【完結】慰霊の旅路~煩悩編~

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スカイレストニュー室戸(高知・室戸市)

公開日時: 2022年5月22日(日) 20:17
文字数:10,537

室戸岬を後にした一同は次の目的地であるスカイレストニュー室戸へと向けて室戸スカイラインを走らせていた。


侑斗が運転する車の中で吉岡は侑斗に対して「いよいよ四国に入ってから初の心霊廃墟、今回は入るための許可を頂いていますけど、中はどうなっているんですかね。やはり劣化がかなり進んでいてもうそろそろ解体費用が安くなっていてもおかしくはない感じはするんですけどね~。」と笑いながら話すと、侑斗は「ここで無断で侵入した心霊系のYouTuberの動画見たか?迷い込んだ鳥の死骸は建物内を誰も管理する者がいないから野ざらしの状態、どこからかやってきた蝙蝠によって地下はお化けじゃなくもはや蝙蝠の巣窟、さらに鼠もと考えたら、お化けが出てくる!ギャア!怖いとかよりも野生の動物と遭遇してしまう危険性のほうが高いと思うけど、それに解体するよりももうこのまま自然と一体化させて共生させていくのが一番良いんじゃねって感じはするけど。でもとりあえず調査依頼として建物の危険性をと言われているからその辺りどうなっているか、中心に見て検証する必要がある。」と言って答えると、吉岡は「それで言うなら、ホテルニュー鳴門はどうなるんですかね。調査のしようがないと言ってもいいぐらいボロボロで朽ちているじゃないですか。足の踏み場ってあるんですか?」と訊ねると、侑斗は「ありゃあもう無いでしょ。あれだけ建物の状態として腐敗し朽ちていたらお化けが出る云々より物理的な危険性のほうが極めて高いよ。そんな状態であるにも関わらず、解体工事もなされず買い手がつかないって何かあるってことなんだろうけど、そこは行かないとわからないからね。」と語っているうちに二人が乗る車がスカイレストニュー室戸の前に到着すると、続けて明るい肝試しのメンバーが乗るレンタカーの軽の2台も到着したところで、改めて独創的な建物のビジュアルを見ただけで甲州が「凄い変わった建物。屋上に土管のようなものがあって、これだけ斬新なデザインだと取り壊さないで中だけリニューアルをして改装するってのもアリだよね。」と話すと、侑斗は「まあこれだけ奇抜なデザインだと、どうしても取り壊すべきか否かってことにもなるんだけど、景観の問題もあるからそこがね意見が真っ二つに分かれるところなんじゃないのかな。」と語る一方で「そもそもこの室戸スカイラインがここに辿り着くまでに数々の数え切れぬほどの、恐らく事故死されたんじゃないかと思う御霊とすれ違いながらやってきたけど、はっきり言ってそれだけでも異常。果たしてこの廃墟となったこの建物で何かあったかとなると、それは多分ないんじゃないかな。とりあえず立入禁止の柵を乗り越えて建物の前に辿り着いたところから肝試しライブ配信を始めようか。」と提案し、一同が立入禁止の柵を乗り越え建物の玄関の前に辿り着いたと同時にニコニコ動画とYouTubeでの肝試しライブ配信を配信することにした。時刻は16時を回っていた。


進行役の後藤と侑斗が玄関をバックにした状態で先ずは軽い自己紹介と挨拶をした後、スカイレストニュー室戸で行う肝試しの内容について説明した。


「明るい肝試し、慰霊の旅路をご覧の皆さん、こんにちは。進行役を務める後藤とそして慰霊の旅路からメイン霊能力者の饗庭さんが引き続き帯同して頂いていますので宜しくお願いします。(侑斗がカメラを前に会釈をする)。さて、饗庭さん。今回僕達が訪れているのは、高知県でも非常に有名な心霊廃墟としても知られておりますスカイレストニュー室戸ですね。」


後藤が話し終えると、続けて侑斗が話し始めた。


「皆さん、こんにちは。ボランティアで霊能者をしています饗庭です。今回我々は土地の管理者の許可を頂いて、スカイレストニュー室戸へと入って撮影を行っていますが、心霊系のYouTuberさんの動画などを見ていると無断で敷地内に入って撮影許可なども頂いていない状態であるにも関わらず撮影を行ったりしていますが、僕達が今回仮にスカイレストニュー室戸で心霊映像が撮れたとしても、皆さんは決して僕達の真似をして中に許可なく敷地内に踏み入れたりはしないで下さい。お化けが出る云々よりも建物の崩壊などの物理的な危険性のほうが極めて高いからです。こことは全く場所が違いますが、こういった心霊廃墟に無断に侵入をして足場のない場所で踏み外して転落死してしまう事故なども起きています。ライブ配信を見ている視聴者の皆様が同じ心霊現象を起こす仲間になりたくないのならば、僕達が今から撮影する映像を見るだけにとどめておいて下さい。さて、話変わりますが後藤さん。スカイレストニュー室戸に纏わる怖い話があれば教えてもらえませんかね。」


