2026年5月3日 日曜日 PM17:30
三坂峠での明るい時間帯での肝試しライブ配信を終了させた甲州と斧落による明るい肝試しの女子部と侑斗と吉岡の一同は、明くる日のライブ配信を行う予定の見返り橋へと向け、高知県へと出発していた。
香美市へと向かう道中に、吉岡が「明るい肝試しも明るくない肝試しをやってお兄さんに大目玉食らっている動画が上がっているじゃないですか。しかもガチで自殺者の男の御霊が映ってますよ。お兄さんは弟の饗庭さんに自殺した男の御霊の禍が憑いているかどうか見てもらうとも話してましたが、饗庭さん的にはどうなんですか?指名したからこそ引き受けますよね?」と質問すると、ハンドルを握りながら侑斗は「ああ言われたら引き受けるしかないでしょ。出来ることなら地縛霊の禍とか間違ったら自分にも禍が跳ね返ってきそうなことはしたくないんだけど、あれだけはっきりと映っていたらもうやるしかない。今のところ、まだ二人から連絡も入ってきていないし多分女子部の同行を見計らって高知に入ったと分かれば入ってくるんじゃないかなとは思う。実際にあの二人は男の御霊を生者だと勘違いして、止めようとして追いかけたことからも、禍による霊障が出てもおかしくない。」と答えた。
侑斗の答えを聞いた吉岡は「自殺者の御霊による禍ってあんまり想像できないんですけど、どういうことをされるんですか?」と聞くと、侑斗は「霊能者をやっている割にはそういう御霊とは関わったことはなかったのか?まあ関わらないほうが一番平和であることは間違いないね。自殺者の御霊はとにかく執念が凄い。人を追い詰めようとして、その人が抱える心の闇に付け入ると精神的に追い詰めようと音で脅かしたり可視化して姿を現したり、その人が精神的にも肉体的にも弱ってきたところで憑いて自殺行為をさせようとする。特に自殺をした人に関しては生前に相談する相手がいなかった、大方は人間関係だったり仕事関係だったり、正直に悩んでいることを打ち明けたり相談が出来る相手がいればまた違っていたはずなのに思いつめた末に自ら命を絶つ傾向がある。そういう最期を遂げた人は、死後に強く憎む傾向があり関係がなくとも自分と同じ運命になればいいのにみたいな、逆恨みの感情が禍と化すんだ。だからこそ、自殺の名所に足を運んだと分かれば己の気持ちを強く保たなければ、闇に溺れてしまうのは時間の問題だ。だから出来る限り、霊能者として関与する場合は弱みを見せないようにしなければいけない。除霊は非常に難しい。」といって答えると、吉岡は侑斗の話をうんうんと頷きながら聞くと「全ての人が抱え持つ心の傷を癒える力がもしあるとするならば、それはもう神様や仏様しかいないってことですね。」と話しかけると、侑斗は「そうだな。だから自殺の名所とされる場所って、本当に多くって供養目的で地蔵菩薩や観音様が祀られているようなところがあったりするだろ。人間がやる供養にはやはり限度があって、僧侶や霊能者では出来ない限界の部分に対して神様や仏様の力をお借りすることにより、自殺者の御霊達と対峙して昇天へと導いて頂くようにお願いをしているんだよ。」といって返事をした。
そして一同は、予約をしていた香美市内のビジネスホテルへと到着すると、明くる日の見返り橋での肝試しを行うまでにリサーチをしなければいけない噂について侑斗と吉岡がレストランで晩御飯を食べ終え部屋に戻ったと同時に調べることにした。
吉岡がスマホを片手に「いま見返り橋って地図で見ているんですけどね、この肝試しってあっという間に終わりそうですよ。」と話しかけると、侑斗は「ざっと見る限りでは推定15歩ぐらいで渡り切れる計算だな。短いし、橋を渡った先は私有地で入れないからね。あっという間に終わると思う。多分橋自体に問題が起きたとかそういうわけでもなさそうなんだよね。あとは狭い山道が続いていて待避所という待避所も殆ど限られているから、行くには俺か斧落さんが借りてきたレンタカーに乗って向かうしかない。2台で行ってしまうと、他の車の邪魔になってしまう。まあそのあたりは明日どうするのか聞いてみることにするよ。」といって返事をすると、吉岡は「そんな短い橋、しかもあっという間に終わるのなら、答えはもうわかり切っていることじゃないですか。何もないってことですよ。