原爆ドームを後にして、明くる日の朝10時から行う死入道峠での明るい肝試しを行うため、18時過ぎに出発した一同は宿泊先のビジネスホテルがある今治市内へと向け車を走らせていた。
侑斗が運転する車の中で吉岡が「ところで、死入道峠って一体どんな経緯があって決まったんですか?」と侑斗に対して質問すると、侑斗は「死入道峠ってさ、名前の響きからしても良くない感じがするじゃん。それに松山の心霊スポットと言えばの代表格にもあげられるしね。姥捨て山だったとされる高縄山がなぜか心霊スポットじゃないのが不思議なところではあるけど、その不自然な点にも着目して今回は心霊検証を行いたいと俺のほうから提案した。」といって答えると、吉岡はスマホを片手にいじりながら「あくまでも書き込みの情報なんですけどね、地元の方曰く高縄山への姥捨てがあったのは事実で、姥捨てを行うまでに特殊な儀式を行ってから高縄山へと向かうことのできる死入道峠を通っていたので、その儀式があったとされる場所というのが今も松山市の町名として残っているみたいですからね。儀式という地名には何でも老人ホームがあるそうですよ。そう考えると気味の悪いところでもあり、今もなお面倒を見切れないと判断した子供により高齢の親を預ける施設になったのならば今も昔も変わらないってことですよね。それに何より殺害事件があったというのも妙に引っかかりますね。姥捨てがどうのこうのよりも、僕個人としてはこっちのほうが怖い感じが凄くしますね。」と話すと、侑斗は「殺人事件って俺も一応そのことについては調べてきたんだけど、出会い系サイトを通じて知り合った若い男女が夜景を見にドライブに行った際に車内で口論となりカッとなった男性が女性の首を絞めて殺害したっていう事件だったよね。分かっていることは殺害現場となった場所は高縄山の麓にある峠道になるんだけど、それが松山市の九川ってところでただそれだけだと今回行く死入道峠とは場所がかなり異なってくる。また遺棄された場所も近くの県道沿いとなってしまうと、高縄山があるから死入道峠ともリンクされてしまった可能性が高いが、俺は全く違う可能性のほうが高いんじゃないかなと思う。」と話すと、吉岡は「違うってことは全くの無関係であるにも関わらず付近でそのような事件があったから関連付けられたってことですよね?」と訊ねると侑斗は「恐らくな。そういった事件が付近で発生すれば、誰かひとりが女性の霊を見たようなという証言だけで事件の被害者の霊が出てくると関連付けをされやすいのは心霊スポットよくあるだね。」とゆっくりと談笑しているうちに、一同の乗る車は21時前に今治市内に入ると予約していたビジネスホテルにチェックインの手続きを済ませると、明くる日の事を考えて早々とお風呂に入り、夜の23時頃には就寝することにした。そして一夜が明けた。
朝の8時過ぎに約束場所としてあらかじめ指定しておいたロビーに一同が集合すると食堂へと向かい用意されてある朝食を食べながら軽いミーティングを行うと同時に姥捨て山に纏わる怖い話を侑斗から語り始めた。
「死入道峠へと向かうまでにまずは姥捨てについて説明をしなければいけない。姥捨てとは、食糧難に追い込まれた村人が老人となった親を捨てていたとされる場所だ。当時としてはそういった風習が無ければまともに食料を得ることすら困難な時代だった上に、親も自分の存在が原因で子供達に迷惑をかけているという自覚があるから中には志願して姥捨て山に向かった人もいたほどだ。そういう世の中だっただけに中には嫌々姥捨て山に連れていかれた人もいただろう、山の中で飢えに苦しみながら老人の方達は呻き声をあげ、その悲痛な叫びは村まで届き、中には必死になって這った状態になりながらも村へ戻ってきた方もいたそうだ。非情な世の中でなければと言ってしまえば簡潔に終わってしまうが、今でもそういった場所には捨てられた老人の無念の魂が成仏できず彷徨っているとされている。姥捨て山とされる場所は日本各地に存在している。青森の出来島海岸、山形のジャガラモガラ、東京の多摩湖、静岡のバンバ穴、そして今回行く死入道峠などがあげられるね。因みに姥捨て山とされるのは高縄山で、死入道峠は高縄山へと向かうための峠道だったためにこのような名前が付けられたそうだよ。」
