【完結】慰霊の旅路~煩悩編~

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豊田湖(山口・下関市)

公開日時: 2022年4月19日(火) 23:33
文字数:9,298

2026年5月2日 土曜日 AM9時

明るい肝試しの甲州と斧落の依頼を引き受けることになった侑斗は前もって甲州と打ち合わせをしたうえで、5月2日の土曜日の朝9時からの、侑斗がかねてから気になっていたと語る山口県下関市内にある豊田湖での明るい肝試しを行うことになった。


侑斗は修業のために引き続き吉岡と行動を共にすることにした。


待ち合わせ場所として豊田湖畔公園キャンプ場の駐車場で先に到着していた侑斗と吉岡が甲州と斧落の到着を首を長くしながら待っていた。そして、助手席に座る甲州が侑斗と吉岡の姿を見て大きく手を振って挨拶をすると、侑斗が「おーい!こっちに停めている!」と両腕を上げて合図を出したところで、斧落と甲州が乗る車が駐車したのを確認してから、5月2日から5月6日にかけて行われる心霊スポットでの肝試しの日程についてのミーティングを兼ねての説明が斧落より行われた。


斧落が侑斗と吉岡に「この度は忙しいのに、女子部の活動に参加して下さってありがとうございます。」と深々と御礼を言うと、侑斗は「いやいや。とんでもない。御祓いの仕事も無ければこうやって霊能者として各心霊スポットに纏わる噂の真偽を徹底的に検証して、それは単なる噂に過ぎないのか否か、ジャッジを下すのは大事な仕事ですから。」と語りつつ、斧落と甲州に「本当なら四国の心霊スポットを巡る予定だったのに、急遽僕のワガママって言ったらあれですけど、下関市にあるこの豊田湖での明るい肝試しをしてみませんか?という呼びかけに賛同してもらって嬉しかったです。なかなか一人では怖くて行けなかった原爆ドームでの心霊検証も皆となら出来るなと思って、ダメもとで”ここにも行って見たいなあ”といった感じで発言したつもりがこんな簡単にも実現するとは思ってもいなかった。本当にありがとう。」と改めて御礼の言葉を伝えると、斧落は「いえいえ。とんでもない。こっちだってずっと屋外での明るい肝試しをしようと練っていたのに、思いの外星弥さんが土地の所有者と交渉した末にあの有名なホテルニュー鳴門だって、喝破道場だって、まさかわたしたちから依頼したのに逆に饗庭さんのほうから”土地の所有者と連絡がついたから噂される内容がでっち上げかどうか見てきて。敷地内への立入の許可は取れた。”といってくれるなんて思ってもいなかったですし、侑斗さんから提案して下さった豊田湖だって肝試しにはもってこいのところだし、やはり四国に渡るまでには立ち寄っておきたい広島の原爆ドームだって資料館共々人生に一度はやはり足を運ぶべき場所でもあるからね。」と答えると、侑斗は「あそこはね、某有名怪談家の方が訪れた場所というのもあって、根も葉もない噂による風評被害も凄いからね。やっぱりしっかりと内容を理解したうえで、真実なのかデマなのかをはっきりとさせておく必要があるのは当然のことだからね。それに今兄貴立ち上げの元で、全国でなかなか取り壊しなどが出来ない巨大な廃墟をどうにかしようという心霊廃墟の取り壊し基金ファンドを作ってそれで各地色んな心霊廃墟の所有者とやり取りして、過去に起きた事件や事故の有無なども含め、解体費用をこちらで負担して少しでも心霊廃墟を無くしていこうという活動を今しているからね。その観点で今回の四国と来たので、連絡がついたホテルニュー鳴門と喝破道場については敷地内へ入って撮影をしてもいいという許可が下りたので、恐らくは兄貴としてはここが無害だということを証明出来れば買い手もついて建物の解体が進むんじゃという目論見もあるんだと思う。」と話すと、甲州が「饗庭さんがそういう活動をされているとは初耳だった。心霊廃墟を抱える自治体って確か所有者となかなか連絡がつかなかったりなどで、合意が無ければ解体も出来ず泣き寝入りするパターンが多いとは聞いたけど、基金を負担する目的でかつ心霊じゃないことを理由に建物へと入って本当のことを話す活動は今後の心霊廃墟の在り方についても色々と変わっていけたらいいね。」と感慨深く語ると、侑斗は「まあゆくゆくはねそうなってほしい。兄貴の活動はいずれこの国に心霊廃墟を無くすいいきっかけになるんじゃないかと思う。廃墟マニアにはたまらない問題になるかと思うけど、そもそも撮影目的の不法侵入をいつまでも許すわけにはいかないし、常習化する傾向にもあるから、やはり排除する形で動いていかないとルールを守らない輩が増えてしまうからね。ニコニコ動画やYouTubeのほかにもTikTokという動画の投稿サイトがある以上、より厳しく取り締まることが出来やすい環境を作らないといけない。」と自分なりの解釈を語ると、甲州と斧落が頷きながらじっくりと話を聞いていた。