そもそも見返り橋って饗庭さんのチョイスだって仰ってましたけど、大体どうしてここを選んだんですか?」と苦笑いをしながら訊ねると、侑斗は「見返り橋で伝わっている有名な怪異譚としては、橋を渡っている途中は決して後ろを振り返ってはいけないという事。夜中に橋を渡っているときに後ろを振り返ると茂みの中から和服姿の女性が現れ、恐ろしい表情で身体を引きずるように走ってくると言われ、逃げようとするも橋の下から白い手が這い出て引き止められてしまうというもの。そのほかは、髪の長い女性の目撃談や帰り道で事故に遇うなどがあるね。いずれにしても、橋の途中で振り返ってしまったがために禍が起きたともあるから、決して振り返ってはいけないというもの。心霊好きにとってはこの怪異譚の内容を確かめたくって見返り橋がいまや高知を代表すると言っても過言ではないほどの心霊スポットになっているし、せっかく四国の慰霊の旅路をしているのなら見返り橋を外さない理由なんてないでしょ。」と答えるが、吉岡は笑いながら「決して後ろを振り返ってはいけない内容がそれならば皆さんお化け屋敷にでも行きましょうよって話ですよ。絶対にそんな心霊現象が本当に起きるわけがないに決まっているじゃないですか。」といって反応すると、侑斗は「それが確かめたいって言っているんじゃない。んなもん、誰かが怖がらせるのを目的として広めたネタに過ぎないのは分かっている。それに見返り橋って正確な名称でもないみたいだしね。怖いのはそこじゃない。俺の推測が正しかったら、その心霊現象を見たいがために訪れ帰り道に事故に遇うというのは間違いのない情報だと思うんだ。よく心霊スポットに行った帰り道で事故に遇うってのは、怖いと思って結局何事も無ければ安堵感で速度を出してしまいやすい。実際に俺達のような霊能者が感じる怖さと、霊感をあまり感じない人の怖さっていうのは全く視える世界も異なってくるから、行ってみて結局何もないじゃんって分かったときにどうしても怖いと思っていたことが嘘のように消えてむしろ何事も無いと分かればそれだけで安心してしまいやすい。だから気の緩みで速度が出やすい。見返り橋の恐ろしさはそこなんだ。女の霊が出る云々よりも事故に遇う確率のほうが高い、だから現れる御霊は必ずしも女性とは限らないと思っている。俺の推測が正しいのかどうかを改めてこの目で確認がしたい。」と話すと、吉岡は「慰霊の旅路で本格的な肝試しのシーズンに入るまでに心霊スポットにおける交通安全のキャンペーンでもするんですか?」というと侑斗は「まあそんなところだね。ただ警察と違って厳しくは取り締まらないけどな!」と言うと互いに笑い合って23時過ぎには揃って就寝することにした。
2026年5月4日 月曜日 AM9:00
侑斗と吉岡がセットしたアラームで目覚めると、さっと身支度を済ませた後に朝食を取るために食堂へと向かうと先に甲州と斧落の二人がテーブル席で待っているのを見て、侑斗が「あの二人、本当朝が早いな。まあいいや。打ち合わせしよう。」と吉岡に語り掛けてからテーブル席に座ると、淹れたばかりのブラックのコーヒーを片手に軽いミーティングを行うことにした。
侑斗が斧落に「昨日の晩に吉岡と二人で車はどうしようかという話をしていたんだけど、斧落さんの車はレンタカーで傷をつけるわけにはいかないから、見返り橋は俺の車に乗って欲しい。」と単刀直入に切り出すと、それを聞いた吉岡は驚いた表情になり「え?そんな話していない!?」とリアクションすると、侑斗は小さな声で「俺らが行きたいと言って女子部の甲州さんや斧落さんにも了解を得て、今回の見返り橋での肝試しとなったんだから言い出しっぺが責任をとるのは当然のことだろ!」と話すと、二人の様子が気がかりに思った斧落は「あの、そんなに気にしなくていいよ。それに饗庭さんの車で連れて行ってもらえるものならこっちだってお言葉に甘えたいところだしね。」と甲州の顔を見ながら話すと、甲州は「わたしも、連れて行ってもらえるものならお願いしたい。せっかく高知に来たのだから有名な見返り橋を見ずにして帰るわけにはいかないからね。旅の思い出に橋の途中で振り返って本当に噂される心霊現象が起きるのかどうかってのも明るい肝試しとしては確かめたい議題でもあるからね!」と話すと、侑斗は「決まりだね。車をこのままホテルの駐車場に置いておくわけにはいかないからどこかコインパーキングへ行って駐車してから俺の車で行くことにしよう。