侑斗の説明を聞いた甲州が頷きながら、「姥捨ての話は以前に聞いたことがあるしわたしたちの明るい肝試しでも実際に多摩湖へ行って肝試しを行ったりしたことがあるからよく覚えている。昼間の明るい時間帯で撮影は行ったんだけど、とても言葉には言い尽くしがたい程嫌な雰囲気があったのは覚えている。」と姥捨てに纏わる話を振り返ると、侑斗は「確かに、そういう雰囲気を感じやすい人にとっては感じやすい場所になるかもしれないね。実際に行われた場所には、果たして納得しながら子供達の迷惑になりたくないと思ってその地で命を落とされたのなら、無念はあるかもしれないが子供達のためなら致し方が無いと割り切って考えることが出来る。でも中にはそうじゃないパターンがあったのかもしれない。これ以上いては誰も面倒を見ることが出来ないと判断した結果、姥捨てをせざるを得なかった事情なども考えたら、姥捨て山で命絶つことそのものが本望ではないことは間違いない。たださっきも話したように、全ての親には子供達の迷惑にならぬように志願して山へと向かうことに同意を得たパターンもあるので、その当時の食料を得るためには致し方がないと割り切った考えで亡くなられたときは何も思い残すことなく昇天されるのか。検証をしなければいけないのはそこだと思うが、それはGoogleマップのストリートビューを見ても不自然な場所にモザイク処理が施されてある以外は、果たしてこれが本当に当時の捨てられたご高齢の方達の無念の思いが未成仏となって可視化されたのなら、俺はもっと他に何か別の理由の事情があるような気がしてならない。野生のイノシシと遭遇しやすいので気を付けてという声もあるが、果たしてあれほど絶命したイノシシが道端に転がっているのかとなるとそれはやはり違うだろうし、やはり”何かがあって今もなお訴えたい思いがあるから現れているに過ぎないと思うんだよね。」と話すと、斧落が「それぞれの地に未練があってもおかしくはないと思うし、子供達への食糧の事を考えたら自ら犠牲を払ってでもとなるのは親の責務だと考えつつも、果たして実際問題本当に納得した状態で山へと連れていかれたのかは全く異なると思う。食糧難の情勢を理解しつつも、自分の存在で子供のみならず孫の世代にも満足な食べ物を与えることが出来ないと考えたら、逆になんだろ。そう自分に言い聞かせながら山へと行かれたのだとしたら、山に捨てられる食料に植えながら旅立つよりも、もっと違う形で天国へと旅立ちたかった思いもあるのかもしれないね。」と答えると、侑斗は「そりゃそうでしょ。山で食料なくもがき苦しみながら絶命するよりも、病を患った末に精魂尽きて亡くなったほうが良いと考えた人が、この時代どれだけいただろうかと考えたら自ずと答えが分かってくる。子供のことを考えた末とはいえ、このやり方に対して納得が出来ないと考える人がいても俺は普通だと思うよ。」と話し終えたところで朝食を食べ終えた一同はホテルをチェックアウトして松山から松山から今治に入るための死入道峠を目指すことにした。
2026年5月3日(日)AM10:00
9時55分に今治から松山へと入る峠道の入り口の付近にある待避所でいったん停車をさせてから、車中で死入道峠でのライブ配信を開始することにした。斧落が持つカメラを前に、進行役として甲州が死入道峠に纏わる怪談話を説明を行った。