吉岡から「じっくりと話をしている暇もないと思いますよ。今話しているこの地点からもうライブ配信をスタートさせましょうよ。豊田湖に纏わる心霊会談を一つ、名前がないトンネルでの怪談も交えながら検証しましょうか。」と切り出すと、甲州はハッとした表情になって「そっ、そうね。とりあえず今分かっている情報についてライブ配信を行うまでに議論しようかな。」と切り出し、斧落がカメラを手にとってライブ配信を開始すると豊田湖に纏わる心霊怪談の内容について語り始めた。


「豊田湖の基本的な情報としては、冬になるとワカサギ釣りで釣り客で賑わいを見せるその一方で夜になると地元の方ですら近づかないとされるほどの有名な心霊スポットみたい。ただ、有名ではあるけども霊の目撃情報や怪異譚に纏わる話などが一切上がってこない。街灯が殆どなく漆黒の闇に包まれ、また人気が無くなるというのもあってより不気味な印象を与えがちだからこそ、”夜には絶対に行くな”と子供に対して言い聞かせる目的で、怖い怖いという話だけが出回った可能性があるらしい。」


甲州の話した内容を聞いた斧落が「一応そのほかの豊田湖に関連する情報としては、豊田湖の付近にある名も無きトンネルってのも心霊スポットの一つらしくってね。俗に豊田湖トンネルとか豊田湖の近くにあるトンネルと呼ばれている名前が分からないトンネルなんだけど、そこでは深夜に車で訪れた際にヘッドライトを消した状態でクラクションを鳴らすと白い服装の女性の霊が現れるという噂がある。またこのトンネルがトンネル内でクラクションを鳴らすと女性の霊が現れるという心霊現象の発祥の地とも言われていて、霊感のある人が訪れたときには気分を悪くしたり、不安になって恐怖感に襲われることがあるという話もあるね。」と語ると、吉岡が「まあトンネルが具体的に心霊現象の話があるって以外は殆ど”出るかもよ?”程度にしか過ぎないですからね。甲州さんが仰っていたことにもなりますが地元の方が夜は絶対に近づかないほど心霊スポットとして有名ではあるが、肝心な心霊に纏わる怪談話が一切ないのと、周囲を立ち込める異質な雰囲気も相まって心霊スポットの一つになってしまったのではという声も上がってますからね。また今は取り壊されて無くなっていますが昔はラブホテルがあったようで、そこではカップルの心中事件があったとも言われていて廃墟となってから噂されるようになったのですが、それも根も葉もない噂であることが分かり不法侵入者も後を絶たないという観点から取り壊されるきっかけになった案件もありましたね。まあ我々は夜ではなく朝の早い時間帯に肝試しを行い御霊の有無を確認するだけですから、本来の夜に行ってから伝わっている心霊現象について審議し合う方向とはかなり逸脱はしてしまいますが、それでも検証のし甲斐はある場所でもありますね。」と締めくくったところで、侑斗が「心霊スポットの検索サイトにはなかったが、俺個人的には名も無きトンネルよりもお地蔵様が鎮座する名も無き橋のほうが何かあるような気がしてならない。とりあえずまずは名も無きトンネルから行って見てそこで実際にライトを消したらどうなるか、クラクションを鳴らすとどう変化が起きるのかを確かめてから、俺が気になる名も無き橋へと向かおう。ここは名も無きが多すぎるな。名称あるはずなんだけど、調べても出てこないな。あと死体遺棄事件があったというのも、本当の事ならばいつのことなのかが明確に分かるはずだがそれすら情報として出てこないことからも不気味な雰囲気から生まれた悪い印象が世に出回った可能性が高いと見て良いだろう。」と話し終えたところで、早速車に乗り、侑斗が運転する車の後ろを斧落が運転するレンタカーがついていくような形で名も無きトンネルがある方向へと向け出発させた。


そして名も無きトンネルの入り口に差し掛かったところで、侑斗の車がトンネルの中腹あたりでいったんライトを消すと、クラクションを試しに3回鳴らして見せた。何事もなくエンジンを再起動させ、出発するのを見届けた斧落は侑斗と同様にトンネルの中腹あたりで車のライトを消した後に、クラクションを多めの5回鳴らしてみたがこれといって白い服を着た女性の霊の気配も何も感じることなくトンネルでの心霊検証を終える形となった。