午後からの室戸岬での明るい肝試しのためにも、どうせ香美市内にまで戻ってくる必要性があるんだから、それでどうかな?」と打診すると、甲州も「そうだね。そのほうが無難ね。」と斧落の表情を見ながら返事をすると「了解。宜しくお願いします。」と改めてお願いをされた侑斗は「最後まで何事もトラブルが起こることなく無事故で室戸岬での肝試しを向かえるようにするよ。」と言ってそれぞれが朝食を取り始めると、9時30分にはホテルを出て斧落のレンタカーを近くのコインパーキングに立ち寄らせ注射をしたのを確認してから侑斗の車の後部座席に乗ってもらう形で見返り橋へと向けて出発した。
道中で斧落が侑斗に対して「こんな狭い山道、見返り橋が怖い云々よりもこっちのほうが怖い感じが凄くするんだけどね。」と話しかけると、侑斗は「実はいうと俺もそう思っている。見返り橋の怪異譚の内容を目の当たりにしたい人たちが慣れない山道を走行した結果、帰り道で事故に遇ったのだろうと思っている。予めストリートビューでも場所は確認してきたが、ガードレールが曲がっている箇所があって、曲がった奉公から考えても倒木によるものでもなく、ぶつかっているね。それが何か所かにあったことと、不自然なばかりのモザイク処理が施されているのも、この山道での事故の多さを物語っていると思うんだ。ここでの怖いは、恐らくそこなんだ。そのあたりを、実際に行って見てどうなのかというのを検証してみたい。」と話しながら、一同が乗る車が見返り橋と思える赤く錆びた橋が左手に見えたところで、カーナビの情報を頼りに辺りを隈なく探す吉岡が「前方の左手に見える、間違えて通り過ぎてしまいそうな噂の見返り橋なんじゃないんですか。カーナビの情報もこの辺りだと伝えていますからね。」と話すと、侑斗は「前方の、多分そうだな。見返り橋の付近に停車させてから、肝試しライブ配信を行おうか。時間もそろそろで10時になる。」と語るとすぐにでも移動しやすいように橋の付近に車を停車させてから、見返り橋に到着したと同時にライブ配信を開始した。
進行役の斧落が侑斗が持つカメラを前に挨拶を行った後に怪談話を語り始めた。
「皆さんおはようございます。明るい肝試しの女子部の斧落と、本日も引き続き霊能者として帯同して頂けることになった饗庭さんと二人でライブ配信をお届けします。いつもならここでむっちゃんと送っているんですけど、場所が場所で短時間で終わってしまうということもあって今回はわたしと饗庭さんの二人で、むっちゃんと引き続き次の心霊スポットで同行して頂ける予定の吉岡さんについては車の中で待機してもらって何かあればすぐにでも移動が出来るような形でという感じですね。さて今回わたしたちが訪れているのは、高知県の心霊スポットと言えばお馴染みの場所といっても過言ではないと思いますが、見返り橋にやってきております。見ての通り、橋を渡った先はゲートで封鎖されており”関係者以外立ち入り禁止”と書かれているので、わたしたちはあのゲートの前までしか行くことが出来ません。そこでわたしたちはゲートの前まで、一度も振り返らずに橋を渡り切っては面白くないと思いますので、見返り橋で噂される振り返ると茂みの中から和服姿の女性が現れ、鬼の形相で身体を引きずるように走ってくる、逃げようとするも橋の下から白い手が這い出て引き止められてしまうという怪異譚の真相について迫りたいと思います。」
斧落が語り終えた後、逆に斧落が予め用意していたカメラを持った状態で侑斗を撮影するとカメラの前で侑斗が見返り橋に纏わる別の話を解説しはじめた。
「怪異譚の話のほうが非常に見返り橋を語る上においては有名な話ですが、一部のサイトでこう紹介されていました。そのサイトによりますと1972年7月に見返り橋の周辺で集中豪雨による被害で約60名の方がお亡くなりになられる災害があったようですが、この災害による事故との因果関係があるかどうかはわかりませんが、橋の上で振り返ると和服姿の女性の霊や長い髪の女性の霊が現れるという言い伝えの所以になったのではとも記載がありました。時代的に仮にもしもこの時の集中豪雨による犠牲者の方の御霊だとして、1970年代で果たして和服姿の女性の御霊って現れるのかとなると着物しかなかった時代ではないため、恐らくは違うだろうと思われます。