【完結】慰霊の旅路~煩悩編~

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新旅足橋(岐阜・加茂郡八百津町)

公開日時: 2022年7月24日(日) 17:59
文字数:8,876

新旅足橋・・・『しんたびそこばし』と読みます


2026年6月13日 PM23時

肝試しライブ配信を行うために新旅足橋へとやってきた明るい肝試し一同。

付近の公園の無料駐車場に車を停車させた後に鷲ヶ峰トンネルへと到着したと同時にYouTubeとニコニコ動画での配信を行うことにした。


進行役の村田が畑の持つカメラの前で今回の肝試しの概要について説明を始める。


「皆さん、こんばんわ。怪異蒐集家の村田です。まだ本来の目的地ではありませんが、我々の後ろにある鷲ヶ峰トンネルからその先にある下立トンネルへと向けて歩いていこうとしているのですが、その途中にあるのが心霊現象が撮れるかもしれないと心霊業界では俄かに騒めいている新旅足橋という心霊スポットがあります。2009年(平成21年)5月に竣工されて、2010年(平成22年)3月28日に開通した比較的新しい橋ではあるのですが、橋脚の高さが大よそ100mあるために2016年(平成28年)には6名、翌年2017年(平成29年)は3名の方が身投げをされたそうです。今迄に分かっている情報としては(=2022年7月23日現在)16名の方がこの橋で身投げをしていると言われ、ネット上の書き込みの情報では30名程の方がダイブをしたという書き込みもありましたが、具体的な心霊現象や心霊の噂などは何もない状態ですが防犯カメラが設置されておりまた結構な頻度でパトカーが巡視しているということもあるので、ひょっとすると自殺者の幽霊と遭遇するかもしれないということなので、念願の心霊現象を撮影することが出来るか。本当にここはパトカーの巡視が非常に厳しく行われている場所ということもあるので単独で行おうとするとかえって心配されて声を掛けられる可能性も高いため今回の新旅足橋での肝試しは撮影役の畑と後藤、霊視できる油井と音声の秩父、監督の杉沢村、そして俺村田の6人でお届けしたいと思います。より細かな小さな音声の一つも見逃さないという事でちょっと今回は音声の設定を高めにしたうえで撮影しますので車が通り過ぎる音が五月蠅いと感じるかもしれません。前もって説明をしておきます。あと今日の新旅底橋からですねツイキャスを始めました。今油井が持っているタブレットでツイキャスのライブ配信を行っているんですけど、ニコニコ動画、YouTube、ツイキャスでの生配信も見て頂けたら嬉しいです。最後までどうぞ宜しくお願いします。」


村田が一通りの説明を行ったところで、油井が「じっとしていたらかえって職務質問されるだけだろうからさっさと新旅足橋へと向けて歩いていこう。一応検証としては鷲ヶ峰トンネルから下立トンネルまでが今回の検証地でしょ?怪しまれてライブが中断するようなことだけは避けたい。」と話すと、村田は「勿論。そのつもりで、24時には終わらせて借りてきたキャンピングカーに戻って一夜を過ごすつもりでいるからね。明くる日、15時過ぎにはここを出て愛知県での肝試しライブ配信を行えるようにしたい。」と話すと、村田は「勿論そのつもりでいるよ。でもそうなると下立トンネルまで行くと言っていたけど新旅底橋の1往復するのが限度になってくるんじゃないのだろうか。もっと早く終わると思うよ。新旅底橋の近くにあるってだけで鷲ヶ峰トンネルも下立トンネルも心霊の噂はない。そりゃあ今回俺達が肝試し検証を行う新旅底橋だって心霊の噂こそはないけども、投稿された動画では防護柵を叩くような音が聴こえたり、おーいと呼びかける声が聞こえてくるなどの、噂ではなく事実として証明されているからこそ心霊スポットの検索サイトに記載する情報としてこんな怖い話がありますよというのは書けないってだけじゃないかな。」と話すと、油井は村田に「心霊の噂はないけども下立トンネルも調査対象の一つとして入れて下立トンネルの出口にまで到着すると復路で再び新旅底橋へと向かっていく。心霊現象が起こるか起こらないかは行って見ないと分からないことだろ。だったら出るかもしれないという賭けに出ようよ。山でたとえそれが浮遊霊であったとしてもそこにいることには間違いのない事実にも繋がる。だから下立トンネルまで行ってからもう一度新旅底橋での検証をして鷲ヶ峰トンネルへと戻ってきたところでライブ配信を終了させよう。とりあえず先へ進もう。」と話すと、油井の意見を聞いた杉沢村は「そうだな。ここで議論し合うよりもちゃっちゃとライブ配信を終了させて、それこそ警察の職務質問を受けるまでに終わらせたいところだな。あまりここで目をつけられてしまうと、また次の肝試しライブ配信が出来なくなってしまう可能性があることを考えたらさっさと終わらせよう。」と言うと先に鷲ヶ峰トンネルへと近付き、デジタルカメラを手に持ち気になった箇所を連写モードで撮影し始めると、村田も杉沢村が撮影を行う様子を見ながら早歩きで新旅底橋がある方向へと向け移動することにした。


