2026年5月6日 PM23時
甲州と斧落の明るい肝試しの女子部の二人は、前回の長崎ノ鼻で予告をしておいた林田港での肝試しライブ中継をニコニコ動画とYouTubeでライブ配信していた。斧落が持つカメラを前に甲州が懐中電灯で辺りを照らしながら林田港の説明並びに心霊に関する怪異譚について説明を行い始めた。
「懐中電灯で明るい肝試しを御覧の皆さん、こんばんわ!甲州と撮影役の斧落でお届けする四国での明るい肝試しもいよいよラストナイトとなりました。本来なら明るい時間帯でお届けするというのが我々のポリシーでもあるのですが、いま我々が来ている林田港は物流のターミナル港というのもあって、明るい時間帯に訪れてしまうとかえってお仕事をされている方の邪魔にもなりかねないというのもあって、今回明るい肝試しの女子部としては初めての夜の、しかもまだ働いている方がいらっしゃる中での肝試しライブ検証なので、我々の肝試しがお邪魔虫にならぬように短時間で林田港に纏わる心霊の怪異譚について調べたいと思います。まずは、林田港ですが漁港としての役割を果たしている港としても知られていますが、どうしてだか理由が分かっていないのですが、県外からこの港に訪れ身投げをする者が後を絶たないと言われています。噂としては、港の岸壁に車を停め休憩をしていたら、パーキングにギアを入れていてハンドブレーキもかけていたはずなのに車がゆっくりと勝手に海の方向へと動き出し、おかしいと思い後ろを振り返ると後部座席に不気味な笑みを浮かべた複数の女性の幽霊が運転手を羽交い絞めにした後、車ごと海底に引き摺り込もうとしたという話があります。先程説明をした噂の内容と因果関係があるかどうかはわかりませんが、マスメディアにも報道された事件が起きています。」
甲州がライブ配信を行うまでに作成しておいた原稿を読み終えるといったん深い深呼吸をした後、事件について説明を始めた。
「2003年(平成15年)8月6日に坂出港の林田岸壁近くの海底に車が5台沈んでいるのが見つかり、坂出署と坂出海上保安署が6日に沈んだ車内を調べると、1台に1人ずつ計5名の遺体を発見しました。車体の腐食程度や遺体の状態から見て、5台は数カ月から数年前の別々の時期に転落し、亡くなられたと見られています。調査によると車はいずれも香川ナンバーで乗用車3台と軽自動車、軽トラック1台で水深5~12mの海底にあったという。4台は男性が所有者で4人の遺体も男性とみているが、残る1人は性別不明。全員が白骨化した状態で最長の方で死後数年が経過していたとも。そのうちの2人は別々の時期に家出人捜索願が提出された人物とみられています。」
「2014年(平成17年)1月27日に林田港で”岸壁から車が落ちた”という航行中の船の乗組員から110番通報があり、坂出海上保安署が海中を捜索し約1時間後に沈んだ車の中から男性を救出し病院へ搬送したが意識不明の重体。港には車の転落防止のための車止めも設置されてあったようだが、意図的に乗り越えたと見られている。」
甲州が事件の説明をし終えると、斧落が甲州に対し「長い説明お疲れ。よく覚えられたね。しかしながら、実際に報道されている事件や事故の情報から察しても、ここが自殺の名所と見て間違いはないと思うな。他にも怪異譚に纏わる話があるんじゃないかなと思って前もっては調べてきたんだけど、むっちゃんが話してくれた心霊の噂、ひょっとするとこれじゃないかな?A号岸壁で港に車を停めていたら周囲には誰もいないのに窓ガラスをノックされる、パーキングにした状態でエンジンを止めハンドブレーキを引いていたにも関わらず車が勝手に動き出し、おかしいなと思っているうちに後部座席から複数の女性の幽霊達の手がいくつも伸びてきて羽交い絞めにされた上に抵抗した末手を振り払い外に出ると後部座席から笑顔の女性が見ていたというのもあるし、水面に女性の霊が立っているというのもある。やはり香川県以外からわざわざこの港で最期を遂げようと身を投げる方が多いというのも、自殺者の霊が新たな自殺者を呼び込んでいるとも言われていて、未だに自殺者がいるみたい。」と話すと、甲州は「まずは今わたしたちがいるA号岸壁から、心霊の噂はないけどもC号、D号岸壁と検証を行って、24時頃にはライブ配信を終了させよう。あまり長居をしても月曜日には東京に帰って依頼されているMVの映像作成もしなければいけないし、明るい肝試しとして撮影をする予定の6月13日(土)から14日(日)の岐阜県の心霊スポット、6月20日(土)から21日(日)の愛知県の心霊スポットでの心霊検証があるわけだしね。