侑斗が後藤に対して振ったところで、後藤が「饗庭さん、怖い顔をしているよ。」と笑いながら指摘すると、侑斗は「えっ?怖い顔をしていたか?ハハハ。視聴者の皆さんが怖がらせるようなことを言うんじゃないよ。取り憑かれていないので安心して下さいね。」とにこやかに微笑んだ後、後藤がスカイレストニュー室戸に纏わる怪談話について語り始めた。


「高知県有数の心霊廃墟としても知られているスカイレストニュー室戸ですが、建物がある場所が高台に位置していることからも、屋上から眺める景色は絶景としても知られています。建物内には自動販売機が設置されたままの喫茶スペースや中身が残っている冷蔵庫など、廃墟好きにはたまらない内部になっているのも特徴の一つです。また外観から見て頂いたら分かるかと思いますが非常に変わった建物構造をしているために位置関係が把握しづらく何度足を運んでも新しい発見があるというのも特徴として挙げられる点ですが、探索中にいるはずのない人の気配がした、声が聞こえてきたなどの噂が広まったことから心霊スポットとして知られる場所になりました。」


後藤がある程度の説明をした後に侑斗が「声が聞こえた、気配がした。それだけで心霊スポットになるのならどこの廃墟も心霊スポットになると思うけど?」と突っ込み始めると、後藤が補足説明を行い始めた。


「因みに地元ではスカイレストニュー室戸を心霊聖地とも言われているそうで、やはり訪れた方の多くが幽霊を目撃していると言われ、まあここは元々は結婚式場を兼ねたレストランだったわけなんですけども、かつては人が集まる場所だけに幽霊も集まるのではという噂までもあることから霊場になっている可能性があるとの声もありますね。因みに某有名怪談家が心霊DVDのロケ地としても使われたこの建物ですが、某有名怪談家の見立てとしてはこのスカイレストニュー室戸は”悪霊の巣窟”になっているとも熱弁しています。そのため、それを見て信じた人の中には”悪霊の巣窟”であることを信じてやまない方も中にはいますね。ただ、スカイレストニュー室戸としては6年間の経営期間に過ぎなかったことからも、事件性があったかどうかも怪しいのでその辺りを今回は何が原因で今に至るのかを明るい肝試しと慰霊の旅路さんのタッグで真相を追求したいと思います。あと、スカイレストニュー室戸に関連しているかもしれませんが、かつてはオートバイによる走り屋達が好む峠道に面しているという事もあり、速度超過による死亡事故が多かったそうです。事故の目撃者によると事故を起こしたオートバイの後ろに白い女の姿が現れたみたいですね。何かしら、関係があるかもしれませんので、この話の可能性についても視野に調べます。」


侑斗が後藤の説明を聞き終えた後、後藤に対して「スカイレストニュー室戸の隣には巨大な鉄塔が建っていて、御霊達が好む磁場の乱れが関係している可能性も捨てきれないけどね。長々と玄関の前で話してないでさっさと建物内へと入って噂される心霊現象と果たして、そして建物内の危険性についても調べなければいけないからね。」と打診すると、後藤は「そうだね。とりあえず中へと入ってみて、噂される人の気配や声が聞こえてくるなどの調査をしてみようか。俺達はとりわけ危険とされる地下室から1階と屋上、俺達と今一緒に行動している吉岡さんと畑は心霊現象の話がある3階の展望レストランのフロアへ、メイサちゃんとむっちゃんで2階のフロアの調査をすることにしようか。単独だと、何かあってはそれを証明出来る人がいないからね。一応カメラを持った状態では潜入するけども、カメラやマイクでは拾えぬようなものならば立証できる何かが欲しいからね。」と言って打診した後、一同は後藤の意見に理解を示し、建物内へと入っていくことにした。