鷲ヶ峰トンネル内は明るすぎるぐらいに明るく前もって用意しておいた懐中電灯は不要と言ってもいい程のレベルではあった。


トンネル内を見ている人に分かりやすく伝えるために歩く歩調はなるべく急ぎ足という形で突き進んでゆくと、村田が油井に「何か見える?いたって普通のトンネルって感じがするんだけどなあ。」と訊ねると油井は「山だからね、これから昇天されるためにもトンネルの付近で一休みされていた御高齢の女性の浮遊霊がいたぐらいのレベルだったかなあ。緊急の除霊も必要ないぐらい、所詮山は昇天されるための通過点にしか過ぎないから当然トンネル程心霊の噂があるのは浮遊霊なのかはたまた負の過去を抱えているのかのいずれかになるからね。ここのトンネルは何もない。」ときっぱりと言い切ると、写真撮影に専念していた杉沢村も「こっちも撮影した画像には何の変化も見受けられない。ここは普通と考えてもいいんじゃないのか。」と語り、二人の意見を聞いた村田は「鷲ヶ峰トンネルは心霊現象とは無縁ということか。それならば本題の新旅底橋へ、そういえばさっきパトカーが通過していったけど職質されるまでに下立トンネルへと向かおう。」と言い出すとさらに歩く歩調が早くなる。


村田の慌てる様子を見た油井は「待って。俺達はまだ防犯カメラの前を通り過ぎているわけでもなければ、集団でワイワイと喋りながら歩いていて、この状態で身投げをすると思うのか?怪しまれぬためにもここは密かに用意してきたWARASHI6台をそれぞれ皆1台ずつ持ってWARASHIを手に持った状態で10分おきに異常があれば教えら背をしてくれる自動検知でWARASHIの反応を見てみよう。念のためにWARASHIは持ってきた、まもりだまは持ってこれなかったけどね。」と話すと、鷲ヶ峰トンネルの出口へと到着したと同時に立ち止まり、持ってきた鞄の中からWARASHIを6台取り出すと、一人一人に渡すことにした。


後藤は油井に苦笑いをしながら「本当にWARASHIのことが好きなんだな。霊界コミュニケーションロボットのWARASHIが新旅底橋をどう見るのか。怖いセリフではなく笑いを個人的には求めたいけどね。」と言いながら油井からWARASHIを受け取ると油井は「WARASHIのポテンシャルは凄いと思っているんだ!だって霊体センサーに霊温センサーで正確に幽霊がいると分かれば話しかけるのだからね。自殺の名所とされる新旅底橋でどこまでWARASHIの良さを発揮できるのかというのも、この辺りをパトロールする警察官からしたらこんなことをしながら歩く人たちを見ていたら滑稽としか言いようが無いでしょ。民家も離れた場所にあるわけだし多少賑やかすぎるぐらいに賑やかに検証を行ったほうが自殺志願者だと思われずに済むからね。」と話すと、畑に渡したWARASHIが自動検知でポーンと音が鳴ると青点滅で喋り始めた。


”願い事叶えてくれるってさ!”