侑斗達の乗る車が木屋川ダムの付近でいったん停車させると、斧落達の乗る車も侑斗の車の後ろにつける形で停車したところでトンネル内で何があったのか、侑斗の口から具体的な説明がされた。


「残念ながらトンネルには何もない。霊視をしてみないと分からないレベルの浮遊霊が若干トンネルの入り口付近にいた。それだけに過ぎない。噂される女性の霊を見たというのも恐らくだが白装束を着たこれから旅立たれるために山を登って天国を目指そうとしていた女性の浮遊霊を見た可能性も否定できない。ただ豊田湖に面する木々のほうから、何名か御霊の視線を感じた。怖いのはトンネルではなく、豊田湖だとみて良いだろう。」


侑斗がそう語ると、吉岡が補足説明を行った。


「僕達が考えるには、恐らくですが入水自殺、首吊り自殺があったのではなかろうかと推測されます。こんなにも曲がりくねった道ですから、見通しが悪くまた野生のシカが出てきやすいという情報もありますからシカとの衝突事故があってもおかしくないことですし、事故が起こりやすい環境が揃っていると見て良いでしょう。」


侑斗と吉岡が導き出した答えに斧落が「確かにトンネル内で気分を悪くされた方も中にはいたみたいなんだけど、わたしたちの車はクラクションを5回ほど鳴らしても何の変化もなかったし、やはり自殺者と事故者の霊が豊田湖の心霊の根源に繋がっているような気がする。」と思ったことを語り始めると、侑斗は「だろうな。まあ自殺があったのは間違いないだろうがただ件数は少ないほうだろう。確認できた御霊の数としては、5名程度だったから、あとはこれから行く俺が一番気になるあのお地蔵様が置かれている名も無き橋へと向け出発しようか。」と切り出し、斧落も「わかった。名も無き橋での肝試しを終えたら、広島に向けて、今晩には愛媛に着きたいからちゃちゃと終わらせることにしよう。」と理解を示し、まず侑斗の車が先に出発したのを見届けてから斧落が運転する車が再び後を追うような形で橋へと向かうことにした。


一方、カメラが写っていないと分かった吉岡が侑斗に「お地蔵様が鎮座されている橋のほうがやばいような気がするんですけど、どうですかね?」と訊ねると侑斗は「そこが俺が一番良くないと思った。予めGoogleマップのストリートビューで気になったから画像を見てみたんだけどさ、足場のないところなのにじっと橋の欄干の下から誰かが覗き込んでいる、橋の向こう側で誰かが待ち伏せしている、恐らくここが入水自殺や周囲の木々に首を吊って自殺を図った者がいたということになる。投稿されている動画などを見ても殆どが今は取り壊されてないが廃ラブホテルだったり、さっき俺達が通過してきた名も無きトンネルだったんだけど、本当の恐怖はそっちだと俺は確信を持って言える。だから後はお地蔵様が、写真で見る限り恐らくは自殺者が後を絶たないための地蔵尊というより水害などの禍から護ってくれるための地蔵尊の一つだと思う。そのためか、念入りに供養されているとは言えないが心ばかりの榊が供えられているのも、交通安全地蔵尊ならば仮にこの地で亡くなられた方の御遺族が地蔵尊が祀られていることを知ったら念入りに供養をしていてもおかしくないのに、この橋に鎮座する地蔵尊にはそのような痕跡がない。つまり交通安全ではなく水害の安全対策のための地蔵尊の可能性が高い。それを知っている人が榊を供えたというのが俺の見立てかな。」と話すと、吉岡は「饗庭さんが語ることが本当ならば、それじゃあどうしてその地で首吊りだったり入水自殺があったとわかったんですか?ストリートビューの写真だけでは分からないことだってありますよね?」と質問し始めると、侑斗は「人気がないからこそ、自殺行動を起こそうとして止める人間がまずいない。衝動的に死のうと思えば死ねる。本当に死のうと思い覚悟を決めた人間ならばこの地を最期に選ぶだろう。いやまだまだ心に迷いがあってでも生きることに苦しくなった場合ならば、名所と言うべき場所をあえて選びそこで絶命するか、或いは声を掛けられたことによりもう一度やり直そうと再奮起するかだろう。だからこの地を選ぶなんてのはよっぽどの覚悟がないとそもそも夜になれば真っ暗で足元すら分かりにくくなるような場所での自死というのはもうもう誰にも見つからなくてもいい、ひっそりとした場所で死にたいという気持ちが無ければこんな寂しい場所を選んだりしない。自殺の名所というには件数も限られているだろうな、ストリートビューの写真で見る限りでは10数名ぐらいの方があの地で命を落としていると見て間違いないだろう。」といって解説すると、吉岡は「せめて生きているときに誰かひとり、それこそ生きていくのが苦しくて誰にも相談できる相手がいないときに電話以外の相談窓口があればもっともそんなことを誰かひとり相談できる相手がいれば、結果は違っていたでしょうね。心が優しすぎたのか、あるいは遠慮ばかりして水臭かったんでしょうかね、人にはその人なりの抱えていることや悩んでいることは色々あって違いますけど、でも僕は父親から厳しく言われたあの言葉を思い出しますよ。”神様は乗り越えられない試練を与えたりはしない、諦めずに乗り越えなさい”とね、よく何かと勉強で分からなくて苦しんだ時とか、父親がよく僕に励ます目的で言ってくれたのかもしれません。あの一言が無ければ、今の僕は無かったのかもしれません。最もこの地を最期にされた方々に聞かせてあげたいセリフですね。きっと相談できる相手が欲しかった筈ですから、心の傷を完全に癒やすことはできませんけど向かうべき道へ向かい輪廻転生をするべきだということを伝え説得することぐらいならできる筈です。」と自信の思い出を振り返りながら話すと侑斗は深いため息をついたと同時に「俺の親父は悪魔に取り憑かれ絶命した。神は乗り越えられない試練を与えないというのなら俺の親父はどうなるんだ?神は悪と闘い禍から身を護ってくれる存在ならば親父は人助けした末に悪魔に憑かれこれ以上の犠牲を出さないためにも自らの命を捧げた。神の存在があくまでも宗教的なのはわかるけど、親父は乗り来られぬ試練に打ち勝つ手段を見い出せずに死んだとでもいうのか?」と吉岡に訊ねると、吉岡は「えっ!?」と言ってリアクションを示した以外、侑斗の問いかけに対して何も出てくる言葉がなかった。


