすぎたのかもしれないね。撮影許可がとれた広島平和記念資料館に早速行きましょうか。」と切り出し、一同は平和記念資料館のほうへと向かうことにした。


常設展示のコーナーに入るための料金200円をそれぞれが支払ったところで、展示ブースに展示されてある展示物を感慨深い思いで閲覧してゆく。


そして8月6日のヒロシマのコーナーへと移動して改めて展示されている内容を見て甲州が言葉を震わせながら「導入展示のコーナーもなかなか感慨深い思いにはなったけど、改めて残っている物がこのように綺麗に展示されてあるのを見て、言葉には言い尽くしがたい感情に襲われるね。」と話すと、斧落は「確かに。感情が高ぶって涙が理由もなく止まらなくなるというのも理解はできるね。わたしもはじめてここには来たけどきっと2回目、3回目とは絶対にならないと思う。正直辛すぎて、何とも言えない思いになるよね。」といって返事をすると、次の展示ブースの被爆者の遺品が展示されてあるコーナーへと移動すると、一同はただただ展示物をじっと眺めるだけで甲州、斧落は展示されてある遺品を眺めてはどう感想を伝えたらいいのか分からず侑斗もそして吉岡も言葉にどう言い表していいのかわからない感情に襲われていた。


被爆者のブースを後にし、ギャラリー、核兵器の危険性、広島の歩みと展示されてある内容を全て見終えたところで、斧落が侑斗と吉岡に「どうして展示ブースに入るとわたしたちは辛い感情を我慢しながらもリポートしたけどどうして霊能者として喋らなかったの?」と訊ねると、吉岡は「いや、話すことがあったとしても、ここは僕も饗庭さんもなんですけど、いるだけでもキツイと思う場所なんです。それだけ人々の思い、無念というのがじんじんと伝わってきて、これほど見ているだけでも苦しい場所はないです。」と答えると、侑斗は「何も言えない。辛すぎて言葉に出来ない。」といって説明すると「平和記念資料館での見学も終わったことだし、平和記念公園へと行って、最後に原爆ドーム、爆心地と見てライブ配信を終了させようか。」と切り出すと、平和記念公園がある方向へと向け移動することにした。


スマホの地図アプリを開いた状態で被爆樹木アオギリ、峠三吉詩碑、材木町跡碑の順でゆっくりとした歩調で書かれてある説明書きにも目を通しながら突き進むと、辿り着いた広島平和都市記念碑(原爆死没者慰霊碑)の前で一同は深々と頭を下げた後に両手を合わせ犠牲者の追悼を祈った。


平和の池から眺める平和の灯に侑斗が「平和であることの尊さ、そして二度とこのような過ちを犯してはいけない、学習をさせて頂きました。」と呟くような口調で語ると、斧落は「本当にそうだよね。最初に見たあの被爆樹木アオギリだったよね。本当によく戦火の中から生き延びたって言うのか、改めて厳しい環境になっても生き抜いた逞しさというのも感じられたし、ここには色々な方達の平和に対する思いがこもっている。犠牲になられた方々の心の傷を癒やすのはそう簡単なことではないと思うし何より原爆の恐ろしさ、戦い合うことに何のメリットも無いんだということを、今後生まれてくる若い世代の方達にも、強く強く訴えていきたいね。」と話し、吉岡が二人に「まだまだ平和記念公園に来たら見なければいけないところがありますよ。祈りの像、平和の泉、原爆の子の像、平和の石塚、平和乃観音像、被爆した墓石(慈仙寺跡の墓石)、原爆供養塔、平和の鐘、平和の時計塔、相生橋親柱(2代目)を見終えてから本題の原爆ドームへと向かいましょう。」と提案したところで、甲州が「そんなにもあるの!?(スマホの地図アプリを片手に)でも地図を見てみると距離もそんなにないからあっという間に終わりそうだね。」と語ると、早速吉岡が提案した順番通りに回っていくことにした。