先を歩く後藤が「足元が本当に、悪いから皆気を付けながら歩いてね。」と気遣いながら、「メインとして行き来する階段はこの先にある二つの螺旋階段のほうではなく従業員が主に行き来していたであろう螺旋階段をメインとして移動したい。その螺旋階段がこのフロントの中から入らないと辿り着けないところにある。先ずはそこを目指して俺と饗庭さんの二人で地下、他の吉岡さんや畑やメイサちゃん、むっちゃんは上を目指してほしい。」と説明し、従業員用の怪談がある場所へと慎重な足取りで歩き進んでゆく。その様子を見た侑斗は「初めてきた割には随分と場所が分かっているみたいで、まさかと思うが念入りにここの中に入って調査してきたのか?」と訊ねると、後藤は「そんな馬鹿な。心霊系の動画などを見てある程度の位置情報がわかったから階段の場所も理解できるようになっただけ。」と答え、従業員用のスペースを歩き進んでいくにつれ、二人の前に螺旋階段が現れると、まず3階を調査することになった吉岡と畑が先に階段を登り始め、続いて2階を調査することになった甲州と斧落が登っていくのを見届けた侑斗と後藤は地下へと下りることにした。


後藤が侑斗に「映像で見る限りでは、かなり荒れ果てているというよりも、衛生的に劣悪な環境のほうが近いかもしれない。」と話すと、侑斗は「そうだろうな。こんなにも蛙の鳴き声が聞こえてくる廃墟ってのも珍しいと思うけどな。それだけこの建物が野ざらしにされているってことだよ。地下の蝙蝠が心配なところだよ。蝙蝠による糞とかあと鼠の糞、野生の動物が入り込んで棲家にしているからこそ心霊的な怖さよりもそっちのほうが、今は時間が16時過ぎているから、蝙蝠がまだ寝ているかもしれないな。もうちょっと遅めのほうが良かったかもしれない。」と話すと、地下室の入り口にまで辿り着くと、侑斗が後藤に「俺が先に見る。幽霊がいるとかそういう事じゃなく単純に蝙蝠がいるかいないかだよ。」と話し、持っていた懐中電灯を手に取り恐る恐る地下室の中を照らし始めると、「駄目だ。日没じゃないからまだ寝ているな。中へ入ると蝙蝠アタックを食らうことになる。それに臭いが、蝙蝠だけじゃないような気がするな。ここは心霊的なものってよりも、衛生的にきつすぎる。」と後ろの後藤に対して話しかけると、後藤も確認のために恐る恐る懐中電灯を照らしながら地下の部屋を覗き込むと「確かに蝙蝠がまだ寝ている。それに台風など自然災害の被害に遇ったのか、中はとても荒れ果てていて、あっ、何匹もの蝙蝠がこっちに向かって飛びかかってきている!」というと、侑斗は「やばい。静かにしておいてそっと蝙蝠が外へ出ていくのを見守るしかない。敵じゃないってことをアピールするしかないだろ。」といって二人そろってしゃがみ込むと、外へと出ていく蝙蝠を二人で見届けた後、侑斗が出ていったか否かを確認のために立ち上がると後藤に「もう蝙蝠はいない。ちょうどお目覚めの時間だったんだろう。蝙蝠がいないとわかれば中の調査が容易にできるな。」と語り、侑斗から先に地下の倉庫だった場所へと入っていく。


非常口と書かれた看板の下に無造作に置かれた日本酒の瓶のゴミを見て、後藤が「こういうゴミって普通廃業するにあたって廃棄するのが普通なはずなのに、それすらしていないってどういうことなのか?」と首を傾げると、侑斗が「それすら処分費用に充てることが出来ないほど経営状況が逼迫していたってことでしょ。とはいえ、見るところはかなり限られているな。この備蓄庫とも思える場所から、奥のフロアまで心霊的な要素、うん!?」と話すと、後藤も侑斗のリアクションを見て「今何か白いのが通り過ぎたよね。宴会場でお遍路さんの姿をした幽霊達が目撃されているんだけどまさかお遍路さんが地下で彷徨っているとでも?」と話しかけると、侑斗は「いや、今のはお遍路さんなんかじゃない。女性だ。髪の長い。入り口入って左側の壁に吸い込まれるようにして消えた。あれは一体・・・?」と首を傾げた後に、後藤が「もう一つ曰くがあって室戸岬が自殺の名所としても知られているじゃん。そのためにこのスカイレストニュー室戸にも室戸岬で自殺を図った方が水死体となった後に霊魂となって彷徨っている話もあるんだよ。」と話しかけると、侑斗は「いやその可能性は有り得ない。室戸岬からスカイレストニュー室戸へはかなり距離がある。それに自殺した後、霊魂となって彷徨うのは自ら命絶った岬の付近だろうし、こんな廃墟と化したレストランにわざわざ現れる理由が分からない。自殺する前にここに訪れたとしたらかなりピンポイントな話になる。だったら、この付近で事故死された方がたまたまここを通りすがりで通過しただけに過ぎない可能性もある。後藤さん、確か宴会場の話をしていたよな。地下のフロアは見れるところは見て確認したから1階へと上がって宴会場へと移動しようか。」と切り出すと、後藤は「そうだね。蝙蝠の糞のようなものも見受けられるし心霊的などうのこうのより衛生的に長居しては危険が生じる可能性のほうが極めて高いからな。」と語り二人は1階へと上がることにした。