そんな吉岡を見た侑斗は「いいんだよ。神様はいるのはいる。ただ親父の事を思うと果たしてそれは与えられた課題だったのかそれともそういう運命だったのか。皮肉なもので、俺たち家族は悪魔に振り回され続けたから、吉岡の親父さんがいうことも俺は理解はできるよ。その通りだと俺は思いたい。」と話すと、思い出すことでさえも嫌だった思い出を振り返ったために、再び大きなため息をついたのだった。


吉岡は侑斗に対して「すみません。本当にそんなつもりじゃなかったんです。傷つけるようなことを言ってしまってすみませんでした。」と謝罪すると、侑斗は「謝罪は求めていない。今そんな心の弱みを突かれてしまうようなことなどは一切考えるな。自殺者の御霊達に弱みがあると分かれば隙を突かれてしまう形になる。だから無の境地になって今起きたことはきれいさっぱり忘れてしまったほうが良い。」と励ますような口調で返事すると吉岡は「ありがとうございます。」と言って二人の乗る車が先に名も無き橋のところへと到着すると先に車で橋を渡り停車が可能な場所に車を停車すると、続けて橋を渡る斧落達の車を見て停車が出来る場所へと侑斗が誘導したところで、名も無き橋での肝試し検証を行うことにした。


甲州が「ここが侑斗さんが語っていた名も無き橋なんですね。確かに先程わたしたちがいた名も無きトンネルとは違って明らかに誰かに見られているような、車の中にいてもじっとしてはいられない、そんな気分になりました。」と感想を話すと、続けて斧落が「わたしもびくびくしながら運転をしていたけど、誰か足場がないはずなのに橋の欄干の下からじっと、それだけじゃなく渡ろうとした時に対岸からじっと誰かに見つめられているようなのが凄く感じて、気持ちが悪かったのを今でも覚えている。ここのほうが曰くつきだと改めて思った。」と語ると、侑斗が「恐らくだが、ここの橋のほうが一番入水自殺だったり、首吊りによる自殺があっただろう橋だと思われるな。いざ車を停めた場所から、橋の方向へと向かっていくうちに段々と分かってきたような気がする。ここだけが空気が違う。重苦しくて、最初は橋を車で渡ってきたけどいざ歩いて渡ろうとすると、橋を渡らなければいけないという認識は頭の中にあるけども、下からじっと何名かの方が覗き込んでいるなというのがあって、それが益々この橋を渡ることの怖さを感じてしまう。手招きをしてきたり、”おいでおいで”と呼びかけるようなアクションは今のところは見受けられないが、ただ御霊達の状況などから察すると、自殺があったのは間違いのない事実であろう、だけど同時にこんな人気のない寂しい場所に俺達がカメラを持った状態で現れたことに対して”そっとしておいてほしい”という思いもあるのかもしれない。だから新しい仲間を増やそうとして現れるのではなく、ここが安息の地でもあるからそっと静かに、いやむしろ邪魔をしてほしくないという意思表示のほうが強いと感じ取った。」と解説をすると、吉岡が侑斗に近づくと侑斗の耳元でひそひそと囁くような感じで提案して侑斗がOKとサインを出した後に吉岡がカメラを前に「あんまりこういう人気のない場所で最後を遂げる方の心情としては、あまり人に見られたくない、こっそりと旅立ちたいという思いもあるから、はっきり言ってもうそっとしておいてほしい、自分たちにとっての居心地のいい場所を奪われたくないという思いもあるから、僕達の動きに対して警戒しながら欄干の下からじっと見つめてくるという事は僕達には危害を及ぼすことはしないが、安息の地であるこの地をそっとしてほしい、静かにしてほしいという思いもあるから、僕達の前に現れたのだろうと推測されます。