相生橋親柱(2代目)を見終え、写真撮影も一通り問題なく終わったところで、相生橋へと渡り、原爆ドームの前へと到着した。まず中国・四国土木出張所職員殉職日を前に手を合わせ黙祷を捧げると、改めて原爆ドームを前に甲州が噂の真偽を確かめるために原爆ドームの窓や壁などを中心に遠隔レンズを用いて連写で写真撮影を行うと続けて斧落がスマートフォンで写真撮影を行うと異常が起きるかどうかも合わせて検証を行うことにした。一方、侑斗はというと吉岡に「横の川って元安川だったよな?そうだったよね?」と確認するように訊ねると、吉岡は「あっ、はい。そうですよ。原爆が落ちたときはこの川に多くの方が飛び込んだことでも知られています。」と答えると侑斗は「さっきから妙に寒気を感じないか?悪寒にも近いような、急にここにきて風邪でも引いてしまったのかと思ってしまったぐらいの寒気が襲ってきたんだけど吉岡はどうなんだよ?」と質問すると、吉岡は「いや。僕もさっきから風邪に近いような症状をじんじんと感じていますよ。他の観光客は何事もなく写真撮影に興じたりしていますけどね。」と語りながら、元安川の岸辺を恐る恐る覗いてみる。


吉岡が侑斗に「駄目だ!これは見てはいけないものを見てしまいました!」と声を上げて訴えると、侑斗は「一体何があったんだよ!?」と心配になり念のために確認を行うと侑斗もまた絶句してただただ呆然と立ち尽くしてしまったのだった。


二人のやり取りを心配になった甲州が「どうしたの?大丈夫なの?」と訊ねると、侑斗がハッとした表情で甲州に「駄目だ。元安川は見ないほうが良い。岸辺のほうを見ると無数の生々しい火傷の傷が複数ある、恐らく原爆投下時に水を求めて飛び込み命を落とされた方の無念の御霊達が、岸辺で折り重なるようにして、この歩道の辺りにも沢山のお亡くなりになられた方々が声を上げるにも必死の状態で”うう、ううう”と呻き声が聞こえてきた。明らかにこれは観光客じゃない。命の危機に瀕している方が必死になって出した声のようにも聞こえるから、元気のある人が出す声じゃない。写真に写してはまずい。どうして助けてくれないんだという御霊達の怒りを買ってしまうことになる。ここだけは撮影しないほうが良い。」と話すと、甲州も連写してとらえた写真を確認したところで侑斗と吉岡に「実はわたしも確認してほしかったことがあったんだ。元安川のほうは撮影してなくって、原爆ドームの建物の内部を中心に連写したりしていたんだけど、どの写真も叫ぶ女性の苦悶の表情だったり、他にもいろいろなSOSを求める御霊達がこれでもかとばかりに全ての写真が心霊になってしまって、動画で後日アップするにも閲覧注意とつけなければいけなくなってきた。」と話すと斧落も「わたしのスマホで撮影した画像も見てほしい。顔も映っているけど、カメラのフラッシュとは異なる赤いオーブがどの写真にも、不自然な”何か”が写り込んでしまって、ちょっとやばいどころでは済まなくなってきた。」と話し、侑斗と吉岡がそれぞれ撮影した写真を確認すると、吉岡がすぐその場で映し出された写真の御祓いを行ったところで、侑斗が「観光目的で写真撮影を行ったとしても、ここには唐突過ぎて自らの死に理解を示すことが出来ない御霊達が溢れかえっている。写真を撮ることが無我夢中でSOSのサインを出す御霊達の怒りを買ってしまったのならば、やはりここはおふざけ半分で来てはいけないという事だろう。写真は吉岡が御祓いしたから禍から逃れたと思って良いと思うが、浮遊霊である以上100%の保証は出来ない。憑いてくる危険性が高い。一先ずここを後にしよう。近くの動員学徒慰霊塔、被爆地蔵尊と見て最後に爆心地を見て今回のライブ配信を終了させよう。」と打診して一同は原爆ドームを後にして、動員学徒慰霊塔、被爆地蔵尊と訪れ念のためにも追悼の意を捧げるために手を合わせ追悼の意を捧げ終えると、最終目的地である爆心地に辿り着いたときに、益々場の空気がより張りつめて重苦しい空気を感じてしまった。