水場は幽霊が集まりやすいとも、果たして本当に自殺の名所なのかどうかやんちゃな若者達の溜まり場だったみたいだしやんちゃした末のってことも考えられるから、自殺というより事故の可能性も含めて考える必要がある。」と斧落に対して話しかけると、斧落は「そうだね。長々と話しをしていては時間の無駄だし、ひとまず複数個所で写真を連写モードで何枚か撮影して、明らかに不自然なものが写り込んでいるかいないかはそれは全ての岸壁を撮り終えてから再度車に戻ったときに心霊画像が撮れていないか検証しよう。」と言って理解を示すと、甲州は「そうと決めたら早速歩いて検証しよう。」と話すと岸壁の近くにまで移動することにした。
海まであと少しと言う場所で甲州が立ち止まると、斧落に対して「車止めがあるといっても、この高さでは・・・簡単に乗り越えることが出来ちゃうね。これで果たして自殺防止策と言えるものなのだろうか・・・?」と疑問に感じ始めると、斧落はふと背後を気にし始めて「さっき誰かがわたしたちの後ろに立っていたような気が、あっでもまあいいや。わたしが考えすぎたかもしれないし、とりあえず岸壁の近くを念入りに調べて行こう。」と話すと甲州は持っているカメラで写真を撮影し始めると、斧落は辺りをキョロキョロと警戒しながら歩き進んでゆく。
時折海を懐中電灯の明かりで照らしながら見ていくのだが、甲州が思わず「綺麗とは言い難いほどの汚い海だね。環境汚染と言ってもいいぐらい。」と呟くと、斧落は甲州に「物流ターミナル港の中にあるからしょうがない、でも今のままだといずれは汚い環境のままだと魚が住みにくいとかそういった問題にもなってくるだろうし、真剣に考えて取り組まないといけない議題の一つにはなるんじゃないかなあ?」と話すと甲州は「説明していなかったことになるけど、林田港は走り屋のドリフト走行が行われていた場所としても知られていて、今でも当時の痕跡が残っているほど、自殺者以外の若者達のやんちゃが行き過ぎたことによる事故もかつてはあったみたい。自殺者の幽霊との因果関係があるかもしれないけど、海から白い手が出てきて海へと引き摺り込もうとするというのも心霊に纏わる噂としてはあったみたい。でも今こうして海をじっと見ていたら海面から白い手が伸びてきているのかとなるとそれは今の段階ではわからない。出てきそうな雰囲気があって気味が悪い、それとしか言いようがないよね?メイサちゃん。」と訊ねると、斧落は甲州に「むっちゃんって、霊感強いってその割にはいる気配しか感じないの?」と単刀直入に切り出すと、甲州は「わたしはただ、何となく姿形こそは見えないけどもそこに”何か”がいるっていうのかな、そんな気配を強く感じやすいタイプ、だからはっきり言って霊能力者向きではあるんだよね。メイサちゃんは気配だけじゃなくて、そこにいる正体も分かってしまうほどの霊能力の持ち主で良いよね~。」と羨ましそうに話すと、斧落は謙遜しながら「わたしはそこまで、むっちゃんと同じだよ。気配を感じたり、その場の雰囲気で察したりしてそこに”何か”がいるなという答えにしか辿り着かないのは同じことだから。」と話すと「やっぱり油井君とか後藤君とか、姿形もはっきり見える霊感の強い人がいたらまた違っていたんだろうけど、やっぱ霊感が若干強いだけのわたしたちでは見ている視聴者に対して、林田港の真の怖さを説明するのは難しいね。」と話した途端に、背後から甲州と斧落を呼ぶ声が聞こえてきた。
「おーい!おーい!おーい!」
その声に甲州がハッと振り返ると、そこに油井と村田、後藤と畑の姿があった。
彼らの姿を見て、やっときちんと説明が出来る人が現れたと思った甲州と斧落は立ち止り、甲州が「まさか!来てくれるなんて嬉しい!」と近付く4人の姿を見て語り掛けると、油井は「むっちゃんとメイサちゃんだけでは力不足だろうと思ってな、駆けつけてきたよ。饗庭さんだって明日から仕事に戻らなければいけないわけだし、今何か困ったことがあっても連絡することはNGだしね。だから、俺が持ってきたばけたんのWARASHIを使ってその場の状況をしっかりと見てもらうんだよ。」と自慢げに語ると、A号岸壁を東側へと向かってガードレール等で車の通行が出来なくなっている間をすり抜けた地点でWARASHIの手動検知を行うことにした。