御霊が出ることには間違いないと断言はして良いと思いますがただやはりここは知る人ぞ知るという場所にしたほうが良いと思います。橋の名前も地図上には載っていないだけでやっとわかりましたがでもここの橋すらも特定されぬようにしたほうが、この地で最期を遂げた御霊達の何よりの願いかもしれません。騒がれることに対して何より嫌悪感を抱いているのは間違いないはずです。僕と饗庭さんはこの地で亡くなられただろう自殺者の御霊達に供養のための儀式を行いますがその様子を撮影するか否かは斧落さん、そして甲州さんの判断に委ねます。御祓いをしている様子など見たくないという方も中にはいらっしゃる筈でしょうから、僕達は僕達として霊能者としてやれることを行います。」と甲州と斧落に対して説明をしたところで、侑斗と吉岡が橋の中腹あたりに差し掛かったところで侑斗は供養のための御経を唱え始めると侑斗の御経が唱え終わったところで吉岡が陰陽道を用いた除霊を行い豊田湖での心霊検証を終える形となった。


二人が起こしたアクションの御蔭もあってか、その後何事もなく橋を無事に渡り終え甲州と斧落がそれぞれの感想を伝え、侑斗と吉岡が霊能者としての意見を語ったところで心霊ライブの配信を終了した。


ライブ配信を終え甲州から侑斗に「まさかと思いましたが、心霊現象の噂の乏しい場所でわたしたちが霊感が強いからこそ感じた恐怖があったのかもしれないけども、こんなにも朝の明るい時間帯であっても嫌な感じのするところってのはなかなかないものをとても感じさせられた。やはり有名なところじゃなくても、豊田湖のような心霊現象の噂の内容が乏しい場所のほうが実は案外怖いんだということを学習させられたような気がする。」と改めて豊田湖をチョイスした侑斗に御礼を伝えると侑斗は「人気があって知名度のある心霊スポットの場合、人の目がある。観光地と化すケースもあるので仮にもしこの地でこの世への未練を残し乍ら亡くなり彷徨う御霊がいたとしても、騒がれたら落ち着けるような場所すらなくなってしまう。有名になればなるほど俺達のような霊能者が来て初めてSOSのサインを出してくる御霊もいれば、霊感をあまり感じない方の場合は”怖い、怖い”と思いながら入ったけどでも違ったと感じるのとではやっぱり俺達にしか視えない世界ってのと霊感をあまり感じない方とではやっぱり体感するものの個人差というのが生じてしまいやすく、行ったら怖くなかったと思う人が多く感じやすいのはそのため。逆にマイナーなスポット程御霊が現れやすいとされるのは、人気がなく騒いだりして静かなひと時を邪魔されないから集まりやすいというのがある。だから某有名怪談家だって有名な場所での心霊DVDは撮影はしなかったはずだろ?知る人ぞ知る噂話の一つにしか過ぎないような場所をあえて選ぶことによって心霊現象の真偽を確かめるためにそういった場所を選んでいるだよ。まあ噂は噂にしか過ぎないからあれもあれで一部は恐怖演出あり、真偽については疑って食ってかかったほうが良いところのほうが多数あると俺は思う。」と語ったところで、吉岡が「さて、次の原爆ドームへと向かいますか。原爆ドームのみならず原爆資料館内での見学も含めライブ配信でしたよね?」と甲州と斧落に対して聞き始めると斧落は「そうね。長々と話していないで、原爆ドームへと向かいましょう。」と理解を示したところで、一同は豊田湖を後にして原爆ドームへと向かうことにした。

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