またその他の記事ではこの橋の周辺では自殺も多かったそうで橋の高さからも投身自殺では死ねる高さではないために、橋に紐を括って首吊り自殺を図られる方もいらっしゃるとのことです。では早速、僕のほうから橋を渡って安全かどうか見ましょうか。」と話しかけると、話しかけられた斧落にカメラが向けられると「まず最初にわたしのほうから渡ってから次に饗庭さんに見てほしい。そのほうが一番視聴者が理解できると思う。」と言って答えると、侑斗は「わかった。先に渡って欲しい。その間に霊視して”何か”がいらっしゃるかどうかも含め確認する。」といって返事をすると、斧落のほうから先に見返り橋を渡ることとなり、橋のセンターにゆっくりとした足取りで辿り着くと、ゆっくりと足踏みをしながらゲートのほうまで歩いていく一方で噂される怪異譚を実際に遭遇するのかも見てみたいのか何度も振り返りながら歩いていく。
斧落が何度も一歩前進をしては後ろが気になるのか振り返りまた一歩前進しては後ろを振り返るの動作を繰り返し行うので、侑斗が「そんなに鬼の形相をした和服姿の女性の御霊が見たいのなら、俺がその役をやってやろうか?」と苦笑いをしながら話すので、斧落が「そんなに帰り道の運転が怖いんですか?」といって反応を示すと侑斗は「いや、そんなことじゃない。それに怖い顔をした女性が茂みから出てきて、逃げようとするも橋の下から無数の手が出てきて逃げようとするにも逃げられなくなるって話も最終的にはどうなったのか最後ってだけで結論がどうなったのかがわからないとなると、よくある怪異譚でしかないってこと。それよりも、帰り道が何事もなく無事に帰れることを願う気持ちがあるのなら何度も何度も振り返って欲しくないんだよね。運転する側が物凄いプレッシャーを感じるよ。」と正直に話すと、斧落が「饗庭さんでもプレッシャーを感じる時ってあるんだ!普通の人と何ら変わりなくてちょっと安心した。」というと、侑斗が笑いながら「普通の人間だよ!」と反応した直後に侑斗が左側の木々が生い茂っている場所に目をやると斧落に対して「何か聞こえたような気がした。」と言って欄干の近くにまでやってくると「さっき川のせせらぎの音に紛れ込むように苦しそうな男の呻き声が聞こえてきた。自殺者の御霊なのかどうか話してみるよ。」というと侑斗からの報告を受けた斧落は「苦しそうな男の声ってどういうこと?噂には女性の霊が出てくるとしかなかったんだけど、男性の霊って果たして?」と首を傾げながらも確認のため侑斗の近くにまで駆けつけると、侑斗が人差し指を指し示しながら「ガードレールがある方向から俺達以外の”何も”いなかったはずなのに気配と声がした。これが自殺者なのか事故で亡くなられた方なのかをしっかりと見極めなければいけない。」と説明すると、斧落は「わかった。饗庭さんにしか視えないものが視えたというのならお願いしたい。」といって返事をすると、侑斗はすぐさま検証を行うことにした。
気を集中し精神を研ぎ澄ました状態で現れた御霊と対峙する。
侑斗の様子を見た斧落は「一体どうやって会話?トリフィールドとスピリットボックスを用いながら霊とお話しするの?」と訊ねると、侑斗は「トリフィールド?スピリットボックス?何それ?霊能者である以上そんな科学的な道具は使わない。」と淡々とした口調で返事をすると、現れた御霊がいた方向に対して説得するように語り掛けた。「先程僕にSOSのサインを出してくれたあなたにお訊ねしたい。ここで一体何があったんですか?お伝えできる範囲内で結構ですので教えてください。」
侑斗が分かりやすい口調で語りかけると、斧落は「至って古典的な方法なんだね。それに何か出来ることはないですかとかは聞かないんですね。」と頷きながら話すと、侑斗は「機械を使うよりもこちらのほうが御霊が驚かずに済む。御霊はあまり自分がいるという存在感に対して、よほど主張したいことがない限り訴えてくることはない。それに”何か出来ることはないんですか”というのをついつい生きているからこそ代わりにしてあげられることはありませんかと聞いてしまいがちではあるが、身の安全を守るためならばそういうことは口にしないほうが良い。中にはお願いされても出来やしないことを”命があるのならやってごらんなさい”とばかりに要求され、出来ないとなったら怒りの感情を露わにしてそれが禍となる可能性がある。」