【完結】慰霊の旅路~煩悩編~

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長久手古戦場公園(愛知・長久手市)

公開日時: 2022年7月31日(日) 18:07
文字数:9,002

2026年6月14日 日曜日 PM15時

一夜を過ごした場所を後にし、20時から行う長久手古戦場公園での肝試しライブ配信のために一同は長久手市を目指して出発することにした。


その道中で油井が車を運転する杉沢村に「そういえば、関ケ原で武将の幽霊っぽいのが写り込んでいてそれが禍を齎すのか否か饗庭兄弟のLINEに心霊画像送っていたじゃん。あれ侑斗さん、弟君のほうだけど返事が来てたよ。お兄さんのほうは忙しいのだろうか。」と話すと、杉沢村は「内容が気になるから読んでみて。」と聞き出すと油井は侑斗からのメッセージを読み上げた。


「関ケ原のライブ配信お疲れ様です。あいにく僕も兄もこっちで大変な事態になりまして今はまだ説明が出来ないのですが、いずれは明るい肝試しさんの肝試しライブ配信を行うには相応しい場所になるかと思いますが事件があってとてもとても心霊どころではなくなりました。関ケ原で撮影された写真、改めて確認をさせて頂きましたが恐らく関ケ原の戦いが行われたとき、合戦に参加し旅立たれた武将の一人が写り込んだと思います。この御霊様が禍を齎すか否かとなると、齎さないと思います。表情が怒っているようにも一瞬見えますが、これは戦が起きているときと同じ表情で終わってもなお自らのプライドをかけて勝つまで戦い続けるのでしょう。古戦場には我々の手では手に負えぬ成仏させるのが難しいと言えるほどの未成仏霊で溢れているのは、忠誠を誓い最後まで戦い抜く精神が昇天の阻害に繋がっている。」


油井が読み上げた内容に杉沢村が「忙しいのに返事をしてくれたのか。しかし、最近の佐賀の事件ってあったかな。しかも市役所の職員なのに、警察と一緒に駆り出されているってこと?謎が多いな。」と疑問に思ったことを話すと、やり取りを聞いて居た後藤が「侑斗さんは確か小城市の市役所職員だったし、お兄さんは県警だった筈。恐らくだけど、小城市内で何かが起きてそれが報道できない事情があるとか、今はない多久市内の呪われた幽霊屋敷を彷彿させるよ、呪術的な何かとかじゃない?」と話すと、それを聞いた油井は「ハハハ。仮にもしそれだとしたら良い心霊映像が撮れそうだな。あんまり呪術が行われた後の屋敷とかって行きたくないけど。」と話し、苦笑いをすると、甲州が「侑斗さんの事情は分かったこととして、今もなお古戦場には霊能者では手に負えぬ成仏させるのが難しい未成仏霊で溢れているということは、関ケ原でも西首塚や東首塚など戦って亡くなった武将の魂を鎮魂させるための神社があって今も大切に供養されているように、時代関係なく永代的に続けて行かないと昇天は難しいってことだよね。」と話すと、後藤は「そうだろうね。戦った武将の中には一瞬で狙われて命を落とした人もいるだろう、そういった人は己の死を理解するのに時間がかかるだろうし、戦が終わったと言っても理解を示すのは難しいだろう。」と話すと、一同が乗る車は愛知県へと入り目的地である長久手古戦場公園には夕方に到着すると、休憩を取るために近くのショッピングセンターに足を運んだ。


そこでライブ配信を行うまでに打ち合わせを行うことにした。


ショッピングモール内にあるレストランで遅めのランチを食べながら、油井が村田に「長久手古戦場公園の怪異譚、調べてきているよな?」と切り出すと、村田は「勿論調べているに決まっている。」と語ると、淡々とした口調で長久手古戦場公園に纏わる怪談について説明をし始めた。


「戦国時代に長久手の戦いが起きたとされる場所で、戦が起きたときに命を落とした武将達の霊が今もなお未成仏霊で彷徨っている話のほか、その戦った武将の霊の怨念が凄まじくって落武者の霊が出るという話もあるし、首のない武士の霊の目撃談もある、また近年では自殺者も多いために現代の格好をした霊の目撃談もあるという。心霊現象が多く寄せられている場所だけに愛知県内では人気の心霊スポットらしい。別サイトでは、霊障を受ける人もいるようでこの場所に合う人合わない人がいるみたいだね。いずれにしろ落武者の霊、首のない武者の霊、公園の敷地内で自殺を図った方の霊が出るという点では共通している。心霊スポットとしては珍しいほうじゃないかな。古代の人の霊も現代の人の霊も出るという、生きた時代が違えども昇天が出来ない理由があって死してもなお彷徨い続ける。不思議な心霊スポットだと思うよ。」