「慰霊の旅路、そして明るい肝試しの女子部をご覧の皆さん、おはようございます。今回リポートをさせて頂く甲州といいます。昨日は山口県の豊田湖からスタートをさせて頂いてから、広島県にある原爆ドームで改めて戦争の悲惨さを学習させていただいたところで、本日からいよいよ四国での明るい肝試しを行いたいと思います。今回わたしたちが車に乗りながらではあるんですけど、愛媛に来たら必ず立ち寄りたい有名な心霊スポット、松山市と今治市の境目にある死入道峠に来ています。10年以上前はこの峠の名称として使われていたそうですが、あまりにも名前に使うには宜しくないという事で現在は笹ヶ峠と名称を変えたのですが、それでもなお心霊に纏わる話が後を絶たない所とされています。2009年の1月には出会い系サイトを通じて出会った若い男女が夜景を見に行った帰りの車内で口論になった末に松山市九川の山中に止めたときに車中で男性が女性の首を手で絞殺し、遺体を県道沿いの斜面に遺棄したという事件があり、峠の頂上付近には殺された女性の幽霊が出るとも言われています。また峠に入っただけでも気が落ち込んでしまうような感覚に襲われ、周囲には動物霊や得体のしれない”何か”までも霊として棲みついているとされています。昼間でも妙に寒気を感じてしまいやすく、出来ることならばこの峠道を通過するのは回避したほうが良いとも言われている場所です。そこで今回は江戸時代の頃に世話が出来なくなった老人を捨てに来る場所の一つでもある高縄山m含む死入道峠全体を車で心霊ドライブをしながら検証したいと思います。因みに高縄山では毎年のように白骨した遺体が見つかることからも、姥捨て山だったという事実が証明されています。そこで我々は殺された女性の無念が今もなお彷徨っているのか、そして高縄山に行った際にはご高齢の方の御霊を目撃することが出来るのか、今回は饗庭さんとわたしの二人で高縄山の入り口から高縄山を、メイサちゃんと吉岡さんで死入道峠の肝試し検証を行いたいと思いますので最後まで見てた抱けたら嬉しいので、今回も宜しくお願いします。」
甲州の説明が終わると、それぞれの車に車載カメラをつけた状態で、県道178号の湯山高縄北条線から高縄山を目指す侑斗の車に甲州が乗り込み、県道17号線の北条玉川線(=死入道峠)での心霊ドライブを担当することになった斧落のレンタカーに吉岡が乗る形で、死入道峠での明るい時間帯の肝試しを開始した。
高縄山の入り口と書かれた掲示板を目印に入った侑斗の車は、入ったと同時に狭路ともいえる道を走らねばならないのだが、入っていった先の道幅の狭さに助手席に座る甲州が「道狭いですね。乗用車一台分ほどのスペースしかないですね。この状態じゃ離合なんて・・・」と言いかけたときに侑斗が「離合?出来るわけないじゃん!軽と軽だとしてもこの道幅じゃ絶対無理。こんなもん松山から今治、もしくは今治から松山から抜けることが出来ない一方通行の道にしないとこの道の狭さ、あまり考えずに前だけを見て走ろう。」というと、山道に不慣れなのか非常にゆったりとしたスピードで橋を渡っていく。
そんな侑斗を見た甲州が「山道育ちのわたしからするとこの道の狭さ、当たり前なんですけどね~。怖いんですか?だったら運転代わりますよ?」と指摘すると侑斗は苦笑いをしながら「あのさ、俺助手席に人を乗せた状態で運転しているじゃん。しかもこの道の狭さで、何とか通過できたのは良いけどこの先ずっと道が狭くなるうえにヘアピンカーブが続くじゃん。乗用車同士の離合も出来ないのにさ、どこでどうやって運転代われるんだよ。下手したら俺達の車のほうがぶつけられる危険性だって高いんだよ!?代わらなくてもいいから、一先ず俺はわざとゆったりとしたスピードで霊視をしやすい環境を整えながら後ろの吉岡と斧落さんの車にも配慮しながら運転はするから、任せておけとは言わないが無事であることを祈り続けてほしい。」というと、甲州はハハハと笑った後に「場所が広くなる待避場所でと思ったんだけど。まあいいや。一先ずわたしも窓を開け乍ら可能な限り写真撮影を行って異変が生じたら報告するね。」というと、侑斗の顔は益々真剣な表情となってゆく。