と斧落に対して答えると、斧落が侑斗が話しかけた方向に”何かしら”の動きがあったことに気付き「さっき饗庭さんが呼びかけた方向に木々の茂みから若い男性が2~3人ほど出てきた!」と言いながら写真に収めるべく欄干から身を乗り出すように写真撮影を行おうとすると、侑斗が更に斧落の右肩の背後を見て「斧落さんの右肩の背後の欄干に、長い髪の白装束の女性の霊が虚ろな表情で立っている。」と話し、指摘された斧落は驚きの表情を見せつつも「わたしの背後に女性?まさか噂の!?」と言いながら後ろを振り返るもそこには誰もいない。
斧落がカメラを持つ侑斗に対して「見たかったのになあ。」と悔しがるが、侑斗は「見ないほうが一番幸せに決まっているよ。俺が気付いたのを分かってその女性はさっと消えたんだ。恐らくこの付近で亡くなられた浮遊霊の可能性のほうが高い。禍は齎さないだろうから気にし過ぎないほうが良い。」と安心させるように語ると、侑斗の意見を聞いた斧落が「わたしの背後に女性が映っていたっていうのも、わたしが撮影したカメラに饗庭さんもわたしも確認することが出来た男性の幽霊も、今の10分にも満たない短時間で霊的エネルギーが強いわたしたちがいるせいか、少しずつじんわりと幽霊が姿を現すようになった。霊がいると分かれば、あとはそれが映像として記録されているかどうか。橋を全部渡り切っても多分、この橋の短さだと答えは一緒だろうから、ここで饗庭さんの解説をして、見返り橋のライブ配信を終了させましょう。はやくライブ終了させて編集用のための映像確認がしたいんだよね。」と切り出すと侑斗は「そうだね。男性の霊の正体と女性の霊の正体の解説を終えてから、次の肝試しスポットの室戸岬と移動しようか。今時計が10時あと少しで10分。室戸岬への移動時間が大よそ2時間30分ぐらいだから、サクッと解説してから終わらせるか。」と語った後に侑斗なりの見返り橋の見立てを語り始めた。
「今回、多分今までの明るい肝試しの中では最速で終わるライブ配信になったと思いますが(斧落が笑い始める)、噂される茂みの中で怖い顔をした和服姿の女性が出てきて逃げようとするが橋の下から無数の手が出てきて逃げるにも逃げられないという話は誰かしら拡散させた怖い話の一つでしかないだろうと思いますが、今僕達で確認できた男性の御霊については、恐らくですが男性一人ではなく恐らくその時に同情していたであろう別の若い男性、年齢層で見ると20代ぐらいかなと思いますが、僕の推理が正しければ恐らく見返り橋で肝試しに行った帰りに事故に遇われお亡くなりになられた方達だろうと思います。来たときから明らかに車の接触痕ともとれるガードレールの凹みが多々見受けられた辺りからも、この地に纏わる怪異譚をこの目で確かめたいと思い慣れない山道を走行し何事も無いと分かって気の緩みが生じた結果事故が起こってしまったのだろうと思われます。それが見返り橋の怖いと思う点だと思います。亡くなられた彼らは思い入れのあるこの地で最期に過ごした思い出を振り返るようにして自分なりの思いを伝えているのかもしれません。また白装束姿の女性の御霊については、恐らく後ろにある木に首を吊って自殺をされた方の御霊の可能性が高いと思われます。よく手招きをするなどが言われていますが、肝試し以外の目的でこの地を訪れる者以外誰も通らない、目に留まらないこの場所だとひっそりと旅立ちたいと思う方にとっては良い場所なのかもしれません。ざっと見た限りお亡くなりになられた方は自殺の名所と言えるほどの多数の方々ではないですが、やはりこれ以上触れてほしくないといいますか、騒ぎ過ぎない程度であれば、禍をこれは事故死された男性の御霊もそうですが、邪心を持ったとか、死へ導こうとしているとかそういった要素は一切感じられないので、あとは騒ぎ立てないようにそっとしておきましょう、そして帰り道はゆっくりと安全な速度で帰りましょう。飛ばし過ぎないように皆さんくれぐれもお気をつけて下さい。それでは次の室戸岬でお会いしましょう!」
侑斗が最後の挨拶を締めくくったところでライブ配信を終了させ、二人は車に戻ると次の室戸岬へと向け出発させた。
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