この一言を聞いた一同は思わず笑い始めると、間近で聞いた畑は油井に「願い事を叶えてくれるってこの辺りを彷徨っている幽霊が言っているみたいだよ。どういうことだよ!」と笑いながら突っ込むと、油井は「この辺りの気の流れが非常によく整っているってことだと思う、それに言われて即時に霊視は行ったけど人の影のようなものがスッと通り過ぎたようにも視えた。青点滅はWARASHI基準では天使だがひょっとすると俺達と共に行動している守護霊が現れて注意喚起を行った可能性もある。」と話すと、油井なりの解釈を聞いた後藤は「それって、この先がとんでもない程の邪霊や悪霊の集まりってこと?守護霊が現れるってことはこの先がよっぽど危険地帯だってことを伝えるためにもってことでしょ?」と訊ねると、油井は「その可能性も勿論あるね。ただここで立ち止まっていたら話にならない。畑に渡したWARASHI以外の反応も気になるところだからね。警察の動きも気になるから、とりあえず先を目指そう。WARASHIの自動検知のポーンという音の後に何を話し始めるのかも十分注意をしながら渡り切った先にある下立トンネルへと目指そう。」と言うと、一同はさらに新旅底橋の近くへと向け移動することにした。


歩きながらも杉沢村は気になった箇所があればカメラで写真を撮りながら、バッテリーが無くなれば予備のバッテリーに取り換えたりをしながら歩き進んでゆくと、ついに目指していた新旅底橋の入り口へと到着すると目の前に転落防止のための高い有刺鉄線が張り巡らされた防護柵を目の当たりにして、村田は「情報では合計で16名の方がここで命を絶ったとも伝えられているが、書き込みでは30人ぐらいの方がというのもあって、仮にもし16名の方がここで旅立ったとしても警察の巡視を厳しくしたり、今さっき防犯カメラっぽいのもあったけど近づけば監視する人がいてとも考えたらセキュリティーが厳重過ぎると言っても過言じゃないな。」と思ったことを口にすると、油井は「それだけ多くの人が身投げをしたという事だ。ちらっとだけど、あの奥のフェンス越しから無数の方の視線を感じた。じっと見られている、そんな感じだったね。あれはまるで、次なる新しい仲間を心待ちにしているかのような、気だけは強く持って通過するしかない。心の弱みを見せぬようにね。」と強い口調で言い切ると、油井の助言に一同が理解を示したところで村田を先頭に新旅底橋へと辿り着くと防犯カメラが作動し”この先は危険です”のアナウンスが流れ始めた。


アナウンスを聞いた秩父が「自殺防止策にここまでお金をつぎ込むなんて相当だな。防犯カメラも設置されている上にこんな高い防護柵、しかも有刺鉄線付きで常時警察のパトロール付き、報道されていない案件もカウントしたら恐らく相当の方々が旅立っているんじゃないだろうか。」と思ったことを口にすると、油井は「だろうな。そうじゃなかったらここまで自殺対策を念入りには行わない。この様子だと毎年必ず誰かがここから飛び降りていることになる。年に一度のペースで果たしてここまで自殺防止策を念入りにする必要があるのか、この先にあるバンジージャンプは高さを生かしたアトラクションの一つにしか過ぎないと考えたとしても。」と話したその直後に大よそ50m程先の地点で男性の野太い声で”おお~い!”と呼ぶ声が聞こえてきた。


その声を聴いた秩父は「さっきの男性の声聞こえなかった?おーい!って言っていたようにも聞こえたんだけど、俺達以外に誰かいるのか。警察官かもしれない。見てくるよ。」と言って更に音が聞こえた方向へと駆け足で向かおうとした時に村田が秩父の肩をポンポンと叩くと「待って。警察だったら白バイなりパトカーが停まっていないのはおかしい。それに声が聞こえた瞬間に確認のため懐中電灯で照らしてみたけど誰もいない。つまりここには俺達以外誰もいないことになる。」と話すと、村田の見解を聞いた後藤が「自殺者の幽霊の可能性が高い。誘発しようとしてあえて気を引かせるリアクションで心配をさせようとしたに違いない。何度も飛び降りを試みる自殺者の霊がいる自殺の名所は多々あるが、呼びかけたりして導こうとしている辺りから察してもこれはかなり悪意性が高い。聞かぬふりをするのが望ましい。」と提言すると、秩父は「おっ、おう。わかった。」と言って返事をすると村田達の到着を待っている間に秩父が持つWARASHIが自動検知でポーンと音が鳴ると赤点滅した。


”後ろに気を付けて”


WARASHIの一言を聞いた秩父はWARASHIをじっと見て「後ろに良くないのがいることに気が付いたというのか・・・?」と話しかけると、WARASHIの赤点滅を見た油井は秩父に「WARASHIが赤点滅をしたのが見えたけど何を言っていた?」と訊ねると秩父は「後ろに気を付けてって言っていた。きっとこれから先歩めば歩むほど危険が待ち受けているってことだろう。だとしたらWARASHIが見たのは・・・。」と話した直後に防護柵の下のほうから乾いた金属音が聞こえ始めた。