一方、3階のフロアでの調査を行っていた吉岡と畑は足場の悪い中、足元を注意深く懐中電灯で照らしながら絶景が楽しめたであろうかつては大きな窓があったであろう場所の前に辿り着くと、すっと人影のようなものが通り過ぎていったのを二人が揃って立ち止まって確認。吉岡が畑に「今さっき、展望テラスのほうに女性の方がいましたよね?」と確認のために話しかけると、畑は「あ、さっき確かにすっと展望テラスのほうへと何かが動いたからちらっと見ると女性が居たね。髪の長い方だったね。」と話すと、畑は吉岡に対して「あの女性の正体って何だと思う?」と話すと、吉岡は「ここって事件とかそういう報告は無かったんですよね?」と畑に対して訊ねると、畑は「事件はないが、心霊的な現象に遭遇したという方が続出している場所としか答えようがない。」と答えると、吉岡は「事件も起きていないのに、女性は何のために僕達の前に現れたのか。電波塔があるから磁場の乱れから御霊が集まりやすいのとは違うような気がします。建物がどうのこうのってよりもこの周辺に因果関係があるのかもしれません。ひょっとすると室戸スカイラインで不運にも事故に遇われお亡くなりになられた方の御霊が現れた可能性も捨てきれませんね。」と切り出すと、それを聞いた畑は「それは何で?電波塔があるから磁場の乱れから吸い寄せられるようにしてこの廃墟に集結するのか?」と質問すると、吉岡は「影響は否定しません。ですが、磁場の乱れから生じていることが理由で現れたのだとしたら、女性のほかにも出てきてもおかしくないんですよね。」といって返事すると、畑は「確かに。でもそれならば他にも俺達の前に姿を現してもおかしくないのに、今のところ確認できたのが女性の幽霊だけってのもおかしい。とりあえず女性の幽霊を見た場所を写真でも撮っておこうか。気づいていないだけで何かがいるのかもしれないしね。」と言って写真だけは何枚か撮影をすることにした。


そして甲州と斧落がいる2階のフロアでも、足場がないはずの展望フロアに同じ女性の幽霊をカウンターの前にいた際に目撃していたのだった。


甲州が「メイサちゃん、今さっき髪の長い女性が通り過ぎていったよね?」と確認のために訊ねると、斧落が「うん。わたしも見た。廊下からテラスのほうへとスッと髪の長い女性が現れてスッと消えた。あの女性は一体何だったんだ?入るまでに後藤君が話していた事故死した女性の幽霊なのかな?」と不安げに反応すると、甲州が「その可能性は捨てきれないね。事故死された方が成仏できずに近くにあったこの建物にSOSを求めて現れたのかもしれないね。」と話した後、さらに女性の霊とは異なる呻き声のようなものが二人の背後で聞こえ始めたのだった。


”うううう、ううううう”


呻き声を聞いた瞬間に甲州は斧落を見ながら「何なの?今の?女性じゃないよね。声は野太かったし明らかに男性。でも男性の話ってしなかったよね?」と慌てた口調で話しかけると「わたしたちの背後から確かに聞こえてきた、あっでも怖くて後ろを振り返れないよ。何か、でも本当に近くで聞こえてきた。でも怖い、怖いって言っていたら仕事にならないから振り返るよ。ひょっとすると後藤君や畑君のチームの可能性もあるでしょ?」と言って恐る恐る振り返るもそこには誰もいなかった。