村田の話を聞いた後藤は「よく八甲田山でも田原坂でも実際に遭難されたり戦った兵士とは関係のない現代風の女性の霊が現れたりするとか、そういう話はあるけどもでも実際にそういう話は怪異譚の一つにしか過ぎないってのもあるしね。果たして自殺者の霊というのも出てくるかどうか、微妙なところじゃないかな?」と話すと、村田は「それはどうだろうね。亡くなった方の人数にもよるし、それにググってみても長久手古戦場公園で自殺を図った人がいるだけで終わっていてそれがいつの時代なのかが明確にされていないから噂話の可能性も捨てきれない。とりあえず今も戦い続けているであろう武将の霊達を映像で撮れるかどうか、それが肝試しライブ配信の際に証明できるかに徹しよう。」といって答えると、やり取りをじっと聞いて居た油井がスマホを片手に「心霊の話をするのは良いけど、俺達ってぶっちゃけた話長久手の戦いってどんなものなのかって仮にもし視聴者から質問されたらどう答えるんだよ。」と訊ねると、一同は黙り込み村田も「落武者の霊が出るってことは相当熾烈な戦いだったってこと、それぐらいしか言えないなあ。」と冷や汗をかきながら話すと、油井は「俺もざっくりとだけど一応調べてはみた。羽柴秀吉と徳川家康が天正12年(1584年)に長久手古戦場公園で激しい戦を繰り広げ、戦死者は大よそ4000人、特に森・池田軍の戦死者が多く大よそ2500人とも言われている。因みにこの公園以外にも刀や返り血を浴びて鎧を洗ったとされる血の池公園も心霊スポットとしてはあげられているようだが、具体的な心霊に纏わる噂などはない。つまり戦が繰り広げられた長久手古戦場公園こそが武者の霊と遭遇する可能性が高いと思われる。」と油井なりの見解を語ると、後藤は「念入りに調べてみる価値はあるね。今回はさすがに警察の職務質問もなさそうだしね。」と言うと、油井は「新旅足橋だけは特殊だったんだよ。多分ここは大丈夫だよ。それに自殺があったのかどうかもそれもまた単なる噂話の一つにしか過ぎない可能性もある。それも含めしっかりと時間をかけてジャッジしたいところだね。」と話すと、スマホの時計が19時30分になったところで一同はショッピングモールを後にして、目的地である長久手古戦場公園に向かうことにした。


駐車場は17時で立入が制限されていたため、仕方なく駐車が可能な場所に車を停車させてから徒歩で古戦場公園の入り口を目指して移動する。


腕時計をちらちらと見ながら歩く斧落は「時刻はまだ19時30分ぐらいだけども、何だろうこの公園の外観から見ても”出てきそう”だと感じさせる雰囲気は凄くある。余り皆が訪れていないような場所だからこそ、ひょっとすると映像にも残せる可能性はあるね。期待したいところだね。」と笑いながら話すと、斧落の意見を聞いた村田は「メイサちゃん、そんなに武者の霊が見たいのか。」と突っ込んだ後に「ここは恐らく出てくる。関ケ原とは違って甲冑姿の武者が動くカシャリカシャリといった謎の音や呻き声に近いような声などの報告はあげられていないが、いずれにしろ霊感の強い人にとっては近づくこともかなり厳しいという書き込みがあるように、戦死した武者たちの怨念が渦巻いていてもおかしくない。まあ俺もぶっちゃけた話歴史は、しかも戦国時代となると視聴者の皆に詳しく解説が出来るかとなると自信を持っていえる。それだけは出来ないとね。」と話すと、村田の話を聞いた甲州は「説明が出来ないのは皆同じだし、一先ずはネットの情報を参考に心霊の噂について徹底的に検証を行っていくスタンスのほうが望ましい。そんな気がする。歴史が云々の話をすると、わたしも長久手の戦いとはって今調べてみたけどさ、これは説明をしようと思うとなかなか難しいと思うよ。」と話した後にスマホで調べた長久手の戦いの画面を見せると村田は「そればかりは、調べたい方はどうぞ調べてくださいに限るね。それをライブ配信の時にきっちりと説明が出来るかとなると出来ない自信が大いにある。」と話すと斧落は「とりあえず公園内を散策してみて気になった箇所、心霊写真が撮れそうな場所での写真撮影など、今までわたしたちが行ってきた肝試し検証と同じことをしてライブ配信を終わらせよう。次に向かう中之院軍人墓地でのカメラの顔認証が働くか否かというのも明るい肝試しの活動の中で幽霊こそは出てこないがなぜかカメラの顔認証が機能するミステリーについても調べ甲斐のある場所と言えば場所だし、個人的には早く終わらせたいなあ。まあ、ある程度公園内を散策してみて怖いと感じた事などそれを視聴者の方々に伝えられたらいいんじゃないの?」と語り終えると、油井は斧落に「そんなに軍人墓地のカメラ認証が作動するミステリーのほうが気になるのか?まあそんなもんは答えが分かり切っていることだろうと思うけど、でも今は目先の長久手古戦場公園の心霊の怪異譚について検証することに専念しよう。」と優しい口調で説得すると、斧落は頷きながらも「まあ、そうだよね。心霊系のYouTuberがあまり訪れない場所だからこそ検証の価値もある。」と話しているうちに、古戦場公園と書かれた看板の入り口のところへと辿り着き階段を登った先にある古戦場公園と書かれた石碑の前で一同は、ニコニコ動画とツイキャスとYouTubeでのライブ中継を行うことにした。