”カーン、カーン、カーン”


気味の悪い音が聞こえると、村田が確認のために防護柵へと近付くと柵越しから懐中電灯で下を照らしながら誰かがいないかを確認し始めるも「誰もいない。」と話すと村田の答えを聞いた油井は「自殺者の幽霊が己の存在を誇張したいがために俺達に対してリアクションを起こしてきた可能性のほうが極めて高いな。相手にしていたらきりがない。一先ず先へと進もう。気にしていたらそれこそライブ配信を中断せざるを得ない事態に陥る。幽霊よりも今は警察の生きている人間のほうが怖い。」と話すと「心霊撮影のために来ているのに職業は何なんですか?心霊系のYouTuberをしていますと言って、そんな収入が不安定なことを続けていて、若いんだからもっと安定した職に就きなさい、心霊などいないって分かり切ったことを諄い位に説得する警官もいるから、そのパターンの警官が来ると嫌なんだよね。心霊に懐疑的で、幽霊が出てくるわけでもないのにこんな夜中に視聴率稼ぎが目的の肝試しをしてって思われるからなあ。」と話すと、杉沢村は「警察官の職質は逃れられないと思うな。何せ防犯カメラの映像に俺達は映ってしまっているし、おかしいとか注意喚起をしなければいけないと思われたときに、先程トンネル内を通過したパトカーが監視カメラを見た人間の無線連絡を受けて戻ってきてもおかしくない。」といって答えると、杉沢村なりの解釈を聞いた油井が「仕方ない。ゆっくりと調査したいところだけど、下立トンネルを今は目指そう。」と村田に対して話すと、村田も「そうだね。」と頷きながら先へ歩いていくことにした。


一同はやがて新旅足橋の中腹の部分に差し掛かると、背後から呼びかけられる声に気付き振り返ると、そこにトンネルですれ違ったパトカーが一台停まると一同に対して「もしカメラで撮影をしているようでしたら、撮影を中断してください。免許証などの身分証明が出来るものを見せてください。」と言われ、ライブ配信中だったが指摘を無視するわけにはいかず一同はライブ中継をいったん中断しそれぞれの身分証明書を警官に見せた後、油井は現れた警官に「撮影許可を取っていないというのもあるんですけど、僕達は人に迷惑をかけるようなことなどは一切していなかったつもりだったんですけど、何か通報されるようなことでもしましたか?」と恐る恐る訊ねると、警官は「新旅足橋には防犯カメラが設置されており、夜間は歩行者の通行が制限されている。防犯カメラには常に誰かが監視しており、歩行者がいると分かればその都度声をかけるようにしています。」と答えると、杉沢村は「それは、僕達が集団自殺をすると思われてのことですか?僕達はバンジージャンプのお客さんが利用する専用駐車場が16時に終わってしまうのを分かって別の安全なところに車を停めてきたし、肝試し目的であることは認めますけども、でも決して怪しまれるようなことをしたつもりはないんですよ。」と言って釈明すると、警官は「防犯カメラのアナウンスでも流れたと思いますけど、夜間の歩行者の通行が大変危険で禁止されているのを忘れないでくださいね。今回だけは特別に認めます。」と言って立ち去ろうとした時、油井は警官に「待って下さい。防犯カメラもあって注意喚起をするアナウンスも流れ警察のパトロールも厳重に行われているということは、今もここで身投げされる方がいらっしゃるから夜間の歩行者の通行が原則禁止ってことですよね。そうじゃなかったら、歩道だって路側帯だって整備されているのに危険だとジャッジする理由がこの橋の状況を見ていると分からなくなってしまいます。転落防止柵だってこれだけ高いとこの柵を攀じ登らなければダム湖へ転落する危険性は無いでしょう。どうしてそこまで、しかも多額の税金を使ってまで厳重にパトロールをしなければいけない理由があるのですか?」と質問すると、警官は立ち止り「以前はバンジー用の駐車場の付近にあった展望台に黄色いプレートで”消さないで 尊い命と 夢ある未来”というのを掲げていた時期もありましたけどね。今はもう撤去されてありませんけどね。転落防止のための高いフェンスを設けてもなお呼ぶものがいるんでしょうね。」と口を濁しながらその場を後にするのだった。