一方、死入道峠を走ることになった斧落が運転する車では斧落が「予め死入道峠のストリートビューを見たり等をしてレクチャーはしてきたから、侑斗さんの乗る車のようについていけば多分乗り越えられそうな気がする。」と語ると、吉岡は「本当にこれ以上運転が出来ないと感じたら言って下さいね。といって僕もまた山道走行は不慣れなもので人のことは言えないんですけどね。」と笑いながら言った瞬間に、窓を開けた状態でじっと眺めていた吉岡があることに気が付くとすぐさまカメラのシャッターを切って映し出された画像を確認すると「やはり。ガードレールの下に”何か”がいた。これは一体何だろう。」と呟くような口調で語り始めると、斧落は「何が撮れたって言うんですか?」と恐る恐る聞き始めると、吉岡は「ガードレールの下の崖側からの複数の方々の視線を強く感じて写真を撮ったら、足場がないはずの崖の下なのに人の顔のようなものが写し出されたんです。しかも一人や二人じゃない。気になったところをピンポイントで撮影すると、多い場所で5名程、少ないところであっても2名ほどの不審な顔が浮かび上がって出てきた。」と話すと、斧落は驚いた口調で「人の顔が写し出されたってどういうこと?高縄山での姥捨てで命落されたご高齢の方の無念の霊魂が写真に写ってしまったってこと?」と訊ねると、吉岡は「いや、これは違いますね。年代的に見てご高齢の方ではないですね。比較的若い世代の方達だと思いますので、これは姥捨てとは全く関係性がないと思いますね。女性のほかに、男性の方もちらほらと霊視をしないと分からないレベルですがちらほらといますね。」と話し、それを聞いた斧落は「若い世代ってことは、どういうことなのだろう?だって心霊スポット検索サイトの書き込みには野生のイノシシが出てくることがあってもって否定的な意見はあったけど、ここが姥捨てを使うために通った道だからとしかなかったじゃん。後は、殺人事件の被害者の女性の霊が山頂付近で出てくるとか、そういった情報ぐらいしか無かったのに、その他にもこの死入道峠には何かがあったってこと?」と切り出すと、吉岡は斧落に「あとで侑斗さんに電話をして聞きたいと思うが恐らく事故死者の可能性が高いと見て思いました。斧落さんだって車を運転していたら自ずと答えが分かるはずなんだけど、道は狭くヘアピンカーブが続いているということはこの状態で仮にもし前方から対向車から来てしまうとたちまち逃げ場がないために下がるしかないが、しかしこのヘアピンカーブでのUターンを余儀なくされたと考えると仮にもし一人でそうなった場合は恐怖のほか言いようがないと思いますよ。誰かしら後ろで誘導することがいない状況の下で後ろがカーブになっていて曲がりながら、この狭いカーブを切り抜けなければいけないのかとなると、難しい技量が求められますからね。まあそうなったときは離合しやすい立場のほうが優先的に対向車に対して進路を譲ってあげるしかないんだろうけど、そうだとしてもこの道幅でとなるとお互い怖いはずだし、地元の人が通るのを避けるというのは心霊的な要素ではなく道路の問題かと思いますね。これは慣れている人であったとしても、出来ることなら避けて通りたいところでしょうね。」と話し終えると、吉岡はさらに検証のために気になったところを写真を撮り始めた。
その一方で侑斗達が乗る車でも異変が生じていた。