斧落が甲州に「誰もいない・・・。本当にすぐ近くで聞こえてきたのにあれは一体何だったんだ?」と話すと、甲州も恐る恐る背後を振り返り「まさかと思いたいけどこうして調査しているうちにわたしたちの目の前に移動しているってことはないよね?何かわたしたちだけで行動するのが段々不安になってきた。」と不安を口にした途端に追い打ちをかけるように、ハイヒールの歩くコツコツコツ・・・という音が近くから聞こえ、二人は思わず耳を塞ぎ悲鳴を上げてしまったのだった。


地下を離れて1階の宴会場を調べる侑斗と後藤は、改めて宴会場が今にも崩壊寸前の状態にあることを確認後、後藤が侑斗に「中に入る?」と笑いながら訊ねると、侑斗は「何言っているんだよ!天井が今にも崩落しかねないこの部屋にってか?しかも漏水が、屋上からの水が落盤した天井から染み出ているのか。何だかここだけ漏水しているってのもあってかひんやりしていて気持ちのいい場所じゃないね。」と話したとたんに背後から人の気配を感じ、さっと振り返ると誰もいなかった。


侑斗が後藤に「さっき俺の後ろをじっと見つめてくる女性がいた。」といって説明をすると、後藤は「え?饗庭さんの後ろって何も無い雑木林から顔を覗かせるなんてことは出来ないはずだよ!」といって反応すると、侑斗は「地下室から、いやこの建物全体に俺達の動きに対して警戒する何かが付き纏っているのかもしれない。自殺とかそういう類ではないのだろうけども、この建物があるからこそ居心地を感じる御霊がいるのかもしれない。だとしたら、俺達がここに来たことに対して不快感を示している可能性のほうが高い。宴会場はもはや御霊達が好む水場といっても過言ではない。そのほかにも、霊視を行うと多種多様の御霊達が俺達の行動を注意深く見ているのがわかった。」と話すと、それを聞いた後藤は「何それ?俺達は今幽霊に囲まれているってことなのか?」といって訊ねると、侑斗が「ここはもう幽霊レストランといっても良いだろう。御霊が集まりやすい環境条件が揃っているからね。しかし悪霊の巣窟とか、そういうレベルではない。霊視をしてみないと分からないほどの力が微弱であることからも、現れた女性も、俺が確認することが出来た御霊達も、恐らくは浮遊霊と見て間違いはないだろう。山で、かつ水場があって、磁場の乱れが生じやすい電波塔がある、つまり御霊が現れやすい絶好の環境でもあるんだ。」と解釈した後に「女性の霊は恐らくだが、現れるのはここだけじゃないと思う。俺の見立てが正しかったら、この付近で思いがけずに事故に遇われお亡くなりになられた女性の御霊の残留思念が彷徨い続けているのかもしれない。思いもよらぬ事故だったからこそ、死んだことを理解できず今も自分の存在に気付き助けてくれるかもしれないだろう人に対して声を上げたり可視化して姿を現すのかもしれない。」と話した後に「他のフロアが心配だ。甲州さんと斧落さんが心配だ。何かあったら手遅れだから、宴会場を後にして2階へと移動しよう。」と打診すると、後藤は侑斗の見立てに「饗庭さんの説明が真実ならば、他のフロアにも現れてもおかしくない。特にメイサちゃんとむっちゃんが心配だ。二人の様子を見に行こう。」と言った後に二人は2階へと上がる階段へと向かい上がっていく。


女性の幽霊、謎の呻き声、ハイヒールのコツコツコツと歩く音が聞こえた甲州と斧落はじっと見つめ合うようにカウンターの付近に体育座りをした状態で誰かが来るのを待ちわびていた。