進行役を務める油井が長久手古戦場公園に纏わる怪異譚について説明を行い始めた。


「明るい肝試しを御覧の皆さん、こんばんわ。明るい肝試し主宰の油井です。今回愛知県においてもかなりディープな心霊スポットで肝試し検証を行おうという事になりまして、長久手市内にあります長久手古戦場公園内にあります長久手古戦場跡でライブ配信を行っております。古戦場ということもあって、非常に歴史が古いです。まあ正直に言って僕自身戦国時代の歴史が解説できるほど得意かどうかと聞かれたらあまり専門的にお答えすることはできないんですけど(苦笑いをする)。大まかに伝わっている情報としては、1584年(天正12年)の3月から11月にかけて羽柴秀吉(1586年に豊臣賜姓)と織田信雄・徳川家康陣営の間で行われた小牧・長久手の戦いにおける戦地で今は公園として長久手市民の憩いの場として生まれ変わっています。しかしながら、かつて古戦場だったという血生臭い歴史があったからこそ落武者の霊が出る、首のない武士などの幽霊の目撃談が度々報告されています。また現代の格好をした幽霊の目撃情報も少なくないとされ、恐らくですがこの公園内で自らの命を絶った自殺者の霊ではないかという話もあります。戦国時代と現代の幽霊が交錯する極めて稀な心霊スポットだと思います。そこで今回我々として武者の霊が果たして本当に現れるのかどうかを確認するのは勿論のこと、公園内で自殺をした方の幽霊とも遭遇できるかどうか。ここはひとつ、長久手古戦場公園に纏わる心霊ミステリーを解き明かそうではないかという方向で今回の肝試し検証を行いたいと思います。最後までお付き合いをして頂けたら嬉しいです!宜しくお願いします!」


油井が笑顔で会釈をしてから隣で油井の話をじっくりと聞いて居た村田が「ここで流石に小牧・長久手の戦いを長々と話してしまうとホラーじゃなくて日本史の勉強になってしまうからね。ざっくりとだけども、織田信長が本能寺の変で倒れてから転嫁人の後継者が誰もいなくなり、さて次はだれが織田信長の跡を継ぐのかということで争いになったのがこの小牧・長久手の戦いなんですね。戦術面では戦闘に勝利した家康の勝ちではあるが、戦略的には秀吉の勝利だったという幕引きで終わっています。詳しく知りたいという方は分かりやすく解説しているWEB等もありますので、底をぜひ見てほしいなと思いますが、参考にした歴史のサイトにもあったのですがこの戦には作戦を見破った家康の奇策により多くの武士が亡くなったのは事実です。だからこそ現代になっても無念というものが拭いきれないものが大きすぎるものかと思いますね。」と分かりやすく解説をした後、油井が「まずは公園内をじっくりと散策してみて、出てきそうだと思ったところは心霊写真や映像が撮れるかもしれない。公衆トイレにも心霊に纏わる噂はないが検証の価値がある。」と切り出し、村田も「そうだなあ。2件目もあることだからね、怪しいと思ったところは重点的に調べよう。」といって返事をすると二人は石碑の横に隣接する階段を登ることにした。