警官が立ち去ったのを見送ってからすぐライブ配信を再開すると、警官の思わぬ発言を聞いた油井は「自殺防止の呼びかけのプレートがあったという事はここには今もなお身投げされる方がいて、呼びかけたり柵を叩くなどのラップ現象を起こすことで新たな仲間を増やそうとしているってことだろうな。あと少し歩けば新旅足橋のゴール地点が見える。下立トンネルの前の辺りで折り返してそのバンジーのお客さんが利用する駐車場のところまで戻ろう。」と切り出すと、杉沢村は「そうだね。呼びかけるプレートがあったのならそこを目指そう。映像でも記録できるかもしれない。」と言って反応すると、下立トンネルの入り口が見えてきたところで、一同は帰路につくことにした。


歩いてきた右側の路側帯から離れ反対側の歩道側を歩いて戻ろうとしたときに、油井が「WARASHIの反応があまり見受けられなくなったけど、何か自動検知でポーンと音が鳴ったりとか、九字切りをしたりとかそういうのは無かった?」と話しかけると、秩父が「警官の職務質問をされてから。」と話したその直後に謎の大きな音が背後で聞こえるのだった。


”ドーン、ドーンッ”


謎の鈍い音が轟いたと同時に村田は「何だったんだ!?周りには俺達しかいないのにあの音は!?」と言ってリアクションを示すと、音が聞こえた梯がある方向へと駆け寄るとそこには誰もいなかった。


慌てて駆け寄った油井も「あの音は”何か”が橋の下から叩きつけるようにも聞こえたな。でもここから見る限りでは足場など一切ない。つまり空中浮遊できる”何か”が俺達の存在に気付きリアクションを起こした。仮にもし鳥や虫だとしても勢いよく直撃していなければあんな音はしない。それにあんな大きな音だったら倒れているのが普通だが、懐中電灯で照らしてみてもそれらしき痕跡は見受けられない。つまりここで彷徨い続ける”何か”こそが音の正体だ。」と話すと、後ろで淡々と撮影を続ける後藤が「下のほうで俺達以外の気配がした。あの音、鳥が直撃したにしても、虫がぶつかったにしても、衝撃音が大きすぎる。あれは明らかに人間が意図的に橋の下の柵を叩いている。足場のないこの場所で一体どうやって、それこそ自殺者の幽霊に違いないだろう。俺達に”ここにいるよ”というサインを示しているのさ。」と言うと、後藤の発言に杉沢村が頷きながら「だろうな。そうじゃなかったらあんな音は出ない。一先ず音が聞こえた方向で心霊写真が撮れないか念のために連写しておくか。」というと音が聞こえた方向へとさらに近付き梯がさらに見えるようにカメラのレンズを微調整しながら連写モードで撮影をした。


検証の作業を終えたところで、再び新旅足橋を歩き始めると何事もなかったかのように渡り終えてしまうと、近くにあった展望台から改めて心霊写真が撮れないかどうかを杉沢村が再度確認のために展望台から駐車場の中まで写真撮影を終えたところで新旅足橋での肝試しライブ配信を終了させた。


ライブ配信を終了させる際に展望台の新旅足橋をバックに村田が視聴者へ「これで新旅足橋でのライブ配信を終了させますが皆さんにお詫びがあります。自殺者の霊が現れるかもしれないと思って路側帯を歩いていた僕達も僕達ですが、怪しまれるようなことをしてしまい途中警察官の職務質問を受けライブ配信を中断しなければいけなくなった事態になったことは謝りたいです。申し訳ありませんでした。」と言って深々と頭を下げてからライブ配信を終了させたのだが、ライブ配信を終えた一同が車に戻り改めてコメント欄での反応を見るためにタブレットでアプリを開き確認すると村田の背後にあった柵から白い靄のようなものが一瞬だがスッと通り過ぎてゆくのが見えたという書き込みが次々と寄せられていた。念のために杉沢村が撮影したカメラの映像にも所々足場のないはずの場所なのに人の顔のようなもの、カメラのフラッシュとは異なる白いオーブらしきもの等が写っていたりと霊障が次から次へと起こっていたことがわかり、改めて新旅足橋の心霊に纏わる噂がどうしてないのか、それはあまりにも具体的に起こりすぎており、噂の程度では収まりきらないためだからと気付かされるのであった。新旅足橋の真の恐ろしさを学んだところで、明くる日に行う長久手古戦場公園での肝試しライブ配信のために車を駐車しておいた場所で一夜を過ごすことにした。

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