侑斗がゆったりとした速度で県道178号線を前へ前へと突き進む中、侑斗が「甲州さん、車を一旦止めてもいい?」と質問すると、甲州は「えっ?どうしたの?運転代わって欲しいってこと?」と訊ねると、侑斗が「今目の前で、右側の法面から女性が呆然と立ち尽くしているのが見えたんだ。俺がおかしいと思ってちらっと見たらその女性の方はニヤッと笑ったんた。念のためにも俺が女がいた場所を指し示すからそこを写真撮って欲しい。”何か”がいた。」と話すと、甲州は「何かってひょっとして噂されている殺された被害女性の幽霊がってこと?だって死入道峠の山頂付近でその女性が目撃されているのに、どうしてここにいるのかさっぱりわからなくなってくるじゃない。」と話すと、侑斗は「殺された女性と死入道峠の直接的な関係はない。俺達が今まさにその殺された女性の殺害現場に来ているんだ。遺体だって付近の県道に遺棄したって言っていたじゃないか。つまり、ここ県道178号線で犯人が女性と口論になった末に絞殺し、遺体をこの付近で遺棄したと考えるのが自然な流れだろう。それに殺された女性以外にも、ガードレールが大きく湾曲していたりしている箇所などから察すると恐らくここは事故も多かった筈。ここに来るまでに複数の方々の視線を強く感じた。この地で命を落とされたのは姥捨ての対象となったご高齢の方ではなく若い方のほうが多数見受けられることから、恐らくは不運な形で事故に遇われお亡くなりになられた方かなと、幅員狭いとやたら注意書きの看板があることからも、ここがいかに道の狭さゆえに事故が起きていることを象徴しているようにしか見えない。斧落さんや吉岡がいる県道17号線(=死入道峠)も恐らく心霊情報としては上がっていなかっただけで、ひょっとすると俺達が目の当たりにしているのは事故死者の御霊達こそが心霊現象の真の正体なのかもしれない。」と語った後に甲州に「吉岡の携帯を鳴らしてほしい。あっちも何かしらの異変が起きている筈。」と話しかけると、甲州は「わかった。」と言って侑斗の携帯を借りる形で吉岡の携帯を鳴らすことにした。吉岡の携帯を鳴らしている間に侑斗がルームミラーを覗き込むと「後ろから車が来ている。出発して、邪魔にならないような場所、高縄山駐車場を目指して出発するか。」というと車のエンジンを再スタートして出発することにした。
一方、侑斗の携帯から着信が鳴った吉岡は「饗庭さんからの着信だ!いったいどうしたんですかね。一先ず取りますね。」と斧落を見ながら電話をとるとスピーカー状態にしてライブ配信中でも音声が聞きやすい状況で話し合うことにした。
「吉岡さん。甲州です。そちらの車に何かしらの異変はあったのか教えてほしい。」
甲州の呼びかけに対して吉岡が「異変と言いますかね、姥捨てとは全く関係のない御霊達ばかり遭遇するんですよね。噂ではご高齢の方の霊や女性の霊が出るとされていますけど、僕が確認できたのは女性の御霊ぐらいですね。後は若い男性とか、若い世代を中心に見るのは気のせいですかね。姥捨てで命落されたご高齢の方の御霊は思い残すことなく成仏されたというんですかね。」と話すと、侑斗は「その噂されるご高齢の方の御霊は姥捨てとは全く関係性がないかもしれない。御高齢の方はちらっとだが確認することは出来たが思い出してほしい。ここは山で、高縄山が高い山でもあることを考えたらつい最近旅立たれた方が高縄山から昇天されるために登っている途中を出くわした可能性だってある。」と大きな口調で語り始めると、吉岡は「これから旅立とうとする御霊を見た可能性も確かにありますが、今僕達がいる道路でも、饗庭さんのいる道路でも恐らく”道狭し 注意して進行せよ”という注意書きの看板があちらこちらにあるような気がするんですけど、これは野生のイノシシが出てくる云々よりも、幅員の狭さから生じる事故が多いから注意せよってことなんだと思います。つまり事故死者の御霊が成仏できずに今もなお彷徨っている可能性のほうが姥捨てされた方よりも極めて多くの未練を遺しているのかもしれません。饗庭さんはその可能性を考えたことがあるんですか?