先を歩く油井が「まず右手の雑木林を見て行こう。一通り見たところで北側の整備されてある方向へと向かって行こう。」と話すと、隣を歩く村田が「右手の駐車場のすぐ近くに勝入塚がある、まずはそこで検証を行ってから地図で言う南側の雑木林を散策して散策し終えたら北側の庄九郎塚へと行って見よう。」と切り出すと油井は「勝入塚と庄九郎塚って歴史を知らなかったらきっと多分分からないっていう事だろうし簡単に説明してあげたら?」と話すと、村田は階段を登り切り、他のメンバーが登り切っても邪魔にならないところでいったん立ち止まると説明を行った。


※勝入塚・・・『しょうにゅうづか』と読みます


「勝入塚は秀吉方の武将だった池田恒興が戦死した地であることを示す塚で庄九郎塚は池田元助こと池田恒興の長男で庄九郎塚は元助が戦死した場所として伝わっているみたい。因みに庄九郎は幼名みたいだね。」


村田の話を聞いた油井は「つまりここには父と息子の戦死した場所を示す塚があるっていうことだな。」と話すと、村田は「まあそういうことだね。」と話した後に「ただ戦死した場所を知らせるいわば標のようなところだから、果たして今もこの付近で武者の霊が彷徨っているかどうかについては微妙なところかもしれないね。」と語ると、油井は「いや、俺は出てくると思う。関ケ原でも俺達はこの目で武将達が霊になっても戦い続ける姿を見て、これがいわゆるファイティングスピリットという死してもなお戦いを続けるその精神に、戦が終わっても心の中での戦はまだまだ続いているという事を何より証明していることに気付かされた。ここも出てくるに違いない。俺達は駐車場に車を停めてきたわけではないが、あるグループが肝試しに訪れ、グループの中でも一番霊感の強い人が駐車場から公園へと向かおうとした際に馬に跨った姿の武将の霊を見たという話がある。実際に訪れたわけではないが近くのショッピングモールで買い物に訪れただけなのに気分を悪くしたというのもあったり、果たしてそれが武将の霊達による霊障なのかはたまた自らの命をこの地で絶った方達によるものなのかは雑木林を散策してみたら答えが自ずと分かってくるはずだ。」と言い切ると村田は「確かにね、他の心霊系YouTuberさんの動画ではスピリットボックスを行ったところ反応を示した動画もあったりして出てくることには間違いない。ただそれが戦国時代なのか現代なのかを見極める必要がある。」と言って説明をした後、一同が最初に向かったのは池田恒興が戦死したとされる勝入塚で検証を行うことにした。


”勝入塚”と書かれたのぼりを見て、油井が「まずこんな夜中に訪問して後々怒りを買われたら嫌だからまずは御挨拶をしてから、撮影を許してもらえないかのお願いをしてから撮影に入ろう。」と話すと、一同は勝入塚に入るための門の前でいったん深々と頭を下げた後に両手を合わせ黙祷の意を捧げてから、油井が「こんな夜中に大変失礼します。」と言って段を上り始める。そして勝入塚の石碑を前にして改めてそこでも深々と頭を下げ両手を合わせると「大変不謹慎な時間に申し訳ありません。勝手な我儘かもしれませんが撮影をどうか許してください。」と話すと、後藤が急に辺りをキョロキョロし始めると油井に対して「さっきから、武者っぽい、多分あれはきっと幽霊だね。俺達をじっと睨みつけるようにして見てくる。多分時間関係なくともあまり宜しくない場所なんじゃないのか。」と語ると、油井は後藤の助言に「その武者が立っていた方向に今カメラは向けているのか?」と訊ねると後藤は「写っているかどうかはわからないが一先ずカメラはそちらに向けている。最初は一人、確認できたけど散策している時間が長くなるにつれて一人や二人どころじゃなかったね。今の段階で多分5名の武将の霊が俺達に対して”帰れ”とサインを出している。このまま散策していたら大勢の武者の霊達に囲まれる可能性が大いにある。」と指摘すると、油井は村田に「肝試しで良い心霊映像を撮影することこそが俺達の仕事なんだ。俺達がこの活動を続ける醍醐味の一つでもあるんだ。危険だからやめますは言い訳にしか過ぎない。可能な限り記録として残さなければいけない。」と説得するように話すと、「それに俺達はまだ勝入塚での検証をまだ終えていない。一先ずは心霊写真が撮れるかどうか写真撮影をし終えてから南側の雑木林の検証を行おう。」と言って、村田も「霊感が無い人に俺達が見えたことを説明するのは難しい。だからこそ証拠が必要なんだよ。危険であることは百の承知で行わないと、ね?」と後藤に対して話しかけると後藤は「分かってはいるんだけどね、ただここはちょっと異質かもしれない。洒落にならないことが起きてもおかしくない。」と話しながらも、勝入塚の付近を写真撮影してから、南側の雑木林がある方向へと移動し散策することにした。