結果は赤で「臨兵闘者皆陳列在前(りん・びょう・とう・しゃ・かい・ちん・れつ・ざい・ぜん)」と九字切りする結果を聞いた油井は「初めてだ、自動検知じゃなくて手動検知で九字切りをするとは、やはりこのガードレールで区切られたこの場所こそが”何か”があって車の通行を制限しているのだとしたら、やはりここには気の乱れを生じさせる要因があるという事だ。」と話すと、後ろにいた村田は油井に「気の乱れを生じさせるってことはやはりここが、心霊スポットの要因にも繋がった5台の車が別々の時期に飛び込んでそれぞれの車から5名の白骨化した御遺体が見つかったという事件に関係しているのか?」と切り出すと、油井は「その可能性が高い。俺はてっきり、A号岸壁の車止めにしてはあまりにも低すぎる段差と思える場所に目が留まったが、いやここは違う。その先のガードレールが設置されているところが妙に気になった。地図で見るとここ一帯は釣り場のみならず工業地帯でもあるため、当然ながら働く従業員の駐車スペースを確保しなければいけない面も考えると、なぜここだけが閉鎖されているのかが凄く気になった。だから可能性として考えたときに、2003年に報道された事件が実はこの付近だったんじゃなかろうかとピンときた。」と答えると、油井なりの見解を聞いた後藤は「死んではいないみたいだけど、確か2014年には高松市内に住む60代の男性が車止めを乗り越えて海へと転落して意識不明の重体というのもあったから、そのときは果たしてどこでそれが起きたのか、仮にもしこの事案が自殺者の御霊達の”おいで、おいで”と手招きするようなアクションがあったとしたら、こういうことは連鎖的に同じ場所で起きるはずだ。」と話すと、村田は「俺も同じことを考えた。ここは念入りに調査しよう、何かある。それこそ心霊現象が高い確率で撮れる自信がね!」と高らかに話した途端に、油井が持っていたWARASHIが自動検知でポーンと音が鳴ると赤点滅してこう話した。
「キャー!」
WARASHIの悲鳴を聞いた一同は動揺の表情を隠せられないではいたものの、油井が落ち着かせるように「WARASHIが悲鳴を上げたということはここに多くの自殺者の御霊がいるという事だ。霊視して確認しよう。」と話すとすぐ答えが返ってきた。
「噂にあった海面からの白い手が伸びてくるというのはよくありがちな怪談話の一つでしかないだろうと思われるが、しかし海面の岩場っていうのかな、その付近を注意深く見ていると、恐らくここで自死をされた方達が複数名見受けられた。車で突っ込んだの他にも、入水自殺だったり、この地で亡くなられた方が一人じゃないと分かっているからこそわざわざ県外でも足を運んでくる、そのような傾向が強いんじゃないのだろうか。ただこれを俺は霊視が出来るから霊の動きなどで大体予想がつくけどもここは自殺だったり或いは事故も多いんじゃないのだろうか。車が頻繁に出入りしているようなところは転落防止のために車止めも高く設定されているが、A号岸壁の一部そして心霊の噂こそはなかったが、C号岸壁にも気になる個所があるので、ここは調査終了させて、次のC号岸壁の肝試し調査を行おう。」
油井がそうメンバーに対して言い聞かせるように話すと、理解を示したのか村田、後藤、畑の3人も油井の後を追うようについていくと、その様子を見た甲州と斧落も置いてきぼりにされてほしくない一心で斧落が「待って!わたしたちを置いていかないで!生配信中なんだから!」と急ぎ足で駆けつけると、C号岸壁での肝試し調査を早速行うことにした。
油井が百円ショップで購入したであろう、車止めの近くに人形を展示するための小さな飾り棚を組み立てるとそこにWARASHIとまもりだまを置いた状態で、三脚にカメラを固定した状態にすると、後ろから畑が「珍しいな、定点カメラをセットするのか?」と訊ねると、油井は「あったりまえだろ!霊は人の気配に敏感なんだ。だからセンサーライトの役割を果たすWARASHIとその場の気の乱れを整えてくれるまもりだまがどう反応するのかを定点カメラで確認することで、俺達がいない間に何が起きたのかを念入りにチェックすることが出来る。ついでに、あの封鎖されていたA号岸壁の場所と車止めが低く設定されている箇所にも定点カメラを設置して、WARASHIとまもりだまは5体持ってきたから、今俺達がいるC号岸壁に2か所、A号岸壁に2か所定点カメラを設置したところで、D号岸壁でも1か所設置して、一応場所的には漁船などがとまっている箇所があるからその付近で定点を考えている。」