僕は心霊現象として可視化された御霊の大方は僕は事故死者の方達だと思います。答えが分かり切ったところで、僕達の車も今治市と松山市の市境の看板が見えてきましたので、引き続き肝試しを続行しますね。相変わらずですが入って来たときからずっと下から誰かにじっと見つめられているって感覚が凄いですね。恐らくこの状態だと高縄山が怖い云々よりも、この峠道のほうが怖いという事だと思いますよ。高縄山への調査はやめて、そのまま松山まで向かって河野別府公園の中にある駐車場で落ち合いましょう。」と打診すると、侑斗は「吉岡の言う通りかもしれないな。答えがボチボチわかってきたところで、今ちょうど目の前が分岐となる交差点にまでやってきたんだけど、右側に行けば高縄山なんだけど、松山へと向かう左側へと突き進んで引き続き峠道での心霊調査を行うことにするよ。何かちょっとした報告があればまた連絡してほしい。電話は甲州さんがとってくれるから。」と言って電話を甲州が切ると、一同は峠道での肝試しを続行することにした。
そして、待ち合わせ場所と指定した河野別府公園内にある駐車場に最初に斧落の車が到着すると、大よそ5分後に侑斗の車が到着したところで、公園内で集まって話が出来やすい場所へと向かい、それぞれの報告をすることにした。
お互いの車でそれぞれ撮影した画像を確認し合ってカメラの前でも分かりやすく心霊と判断した画像を侑斗と吉岡が解説したところでライブ配信を終了することにした。
配信を終えた後侑斗は吉岡に「次は三坂峠だったよな。行くまでに俺達が乗ってきた車を御祓いしなければいけないだろう。合流してすぐに俺の車も斧落さんが借りてきたレンタカーを霊視して見たんだけど、何名の方が憑いて来ているね。この状態で撮影の続行は間違いなく事故を起こしかねない要因にもなるから祓ってクリーンな状態で行わないといけない。これだけはライブ配信が終わってから言いたかった。もしこの道を通る方、まあこんな険道とも酷道ともいえるこの峠道を通る人なんて知れているだろうけどな。ただ霊が出ると分かれば肝試し目的で来る輩が増えると益々有頂天になってより速度を出したことによる事故が発生するリスクが高くなるかもしれないから辞めた。」と話すと、吉岡は「そうですね。あんまり大袈裟に車にも憑いてきたとは言わなかったほうが正解だったかもしれませんね。」と理解を示し、甲州と斧落がのんびりと公園でゆっくりと休憩をとる中、侑斗と吉岡の二人は駐車場まで戻ってきて乗ってきた車の御祓いを協力し合いながら行ったところで、死入道峠での明るい時間帯の肝試しを終えることになった。
吉岡が侑斗に「死入道峠でこれだけの霊が憑いてくるとは、三坂峠だとどんなことになるんでしょうかね。死入道峠でも大きく湾曲したガードレールが複数あっただけでも怖い場所なのにさらにってことですよね。」と話すと、侑斗は「三坂峠のほうが死入道峠より多いような気がする。それに峠道って、関東のほうだと走り屋とかローリング族(=峠道などのカーブでバイクの車体を倒して膝を擦りながら走行する暴走族の一種)の聖地とされていた場所が今となれば事故死した若者の御霊が出てくるという事で心霊スポットと化しているところもあるからな。速度を落とさなければいけないところであえて速度を競い合うことをしてそれが結果死亡事故にも繋がったのだから自業自得の一言に尽きるね。今のところ全国各地の峠道の心霊スポットで調べてみても頭文字(イニシャル)Dの影響もあってか関東だけがそう言った場所が心霊スポットとして紹介されがちだけど、調べてみたら他にもありそうな感じはするんだけどね。」と話すと、吉岡は「そうかもしれませんね。」と頷くのみだった。
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