斧落が甲州に「さっき、階段から足音が聞こえてきた!ああ!もう嫌だ!振り返ると誰もいなかったらどうしよう!!」と混乱したその瞬間に侑斗が二人の背後に近づき「大丈夫だ。幽霊じゃない。俺だよ、饗庭だよ。心配になって迎えに来た。」と安心させるように話しかけると、斧落が侑斗に対して「ああ!生きている人間が一番安心できる~!饗庭さん、もう少し早く来てほしかった。こっちめっちゃやばかった。女性の霊も見たし、男性の呻き声から、ハイヒールで歩く音までも聞こえた。振り返っても誰も誰もいなかった、本当に怖かった。」と震える声で訴えると、二人の傍まで近づいた後藤は「よく頑張ったね。とりあえず3階で調査している吉岡さんと畑にも声を掛けないといけないからそこまでついてこれるか?」と訊ねると、甲州と斧落は口を揃えて「わかった。」といってゆっくりとしたペースで立ち上がると、4人で3階へと登っていくと、心霊調査を行っていた吉岡と畑に侑斗が「大丈夫か?何かあったか?」と訊ねると、吉岡が「あっ、饗庭さん。こっちは髪の長い女性の霊が出た、その他は複数の御霊達が窓の外から覗き込む気配をじんじんと感じた、あと苦しそうな呻き声のようなものが聞こえてきましたね。撮影した写真にも、俺達が見た女性と思える御霊が写し出され、それ以外にも無数の白いオーブが写し出されたのも撮影できた。ここはもうやばいかもしれない。」といって答えると、侑斗は「最後に皆で屋上に行ってそこでスカイレストニュー室戸でしか見ることが出来ない絶景を見て肝試しライブ配信を終了させよう。これ以上の撮影は危険と見た。」と話すと、一同は侑斗の案に理解を示した後に、屋上へと繋がる螺旋階段を登って屋上までやってくると改めて懐中電灯を照らしながら辺りを見回すことにした。


そして室戸岬が一望できる場所にまでやってきた途端に侑斗が「今、また男性の苦しそうな呻き声が聞こえてきた。女性の御霊以外にも憑いて来ているな。」と話し、吉岡に対して「ええ。そうですね。今霊視した限りでも、僕達の動きに追随するように数多くの方が僕達のことを注意深く見ていますね。どうしますか?除霊しますか?」と話しかけると、侑斗は「除霊ではなく、供養してあげることで少しでも昇天されるように導いてあげるしかないだろう。」と語るとすぐさま供養のための御経を読み上げ、続いて吉岡も供養のための儀式に入ったところで徐々に現れ始めた御霊達がスッと消えていくのを明るい肝試しのメンバーもこの目で確認できたところで、侑斗が「現れた御霊達に対する供養は完了した。禍を齎す可能性は無いだろうが、今のうちにライブ配信も終了させて、建物を出ていこう。」と語ったと同時に、肝試しのライブ配信を終了させ、一同は入ってきた1階の玄関を目指して移動することにした。


螺旋階段をゆっくりとした歩調で下りながら、2階から眺めることが出来る、今となれば野生の蛙がゲロゲロと鳴く光景を見て改めて侑斗が「宴会場の漏水が激しかったのも、恐らくだが台風などによる被害から水が徐々に建物内にも浸水していった結果、腐敗がかなり進んでいったことに間違いはないだろう。それにこんなところ、安全かそうじゃないかと言われたらもう答えは決まっている。物理的な危険性が極めて高く、今すぐにでも取り壊せ。これに尽きるよ。兄貴にはそう言って北郷さんにもそのレポートを報告するよ。心霊が云々よりも物理的な危険性のほうが高い。あと衛生的にも宜しくないところが地下にはあった。これ以上立ち入らせないためにも潰す方向で考えたほうが良いな。」と呟くように話すと、吉岡は侑斗に対して「依頼者の北郷さんにはそう伝えたほうが良いかもしれませんね。ただ、ここは新たに商業用の施設を作るってよりも土地を市に譲渡して広場にするとかのほうが無難かもしれませんね。」と話すと、侑斗は「まあそうするしかないだろうけどね。最初からこの地で商売繁盛しようってのが無理だったんだろうからね。」と頷いた後に、一同は入ってきた玄関へと戻ってくると、車を駐車させておいたところにまで戻ってくると、後藤と畑が先に出発するのを見送ってから、侑斗と斧落が明くる日(2026年5月5日:火曜日)の徳島県で行う心霊スポットへと向けて移動することにした。


移動中の車内で侑斗が助手席に座る吉岡に対し、「ビジネスホテルは確か鳴門市内だったな~。次の徳島の第1弾で行う心霊スポットってどこだった?」と訊ねると、吉岡は「次もまた某有名怪談家が訪れたことでも知られているホテルニュー鳴門からですよ。ライブ配信は10時からですね。明るいから足場が危ないとかそういう危険はないと思いますよ。終われば次はお昼からの大坂峠ですからね。」とケロッとした口調で話すと、侑斗は思わず「スカイレストニュー室戸の心霊廃墟探索が終わって一安心と思っていたのに続けて心霊廃墟かよ!」と苦言を呈しながらも、吉岡が「饗庭さん、そもそもそういう日程だったの忘れてませんか?」と突っ込まれ、侑斗は思わずだんまりして「そういえばそうだったな・・・。」と項垂れるように語るのだった。

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