と説明すると後藤は「定点カメラを設置するのは良い案だと思うけども、盗難防止のためには誰かしら見張りを付けなければいけないと思うよ。それは一体誰が引き受けるんだ?」と突っ込み始めると、油井は「そっ、それは言い出しっぺの俺がやるにきまっている。俺がやる、でもA号岸壁を見ながらC号岸壁の見張りは出来ない。」と言葉を詰まらせながら話すと、その様子を見た畑は「仕方がないなあ。俺はC号岸壁の定点カメラの様子を常にチェックして何かあったらお互いのLINEでやり取りしよう。だからD号岸壁での定点カメラのチェックは後藤か村田か、どちらかチェックしよう。」と打診すると、村田が手を上げて「D号岸壁の定点カメラのチェックは俺が行う。だから心霊調査はむっちゃんとメイサちゃんと後藤は引き続き写真撮影をしたりして肝試しを続行してほしい。」と話すと、早速セットしたばかりの油井のWARASHIが自動検知で赤点滅すると「部屋の中を歩き回っているなあ!」と話すのだった。
その答えを聞いた一同はブフッと笑いながらも、畑は油井に「部屋の中を歩き回っているって君が持ってきた霊界とのコミュニケーションツールのロボットは言っているけど、部屋っていうには無理があるよね?」と突っ込み始めると、油井は「あくまでも収録された声で話しているのだから、その場その場で正しい答えを導き出せるかとなるとそこまでWARASHIはオカルトグッズの最先端を走っているわけじゃない。」と解説すると、油井はA号岸壁へ定点カメラをセットするために戻ると、畑はC号岸壁にセットした定点カメラの見張りを行うために残り、そして村田が先にD号岸壁へ油井が気になったと話した漁船がとまっている箇所での定点撮影を行うために移動を開始するのを見届けた村田と甲州と斧落はとりあえず気になった海沿いをメインに歩いて検証することにして、D号岸壁を目指すことにした。
ゆっくりとした歩調で歩き進んでいくにつれ、甲州が後藤に「後藤君は何か歩いていて何かいるとかそんなのは見えたりする?」と訊ね始めると、後藤は「いるのはいるね。ただはっきりいってこれは強くなければ見えぬレベルだね。海とか川とか池、湖といった水場は幽霊が集まりやすいんだ、だからここには自殺をされた方以外にもこれから昇天されるためにこういった水場でいったん休憩をしてからより高い場所へと昇っていこうとしている浮遊霊の姿も見受けられる。混在しているんだよね。自殺者の地縛霊とそうじゃない、ただの浮遊霊がね。それがより、この場を説明させるのが難しくさせている一つの要因になっているのかもしれない。ここは数ある霊場の一つである可能性のほうが高い。」と分かりやすく説明をしたところで、甲州が「数ある霊場というのがちょっといまいち、つまりそれだけ多くの幽霊がこの地で彷徨っているってこと?霊場って聞くとパワースポット的な印象を受けちゃうけどね。」と笑いながら訊ねると、後藤は一瞬呆れた表情になりながらも「霊場というのはそういうことじゃない。要するに幽霊が集まりやすい環境が整っている場所のことをさしているんだ。林田港はまさにそれに該当する。勿論今さっき俺が水場は霊が集まりやすいと説明したけど、山にも同じことが言える。例えばトンネルとかね。これから昇天される幽霊達にとって山は通過点の一つなんだ。だから火葬場の多くは山にあるんだよ。極楽浄土へ辿り着いてほしい、その一心で火葬場はあえてあの世の世界を彷彿させやすい山の頂だったり、或いは川の近くだったりする。林田港には神聖な雰囲気は微塵にも感じないが、同じような環境であることには間違いない。」と答えると、後藤なりの解釈を聞いた斧落は「わたしは後藤君と違ってはっきりと幽霊が見えるってわけじゃないんだけども、ここで気配を感じた幽霊は何かを訴えているようにも感じ取れちゃう。今のところ直接的な攻撃を仕掛けてくる要素がないとしても、わたしたちを通して何か伝えたいことがあるのかもしれない。歩いているうちに、さっきまで後ろに誰か油井君や畑君、後藤君や村田君がいる以外の、誰かが後ろで見ている視線を強く感じたんだけども、それはきっと何か理由があるような気がしてならない。」と思ったことを切り出すと、後藤は「メイサちゃんのその優しい心遣い、自殺の名所ともなると仇になる。思いやりは心遣いはこういう場所では忘れたほうが良い。」と冷たい口調で語ると、「自殺者の霊は同情したり同調してくれるんだと思ってくれるだけでも憑いて来てしまう。自殺者の霊の大方が行き場を無くした地縛霊が殆ど、だからこそ優しさや思いやりは捨てるべきなんだ。死を悼むことも大事なことだが、その思いは亡者には通用しない、付け入る心の隙があると分かれば狙われる。だから鬼になってこの場を乗り切るしかない。」と話すと、斧落は後藤の指摘にただただ「分かった。」と言ったきり、黙り込んで心霊写真が撮れそうな場所での写真撮影に専念することにした。C号岸壁から地図上で見るD号岸壁に辿り着くと、同様に心霊写真が撮れそうなか所を隈なく探して過ごすこと、1時間が経過して日にちが変わったところで林田港の肝試しライブ検証を終了することにした。