雑木林をなるべく時間を掛けながらゆっくりと調べていくにつれ、斧落が油井に「何だかここ、武者の霊も出てきそうなんだけどもさ、ここだけ物凄く陰鬱な、空気が物凄く嫌な感じがするんだよね。」と話すと、油井は「自殺を図られた方かもしれないが、確かにちらっと程度でいるのは間違いない。ただこういった場所で自らの命を絶つということは、己の安らぎの場所を失う事と同じことだ。先に旅立った武者の霊からして最近この地で旅立った方がこの場にいるという事は異国の人間が現れ侵略をしに来たと言わんばかりに強い抵抗を示す傾向がある。だからあの世へ昇天されても居場所がなくなり、かたや自らの命を絶った場所に戻ってきても敵扱いされ、落ち着く場所がない状態でただあてもなく彷徨い続けるしかないからね。」と話すと、油井なりの見解を聞いた甲州は「事情が何にせよ、自殺をすることは良くないよ。それだけは言いたい。こんな懐中電灯が無ければ暗くって人気も無い場所だからこそ、行いやすい環境は揃っているのかもしれないが、あまり歓迎されるものじゃないって考えには同感だね。」と話した直後にふと背後が気になったのか斧落が急に後ろを振り返るのだった。


その様子を見た村田は「メイサちゃん、どうしたの?」と気が付き声を掛けたら、斧落は「さっき、わたしの後ろのほうで複数名、一人や二人ではなかったんだけども何人かいる気配を凄く感じた。」と話すと、斧落の意見を聞いた油井はすぐさま確認のために斧落が立っていた方向の霊視を行うことにした。


そして油井は村田と後藤に対し、「黒い甲冑の恐らく武者の霊と見て良いだろうが集団が背後に迫ってきている。どうやら本気で怒らせてしまったようだ。ここにいては危険が伴う。急いで庄九郎塚がある方向へと向かおう。危害を与えることはしないと思うが、俺達がこんな時間帯に個々にいることに対して強い憤りを感じ始めているに違いない。」と話すと、後藤は「入って来たときと明らかに重苦しい空気から一変して公園に入るまでは蒸し暑いと言っていたのに、ここに来てから冷房がきいているのかと思ってしまうほど、寒いぐらいに涼しい。これは複数の霊が集まってきている何よりの証拠だ。怒りを買ってしまうと何処までも憑いてくる危険性がある。早くここから移動しよう。」と切り出すと、一同は散策していた南側の雑木林を後にして、庄九郎塚がある北側へと移動することにした。


移動するまでに杉沢村が写真撮影を連写モードで行うと、念のために撮影した画像を確認すると、歩きながら油井に「さっき後藤君が解説をしていたところで写真撮影を行ったら、メイサちゃんやむっちゃんがいる周辺でカメラのフラッシュとも、霧でも何でもない白い靄のようなものが当たり全体に立ち込めて気味の悪い写真が1枚だけ撮れた。」と語り油井に画像を確認させると油井はハッとした表情で「やばい。なかなかすごい1枚が撮れてしまったなあ。これはざっと数えただけでも百名以上はいるんじゃないのかな。一人一人の顔がはっきりと見えるのもあるし、中には怒りの感情を露わにしている武者の霊もいる。この地が抱える闇は相当根深いのだろう。」と呟くように話すと、黙々と歩き続けているうちにようやく庄九郎塚に到着した。


勝入塚と同様に石碑の前でまずは深々と頭を下げ「こんな夜の遅い時間帯にお邪魔してしまい申し訳ありません。誠に勝手ながら写真を撮らせていただけませんか。お願いします。」と言ってから両手を合わせ黙祷の意を捧げてから石碑の前まで近づくとさらにそこでも深々と頭を下げ両手を合わせてから庄九郎塚の周辺を写真撮影をし終えたところで長久手古戦場公園の出口にまで辿り着いたところで肝試しライブ配信を終了させることにした。時刻は22時になろうとしていた。


スマホの時計を見た杉沢村が「ここから中之院軍人墓地へは車で1時間のところにある。到着したら23時になるから、その時間から肝試しライブ配信を行うことにしようか。」と提案すると、一同は杉沢村の意見に理解を示したところで車を停めておいた場所へと戻り、次の目的地である中之院軍人墓地へと向け出発した。

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