甲州が「この重苦しい、ここにいるだけでも凄く嫌な感じがする。これは一体?」と切り出すと、吉岡は「ここにも数多もの原爆投下で犠牲になられた御霊達が彷徨っているんです。それがより一層この場の雰囲気を重苦しくさせているんです。被爆して犠牲になった御霊達は手厚く供養され大事にされているのは間違いないかと思いますが、一度受けた心の傷というのはたとえ何十年、何百年と経てどそう簡単に癒えるものではありません。これからも永代的に供養は続けていくかと思いますが、お亡くなりになられた方々の完全除霊となると、こればかりは出来ないことですね。」と自分なりの解釈を語り終えると、侑斗が「ここに訪れたすべての方々にどうか追悼の気持ちを持って、世界遺産の一つとして認定されたからこそ観光気分になって浮かれてしまうのも理解はできるが、亡くなられた方々にとっては茶化しに来たんだろともとれるような行為は慎んだほうが良い。禍は齎さないことは間違いなく言える、ただ浮遊霊である以上場所がどこだろうが憑いてくる。御霊が持つ力が弱いので御祓いも容易には出来るが、このような場所はどんなところであれど有り得る話なので、両手を合わせ黙祷を捧げる気持ちを忘れないで欲しい。」と語り終えたところで、原爆ドームでのライブ配信を終了することにした。


次に向かう死入道峠へと向かうために、停めていた駐車場へと戻り始めると、斧落の携帯に油井から連絡がかかってきたので斧落が「油井君から電話がかかってきているから取るね!」と語りスピーカーにした状態で電話をとることにした。


「女子部のライブ配信見たよ!お憑かれ。霊視をしてみたらなかなかすごい映像が撮れていたと思うよ。ハハハ。実は男子の部も行くところは女子の部をメインにしようと考えているから少なめなんだけど、俺達も四国に行くことになった。俺達もまず愛媛の滝の宮公園へと行って、次に高知のスカイレストニュー室戸、徳島の大神子海岸、香川の林田港へ行く予定なんだよ。行く場所は少ないけど総距離だけでも凄いことになるから、メインは女子部にして男子部の俺達はあくまでもサブ的な役割でライブ配信を行う予定なんだ。因みにスカイレストニュー室戸は行く予定になかったんだけど、心霊廃墟の取り壊しを進めたいと考えている饗庭さんからの依頼を引き受けてね所有者から建物内に入るための許可も得ていることだし、肝試しの価値がある場所で肝試しが出来るんだから、むっちゃんとメイサちゃんが行くホテルニュー鳴門と喝破道場もすんごく気になるんだけどさ、俺ら男子部が行くスカイレストニュー室戸がメインとなる場所になるかなと思っている。お互い、良い心霊映像が撮れるように頑張ろうぜ。ではまた。」


油井の話を聞いた侑斗は「男子の部って何?」とポカンとした口調で話すと、斧落は侑斗に「ああ。わたしとむっちゃん以外の、杉沢村君、後藤君、畑君、秩父君、村田君、油井君の6人で明るい肝試しの男子の部というサブチャンネルをやっていてね、女子の部と同時進行で男子の部は別の場所で心霊検証を行おうってことになっていたの。まさかここでも饗庭さんが絡んでくるとは思ってもいなかったね。」と話すと、侑斗は「余談だけど、心霊廃墟を無くす基金ファンドの代表は兄貴じゃなくて兄貴の大親友で投資家の北郷和弥さんがやっている。兄貴は霊能者としてアドバイザーをするだけなんだけどね。」と言いつつも、「明日の死入道峠での明るい時間帯の肝試しが待っていることだから、松山へと向けてそろそろ移動しようぜ。広島土産は皆買ったか?」と質問してハーイ!と笑いながら一同が返事したところで、侑斗の車を先頭に死入道峠のある松山市へと向け出発することにした。

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