ライブ配信の最後に甲州が「今回ライブ配信で他に停車している車があったので定点カメラでの撮影をメインに、同時に写真撮影などを通して林田港のリアルな姿をお届けしたのですが、与えられた1時間内では、はっきり言って海面から無数の手がのびてきたとか、水面に女性が立っていたなど、噂される心霊現象はこの目で確認をすることはできませんでした。ちょっと見ている視聴者の皆さんにとっては非常に残念な結果となりましたが、わたしたちが後日収録する林田港の定点カメラの映像から、写真撮影の画像を通して視聴者の皆さんにリアルな恐怖をお届けできるかなと思いますので楽しみに待って下さい。」と笑顔で締めくくったところで、一同は林田港を後にして油井が借りてきたキャンピングカーで一夜を過ごすと、明くる日の朝には東京へ帰ることにしたのだった。
林田港での肝試しライブ配信が終わり数日が経ち、5月13日水曜日に再び明るい肝試しのメンバーが事務所での収録を行うために集まり改めて撮影した写真や映像の検証を行うことにしたのだった。
定点カメラの映像を見ながら斧落が「まもりだまが頻繁に赤になったり青になったりをくりかえしてはいるけども、WARASHIはこれといって反応はないね。」と話すと油井は「定点カメラは5か所設置してそれぞれにWARASHIとまもりだまを配置したから、その他のカメラにも不審な点が写っている筈だ。」と言って他のカメラを確認するも、風のざわめきから波が立つ音ぐらいしか収録できておらず、呻き声のような声すら録音をすることは出来なかった。最後の手段として、スマホで撮影した写真を確認したところでようやく一同が求めていた答えに辿り着いたのだった。
甲州のスマホで撮影した画像を見た村田が「あれ?」と言って、油井に「これはカメラのフラッシュでも何でもない、無数のオーブのようなものが海面に浮いている様子が見受けられるよ。」と話すと、油井は「何だって!?」と大きなリアクションを見せると、その場にいた斧落にも、後藤にも、畑にも同様の雪が降っているわけでもなければ、カメラのフラッシュでもない、白くて丸い無数の玉が海面に浮いていたのだった。同様の写真が撮れていないか、週六時まで撮影した画像を見ないことにしていた村田も恐る恐る確認をすると、村田が撮影した画像にも無数の白いオーブのようなものが、しかも渦を巻いているように円を描いているのだった。
写真に写し出された真実を目の当たりにして、甲州が「写真は嘘はつかないね。」と声を震わせながら話すと、村田は「あのとき、明確な心霊現象こそは起こらなかったけども、これだけ多くの幽霊があの場に、しかも白いってことは未成仏霊の集団に知らず知らず俺達は近づきに行っていたことになる。それだけ多くの人があそこで、地図でB号岸壁が無いのも妙に引っかかっていたがそれがあのガードレールで封鎖され車の立入が制限されているあのスペースこそがB号岸壁だとしたら、封鎖した上に消さなければいけない事情があったとすると、やばい場所に足を踏み入れたことになるな。ニュースにあった自殺が多発した岸壁はひょっとするとそこかもしれない。」と話すと、その答えを聞いた畑が「つまり車ごと飛び込む人が多いから封鎖された箇所がある、そこが地図上で消されたB号岸壁だとしたら、油井が最初に目を付けたあの場所こそが曰くつきだったってことだよな。」と話すと、油井は「あの閉鎖された場所だけが空気がガラリと変わった、霊視をしても禍こそは齎さないだろうが力が微弱な地縛霊が何名か確認することが出来た。つまりあの世へ旅立っても行き場がなく、最期の地となったこの場所を彷徨う事しか出来ない幽霊達があの場に居座っていた。これが答えだった。」と話すと現地では体感できなかった恐怖を思い知らされた。
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